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すれちがい 2


   (こう)


 停学明けの登校初日の朝、学校に行きたくなかった。

 というのも一週間ほぼ家の中で過ごし、久し振りの外、しかも絶好の自転車日和。

 こんな日には学校には行かずにフラットバーロードに乗ってどこでもいいから走りに行きたい気持ちに駆られてしまう。

 しかしながら停学明け早々にサボってしまうというのも如何なものかと。

 サボりたいという気持ちを無理くり抑え込んで、渋々、嫌々学校へと。

 教室では普段あまり話しかけてない連中がわらわらと。

 バカヤロー、屋上に誘えって、バカなことを言うなよ、お前ら全員屋上にご招待なんかしていたら一学期中、いや三日でクラスの大半が停学処分を受けるという事態になっていただろう。そんなことになったら担任の評価がものすごく落ちてしまうだろ。

 

 一週間ぶりの授業はまあなんというか意外と楽しかった。

 知らなかった、俺って案外勉強が好きなのかも。

 いや、そんなはずはないな。これはまあ一時の気の迷いのようなものだろう。

 さあ、何時までも教室にいても仕方がないからさっさと家に……稽古場へと行こう。

 そう思ったはずなのに俺の脚は昇降口とは全然違う方向へと。

 渡り廊下を渡り、別館の屋上へ。

 習慣というものは恐ろしい、無意識のうちに通い慣れていた屋上のドアの前へと。

 こんな場所に来ても仕方がないのに。この先に進むための鍵はもう俺の手の中には無いのだから。

 いつまでもここにいてもしょうがない。

 停学明け早々に原因になった場所にいるところを教師連中に目撃されたらなんか面倒なことになりそうだ。

 帰ろ。

 回れ右をして階段を下りようとしたら足音が聞こえた。

 誰かが階段を上っている、けど足取りの重たそうな音。

 俺の一件で教師が見回りを強化しているのだろうか。だとしたら、非常に申し訳ない、余計な仕事を増やしてしまった。こんな遠方までのご足労頂き、身も心もきっとお疲れなのだろう。再度申し訳ないと心の中で謝罪を。

 階段を下りる。まあ教師であったとしても今日は疚しいことはしていない、なんせ屋上にはもう立ち入ることができない。

 教師ではなかった。

「……藤堂さん?」

 何でこんなところに。

 俺が停学になってもう屋上には行けないことは判っているはずなのに。

 いや、それよりも……。

「学校では近付かないで」 

 階段をやや早足で下り、藤堂さんとすれ違う時に伝える。

 反応がないな。聞こえなかったか、ならもう一度。

「近付かないでほしい」

 もう一度、ゆっくりと諭すように言う。そして藤堂さんの横を抜けて階段を下りる、駆け下りる。

 藤堂さんが俺と一緒に屋上にいたことは誰も知らない。つまり教師連中には知られてない。

 だからこそ俺一人だけが停学という処分を受けることに。

 それのなにこんな場所で、原因となった場所の近辺で俺といるところを目撃でもされてしまったら。

 火の粉が降りかかるというか、いらぬ誤解を与えてしまうというか、これはちょっと違うな、まあ変な詮索の目が藤堂さんに行くのは俺の望むことではない。そんなことになってしまったらあの時のことが完全に無駄になってしまう。

 俺同様の処分を受ける必要は皆無。

 あんな体験をするのは俺一人で十分。

 屋上での一緒に過ごした時間は俺にとってはすごく有意義で楽しかった。もうあんな時間は二度と過ごせないけど、しょうがない。でも、一人でいるのには慣れている。

 藤堂さんには絶対に累が及ばないようにしないと。

 それには俺に近づかないのが一番だ。俺の傍にいれば目を付けられてしまう可能性、危険性がある。

 それを言葉にして伝えたつもりだったんだが、ちゃんと伝わったんだろうか。

 横を通る時、チラリと藤堂さんの顔を見たけど何故だか動揺しているように映った。まあ、多分俺の気のせいだと思うけど。動揺なんかする理由はないはずだし。

 それとももう一度引き返して言い直しておいたほうがいいのだろうか。もしかしたら俺の真意は伝わっていないという可能性もある。

 どうするべきなのか。

 止めた。近付かないほうがいい。

 まあ、判ってくれるだろう。

 けど、やっぱり。二度目の言葉は誤解を与えてしまったんじゃないだろうか。学校で、という言葉を省略して言ってしまった。深読みすると、もう二度と近付くなと、とられてしまう可能性も……あるかもしれない。

 やっぱり戻って、もう一度伝えるべきなのだろうか。

 大丈夫なはずだ。藤堂さんは判ってくれるはずだ。

 学校では近づけないけど、他の場所なら問題はない。

 例えば紙芝居の上演を行っているショッピングセンター。あそこなら学校から離れているから先生に見られるという可能性は低いだろう。万が一見られても、上演中の観客というだけで一緒の屋上に侵入していた共犯者とは絶対に思われないだろう。

 そういえば、藤堂さんは全然観に来てくれないな。けどまあ、今度は観に来てくれるかもしれない。その時は無様な上演をするわけにはいかない。

 そんなことを考えている間に一階へと。

 そのまま昇降口へ行き、靴を履き替え、自転車置き場へと。

 いざ、稽古場へ。

 久し振りの自由な時間。外は晴天、風も強くなく自転車日和。走りに行くのはこれ以上はないほどの好条件。一週間走っていないから身体が疼いている。が、それは実行しないことに。

 同じく一週間ほとんどしていない紙芝居の稽古をしないと。

 考える。今度藤堂さんが紙芝居を観に来たら、何を上演しようか、と。

 そういえば停学期間中にヤスコに紙芝居を創れと言われたな。

 けど、あれから何も言われてない。

 まあ、いいか別に。

 


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