夏休み 3
航
夏休み最後の日曜日。
この日も観客の中に待ち人の、藤堂さんの姿はなし。
観に来てくれると約束したのに。
裏切られた、もう誰も信用できない、自暴自棄になり、何もかもが、この世の全て嫌になって、すべて放り出して、ショッピングセンターを飛び出して、近くの悪名名高い国道へとその身を投げ出した……なんてことは当然していない。
正直気落ちをしてしまったのは事実ではあるが、しかしながら藤堂さんだけが観客ではない。実際に目の前には、ヒーローショーに比べればわずかだけど、それでもベンチが全て埋まるくらいにお客さんが。
せっかく観に来てくれたのだから楽しませないと。
それにはまず俺自身が楽しんで上演をしないと。
そう心掛けるのだが、やはり藤堂さんが観に来てくれなかったことが心の奥底で気になってしまう。
……もう興味をなくしてしまったのだろうか?
いや、たとえそうだとしても藤堂さんなら一度くらいは観に来てくれるはず。
だったら……もしかしたら夏休みに入ってから事故にあった、もしくは大病を患ってしまい入院生活を送っているとか。
気になると同時に、大きな後悔を一つ。
どうして俺は携帯電話を持ってない、文字通り携帯していないのだろう。もし持っていれば、あの時藤堂さんの番号を合法的に知ることができたのに。そして今の状況で、あれこれと思い悩むことなく近況を電話で確認することが可能であったのに。
それからお盆の臨時上演も伝えることできたのに。
だけど、持っていないのだから仕方がない。
持っておけばよかったなと、また後悔を。
二学期になったら藤堂さんの元気な顔が見れるのだろうか。また屋上で話ができるのだろうか。
いつもは夏休みが終わらないといいのにと思ってしまうのに、今年は早く二学期になってほしいと思ってしまう。
……まあそれはともかく、観てもらえなかったのはやっぱり少しさみしいような気が。




