or どっち? 5
湊
結城くんから素敵なクリスマスプレゼント、報告を頂いた。
それを聞いた瞬間から、わたしの中にうれしさが生まれて、それがずっと続いていている。
いつまでもこの形のないプレゼントを愛でていたい。
けど……。
幸せな気分はずっとは続いてくれない。
これは別に、結城くんのくれたものに飽きたというわけじゃない。
それが楽しみなのはまだ継続しているし、絶対にこの先なくならないはず。
なのに、どうして気分がなえてしまったかというと、それはクリスマスが近いから。
わたしには好きなのかどうかまだ分からないけど、付き合っている先輩がいる。
クリスマスにはきっと先輩は一緒に過ごしたと言ってくるはず。そして今まではまだ一度もしたことがないけど、お泊りを要求してくるかもしれない。
もう先輩とは何度もセックスをした。したくないけど、何回もそういうことをした。
経験する前には、きっと幸せな気持ちになれる、経験を重ねるうちに気持ち良くなってくるものだと漠然と想像していた。
けど、現実のセックスをちっとも気持ち良くなんかならない。最初の頃にあった痛みはもう感じなくなったけど、性的な快感を感じたことがない。
けど、感じているふりをしないと先輩を怒らせてしまう。
そうなると先輩は乱暴に。レイプまがいの行為を。
そならないように抱かれている時は、感じているふりを。
そういえば結城くんは、創っている紙芝居をレイプになってしまうかもと言っていた。
多分、これは何かの比喩と思う。
それに結城くんが危惧するように、わたしにとってちょっと辛い内容だったとしてもきっと大丈夫だ。
本当にセックスではもう何回も嫌な目にあってきた。
だから結城くんの創った紙芝居で少しくらい傷付いたとしても。
大丈夫、受け止めることができる。
それに結城くんのする紙芝居は、本当のセックスよりも気持ちが良い。
そんな彼の創る紙芝居だ。きっと私を楽しませてくれて、幸せな気持ちにしてくれるはず。
航
小説から紙芝居への変換。
書くという行為に少しは慣れたのか、それとも駄目だしを喰らったけど一応たたき台としても文章が存在しているからなのか、予想外にスラスラとノートを埋めていくことが。
書くことよりも削るほうに苦心を。
それでも一週間で完成。
これでも書きなれた人間に比べれば、まだまだ遅いのかもしれないけど、俺にしたらすごい進歩、というか進化。
しかも、期末試験期間だったにもかかわらず。
けど、まだ本当の完成じゃない。
前回と同じようにまたヤスコに見てもらって判断を。
それでも前回のような不安はなかった。内容はまあ一応合格点はもらえていた、今回は小説ではなく、紙芝居を書くことを心掛けた。……大丈夫なはず……多分……。
多少ダメ出しは受けるだろうが、それでも基本路線は間違いないはず。
前回同様に清書をしてプリントアウトをし、ヤスコのところに持って行く。
ある程度は自信がある。それでもやはりいざとなると緊張してくる。もしかしたらという悪い妄想が頭の中をよぎる。
そんな心理状態で完成した原稿を提出。
結果、今回も合格とはならなかった。
しかしながらそれで腐るということはなく、ヤスコの助言に真剣に耳を傾けた。
俺だっていいかげんな紙芝居は創りたくはない。ちゃんとしたのを創りあげて、しっかりと稽古を重ね、それを藤堂さんに観てもらいたい。そして楽しんでもらいたい。
藤堂さんの笑顔を見るために、心の底から悦んで、楽しんでもらうための努力を怠るようなことをしたくはなかった。
三度目の挑戦。藤堂さんの、彼女の悦ぶ顔を想像しながら。
三稿目はクリスマス前に完成。
そして今度は合格点を。
これで、しばらくの間俺にできることはなくなった。これから先はヤスコが紙芝居の画を描いてくれるのを待つだけの身となった。
おそらく完成するのは早くても来年になるだろう。カラーのイラストを十数枚。描き慣れているとはいえ結構な時間を有するということを理解している。それに折しも年末、きっとヤスコは忘年会なんかで忙しいだろう。
もっと早く書いておけば、今更ながらの後悔をする。そうすれば藤堂さんにももっと早く観てもらえたのに。
自分自身の不甲斐なさに情けなくなってくる。
けど、いくら後悔をしても時計を戻すことはできない。
俺にできるのはヤスコが早く画を描いてくれることを祈るだけしかできない。
でも、無理強いはできない。
それならば、時間がかかってもいいから良い画を描いてくれと願うだけだった。




