かんせい? 2
航
今年最初の日曜日は三が日だったのでお休み、紙芝居は二週目から。
年始も練習を重ね、それからお姉さま方の前でもう一度上演して研鑽を積み、一応準備は万全だった。
しかし上演場所のショッピングセンターに藤堂さんの姿はなし。
観に来てくれていたのであれば、あの紙芝居を上演をするつもりであり、それで藤堂さんを楽しませ元気になってもらおうと密かに画策していたけど、いないのなら仕方がなし、あの作品の出番もまだ先ということに。
残念のようだけど、内心ちょっとホッとしてもいた。
というのも準備万全とは言ったものの、実情としては何とか人前で上演しても大丈夫なくらいのレベルで、理想の、頭の中で思い描いている上演、つまり藤堂さんとセックスをして、彼女を楽しませる、悦ばせるというのはまだまだ程遠い。
もっと練度を上げてから上演したい、披露したい。
そし絶対にレイプにはしないように。
「いなくて残念だったな」
本日の一緒の紙芝居の相手、舞華さんが言う。
「……うん、まあ」
そう返事はするけど、内心はさっき説明した通り少々複雑。
「まあ、来なかったのは残念だけど、その分練習する時間が増えたと思えばいい」
「うん」
この言葉には素直に肯けた。
湊
帰省を終えて戻ってくる。
ずっと逢っていなかったから先輩から絶対に呼び出されるはず、することを強要されるはず、そう思っていたけどそんな連絡は全然なし。
そういえば、年末までは毎日電話をしていたのに、年が明けてからはしても出ない、返信も返ってこなかったな。
それはちょっと気がかりだったけど、それ以上に大変なことがわたしの身に。
ゆっくりと過ごしていたせいなのか、部活で体が全然動かなくなっていた。
食べ過ぎたわけじゃないけど、全然運動していなかったから、体重が増えてしまったからなのだろうか。
それでもなんとか。
練習をしているうちに体が感覚を思い出してくる。
久し振りに恵美ちゃんと帰宅。
けど、良いことばかりじゃなかった。
日曜日に紙芝居を観に行こう、結城くんの陣中見舞いをしようと思っていたけど、日曜日には部活が。
残念だけど仕方がない。
いつもは休みがずっと続けばいいのに思っていたけど、今年は違う。
早く学校が始まらないかな、三学期にならないかな。そうすれば結城くんの顔が見られるのに。
そんなことを。
航
二学期の始まりとは違い、三学期は初日から藤堂さんを教室で見ることができた。
あの時は登校してきてからずっと暗い表情だったけど、今学期はその反対に明るい。
休みの間に何か良いことでもあったのだろうか? それが彼女を笑顔にしているのだろうか。
ならば、その笑顔をもっと輝かせたい。紙芝居完成の報告をしないと。
紙芝居は観てもらって、初めて成立する。完成はしたけど、まだ完全な完成じゃない。
報告のために席を立とうとした。けど、中腰になったところでまた椅子の上に腰を下ろす。
学校内で藤堂さんと話すわけにはいかない。自重する。万が一という可能性がある。もしかしたら厄介な相手に話している現場を目撃されてしまうかもしれない。
今年最初の紙芝居には来てはくれなかったけど、多分今週は観に来てくれるはず。
それなら完成報告の必要なんかないし。
それよりももっと稽古をして、より良いものを上演しないと。
日曜日、この日のためにしっかりと稽古を重ねてきた。
けど、また不発に終わる。
今日の紙芝居も観客の中に待望の待ち人、藤堂さんの姿はなかった。
「来なかったわね、彼女」
ヤスコが俺の傍に。
一見、というか一聞かな、心配してくれている優しい従姉という図に見えるかもしれないけど、絶対にそうじゃない。長年の付き合いでそれを熟知している。
「ヤスコ、楽しんでいるだろ」
この状況を、俺が不安というか落ち着かないのを、見て楽しんでいる。
「まあね」
満面の笑みで肯定するなよ。
「楽しむなよ、俺は真剣なのに」
「こんな面白いこと、楽しまないわけにはいかないじゃない。あんなに苦労したんだし」
ヤスコにはたしかに多大な苦労、迷惑をかけてしまった。文章の推敲に始まり、予想以上の画を短期間で描いてもらった。感謝はするけど、そんな風に楽しまれるのは何か嫌だ。
「でもま、今回も観てもらえなかったのは残念だったわね」
それには同意する。
きっと来てくれる、教室ではそう思ったんだけど。でも、それは俺の中の根拠のない自信だ。楽観視した結果。
「アンタさ、できたって彼女に伝えたの?」
無言で首を振る。
「そっか。……でも、せっかく創ったんだからちゃんと伝えないと相手は知らないままだぞ」
正論だ。
判っている。
でも、それができないでいる。
湊
日曜日はまた部活。
今度こそは、今年最初の結城くんの紙芝居を観るんだと意気込んでいたのに。
それから、きっと鋭意創作中の紙芝居の進展具合を聞きたかったのに。
ちょっと、残念。
でも、きっと来週こそは、絶対に観に行きたい。




