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屋上タイム 10


   (こう)


 テスト期間に突入。

 学校に残る必要はないし、家に帰って明日に備えて、教科書とノートをにらめっこするのが得策であるとは思っているものの、いつものように屋上へと。

 藤堂さんとの約束があるから。

 彼女が来るかどうかは判らない。俺とは違って一緒に登下校する友人もいるみたいだし、なによりも俺同様に明日のテストがある。

 そんなことを考え、時々教科書に目を落としながら待っていたら、階段を駆け上る音が。

 来た、来てくれた。



   (みなと)


 恵美ちゃんと帰るはずだったのを、ちょっと用事があるからと言って先に帰ってもらって屋上へとやって来た。

 屋上のドアを開けると日陰で結城くんが教科書を見ている。

 試験勉強をしているんだ。

 わたしもしたほうがいいのかな?

 明日はちょっと苦手な教科があるし。

 あ、もしかしたら結城くんは得意かもしれない。だったら教えてもらおうかな。

 


    航


 藤堂さんは俺の横にいつものように腰を落とし、バッグの中身からノートを取り出す。

 俺同様に試験勉強をここでするのか?

 こんな暑い場所でしなくてもいいのに。俺が教科書に目を落としていたのは藤堂さんが来るまでの最後の悪あがきのようなもので、来たら仕舞うつもりでいたのに。

 まあ、でも明日の試験に事が気になるのも理解できる。

 だったら、試験期間は屋上じゃなくて図書室で会えばよかったかもしれないな、そしたらまあここよりは少しは涼しい場所で勉強できた。

 いや、待てよ。いつもと閑散としている図書室だけど、多分勉強する場所を求めて多くの生徒が来ているはず。

 そんな場所で藤堂さんに会うのはな。

 俺は別段問題ないけど、藤堂さんにいらぬ噂が立つのは。

 なら、やはりここで正解なのか。

 しかし、ここはさっきも言ったけど勉強するには相応しくないような所。

 こんな場所にずっといたら熱中症になってしまう。

 どうしようか?

 今日は切り上げようか。

 そう決めて藤堂さんに声をかけようとした瞬間、彼女のバッグにぶら下がっているマスコットが目に入る。

「あ、それ……」

 そのマスコットには見覚えがあった。

 

 

   湊


 今日は苦手な教科のテストがあったから、試験勉強の山が当たりますようにという、願掛けのような意味合いで最近はあまり持ってきていなかったお守り代わりのクマのマスコット。

 それをバッグに着けたままにしていた。

 そのクマのマスコットを結城くんが指差す。

「ここに来始めた頃に握りしめてたのだ」

 屋上に来始めた時、全然勇気が出なくてそこでこのお守り代わりのクマのマスコットと一緒に来ていた。

 それを結城くんは覚えていたんだ。

 これまでそんなことを一言も言っていなかったのに。

 わたしのことをよく見ていてくれたんだ。

 観察眼が良いんだ。見習わないと。前に恵美ちゃんにバドミントンは相手を見ることが大事と教わったから。

 でも、それ以上にちょっと恥ずかしくて、うれしいかもしれないような気が。

「あのね、これはわたしの大事なお守りなの」

「お守り?」

 結城くんが不思議そうに尋ねる。

「えっとね……屋上に来るのがちょっと怖くて、それでこの子に一緒に来てもらって、勇気をもらっていたの」

「……」

 なんだか結城くんがもっと不思議そうな表情に。

 もっと詳しく説明したほうがいいのかな。

「この子は小さい頃に造ってもらって、それで大事な時にはいつもそばに置いておいたり、握りしめたりして勇気をもらっているの」

 これでさっきよりかは伝わったかな。

「……ああ、だから今日は持っているんだ」

「うん、化学のテストは不安だったから」

 良かった。伝わったみたい。



   航


 そうか。お守り代わりか。

 そういえば最初ここに来た時は藤堂さんは握りしめていたな。

 それで勇気をもらって、あの時に俺に話しかけたのか。

 けど、試験でのお守り代わりというか、山が当たるように願掛けというのは。

「じゃあ、今日はもう解散しよう。明日の勉強もあるし」



   湊


 結城くんの提案で試験期間は屋上にはいかないことになった。

 テストに集中するために。

 その配慮はちょっとうれしいけど、でも少し残念のような気も。

 


   航


 長いようで短かった期末試験もやっと終了。

 今日から屋上解禁。

 ほんの数日空けただけなのになんだか長いこと行っていないよう錯覚に。

 いつものようにドアのカギを差し込み、開けようとした瞬間背後に気配が。

 藤堂さんがいつの間に来ていた。

 今日はやけに早いな。

 まあ、兎に角屋上へと。



   湊


 期末試験の間屋上に来ることができなかった。

 結果とはともかく終わった。

 屋上に来ることできる。

 ほんの二三日来ないだけだったのに、なんだか長い間来ていないような気が。

 だからちょっと急いでここに。まあ、それ以外にも理由はあるけど。

「テストどうだった?」

 屋上のドアを開きながら結城くんが。

「うーん……一応はできたかな……」

 全教科解答欄は埋めたけど、自身があるかどうか問われると、好きな教科は問題ないけど、苦手なのはちょっと……ヤマが少し外れちゃったし。

「そう」

「結城くんは?」

「俺はまあ……赤点は回避しているはず」

 もしかして結城くんって……。

 いやいや、これはわたしの憶測だ。もしかしたら冗談ということも。

 結城くんの背中から本当かどうか推し量ろうとしたけど、……無理。わたしの観察眼ではそんなことまだまだ不可能。

「……あれ、入らないの?」

 結城くんは屋上へと進んだけど、わたしはまだ校舎の中。

「えっと……ごめんなさい。今日はもう帰らないといけないから。帰りにテストのお疲れ会をしようと恵美ちゃんたちに言われてるから」

 結城くんがケータイを持っていたなら連絡することができたけど。

 本当はもう少し結城くんと話をしていたいけど、恵美ちゃんたちを待たせてしまうのは。

「そっか。じゃあ、今日はお開きで」

 そう言うと結城くんは屋上から再び校舎の中へと。



   航 

 

 久しぶりに藤堂さんと話ができると思っていたけど、先約があるのなら仕方がない。

 藤堂さんが屋上にいないのなら俺もいる必要もない。

 ということで、来たけど早々に出ることに。

 まあ、明日もまた逢えるはずだから。 



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