二学期 3
航
あれから一週間、夏休み前よりも藤堂さんの座る位置が若干近くなっているようなきがする。
けど、特に会話はなし。
静かな屋上。
何も話さない。俺も何も言わない。
というか、何も話題が出てこない。
間が持たないような。この隙間を埋めるために何か話しをすべきなのだろうが、本当に何を話していいのか判らない。
必死に何か話題はないか考えていると唐突にあの人の言葉を思い出す。言葉で間を埋めようとするのは素人だ。間も、大事な芝居だ。
これは別に芝居じゃない。だけど、無駄に言葉でこの空間を埋めなくてもいいんじゃないのか。静かにしているのも別に悪くはないんじゃ。
そう考えて、そのまま黙っていることに。
だけど、ずっと黙ったままでいるのもなんだか……やっぱり間が持たないような。
横に腰を下ろしている藤堂さんをチラリと盗み見る。
顔色が少しだけど良くなったような気がする。
それからあんまり夏休み前と変わってはいないはずなのに、なんか少しだけ雰囲気が変わっているような印象が。
もとより俺なんかよりも大人っぽかったけど、もっと大人になったような。
夏休みの間に何かあったのだろうかと想像してしまう。その想像は邪まな方向へとずれていきそうになったので慌てて遮断する。
もう一度見る。やっぱり少し変わったような気が。
でも、そのことを話題にして会話をする気はなかった。聞く勇気も無い。
ただ、黙って座っているだけ。
でも、いるだけで、傍にいてくれるだけでちょっとうれしいような。
湊
あれから毎日わたしは結城くんのいる屋上へと。
いつもわたしの周りには音が。
家では元気な信くんの声。
登下校、それからバドミントン部では恵美ちゃんの声。
教室の賑やか音。
それからこの夏から付き合う始めた先輩の声。
それらが嫌なわけじゃない。
けど、時折静かな時間を欲してしまう。
とくに先輩とは。
話すのが嫌なわけじゃない。先輩はわたしを楽しませようとしてくれていることも理解している。分かっている。
けれど、ほんの少しだけどそれが煩わしく感じることもある。静かにしてほしいと思うことがある。だけど、それを先輩には言えない。
言えば、きっと先輩を不機嫌にしてしまう。
黙って聞いている。
だから、この静かな場所はわたしにとって憩いの空間。
ここにいても結城くんは何も言わない。黙ったままでわたしを受け入れてくれる。
そして何か話したいときには、それを聞いてくれるような安心感も。
ずっとこの場所にいられるわけじゃない。ここにいられるのはほんの短い時間だけ。
けど、それは大事な時間。
ずっとこのまま屋上で静かな時間を過ごせると思っていた。




