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屋上タイム 11


   (みなと)


 昨日はわたしの都合で早々に帰ってしまったから、結城くんに迷惑をかけてしまったから、今日も早めに屋上へと。

 結城くんにお願いしたいこともあるから。

 そしたら珍しいことに屋上のドアが開かない。

 いつもは簡単に開く屋上へのドアが押しても引いても全然駄目。

 こないだまで簡単に開いたのに。

 いきなりどうして?

 もしかしたら結城くんは昨日のことを怒っているのだろうか?

 それでわたしが侵入してこないように向こう側から鍵をかけた。

 けど、そんなことをするような人じゃないはず。これまでの屋上での会話でなんとなく分かっているだ。

 だったらどうして開かないのだろう。

 考えているわたしの耳に階段を上る音が聞こえた。 

 もしかしたら先生が来たのかもしれない。咄嗟に体を小さくして階段からは見えない場所に隠れる。

 固唾を飲んで誰が上がってきているのか見る。

 ……結城くんだ。

 ……あ、道理で開かないはずだ。結城くんがまだ鍵を開けていないのだから。



   (こう)


 予定通りに苦手科目の赤点を回避し、そして得意科目では予想以上の高得点が採れ、別にこれ位はとクラスメイトには言ったものの、やはり内心ではうれしくて、しばし教室でその喜び、いや歓びのほうが相応しいかに浸ってから教室を出た。

 チャイムが鳴ったと同時に教室から飛びだしていった藤堂さんの背中を目撃しているから、もしかした部活で忙しいのかな、だったらもしかしたら今日は来ないかもしれない、けど一応はまあ屋上に足を運んでみよう、と思いゆっくりと屋上へと。

 階段途中では藤堂さんの姿が。

 慌てて出て行ったのは部活に向かうためではなく、俺と逢うためだったのか。

 まあそんなことはないと思うけど、さっきまであったテストの結果の歓びよりも憂いしい気持ちに。

 待たせるのも申し訳ないので最後は駆け足で、二段飛ばしで走って屋上のドアの前へと。

 いつものように財布の小銭入れの中から鍵を取り出して解錠。

 なんか藤堂さんの視線を背中に感じてやや緊張のものが。

 少し手間取ってしまった、何回か失敗したけどそれでも開けることに成功。

 二人で並んでというわけにはいかないので、先に藤堂さんを、そして俺が後に続いて屋上へと侵入することに。

 俺が屋上に足を踏み入れると同時に、

「結城くんに教えてもらいたいことがあるの」

 と、藤堂さんが真剣な表情で。

 もしかしたら藤堂さんは……いや、これは俺の勝手な憶測だ。それ以上考えるのは止めよう。

まだ早計だ。何しろ藤堂さんの言葉は続きそうだ。

「声の出し方を教えて欲しいの」



   湊


 昨日のお疲れ会でテストが終わって、今度は部活を頑張ろうという話になった。けど、わたしはまだ素人同然で全然上達しない。そこで声で頑張ってみたらという助言を。

 だけど、わたしの声は小さくて通り難い。

 こんな声では試合に出る選手の後押しができない。

 そこで思いついたのが、結城くんから声の出し方を習うこと。

 彼の声は、よく通るし、よく響く。

 これはわたし個人の意見なんかじゃなくて仲の良い子も言っていた。

 ショッピングセンターでの紙芝居はそんな良い声で上演している。

 だからそんな結城くんから声の出し方を指導してもらったらすぐに改善することはできなくても今よりかは少しはマシになるんじゃないかと。

 そう思ってお願いを。

 結城くんはまるでハトが豆鉄砲を喰らったみたいなポカンとした顔を。

 ああ、そうか。こんなことをいきなりお願いされるなんて想像なんかできないよね。ちゃんと事情を説明しないと。



   航


 なるほど。そういうことか。応援のために声の出し方を学びたい。

 俺はてっきり、もしかしたら紙芝居をしてみたいと言い出すのかと思ったけど、これは妄想に。

「……それと一学期は当たらなかったけど、二学期以降に朗読があるから……」

 そういえば藤堂さんはまだ現国の授業の朗読に当たっていなかったよな。

 それに向けての対策もしたい、一石二鳥を狙いたいという考えなのか。

 まあそれに協力するのはやぶさかではない。

 が、問題が。

 俺の今までの芝居人生? で、ずっと指導される側であって、他の誰かに教えるという経験が皆無。

 まあ、それでもこれまで教わったことを総動員すればなんとかなるけもしれないけど、もう一つ問題みたいなものが。

「指導することは可能は可能だけど、でもここでは大きな声を出せないよ」



   湊


 うっかりしていた。

 屋上には無断で侵入しているんだった、見つかったら大変なことになってしまうんだった。

 ここでの結城くんとの話は楽しいからついつい忘れていてしまっていた。

 良い考えだと思ったんだけどな。

 ちょっとがっかりしているわたしの耳に、

「でもまあ、声は出さなくてもできる練習もあるけど」



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