屋上タイム 7
航
俺の言葉に藤堂さんはすごく驚いた表情を。
何でだ?
…………。
あ、そうか。
誤解だ。誤解を解かないと。
「適当というのは悪い意味じゃなくて、本来の意味合いで」
「本来の意味?」
「うん、適当というのは本当の意味は、上手く当て嵌まっている、相応しいというもの」
「そうなの?」
「それでその後のいいかげんは、良い塩梅という意味で」
言いながら空中に、良、の文字を書く。
「ああー」
どうやら藤堂さんは理解してくれたみたいだ。
「ショッピングセンターという場所柄、決まった年齢の人が観てくれるわけじゃない。老若男女、様々。だから小さい子しかいないような時に落語ネタをしても受けないし、反対にある程度の年齢の子ばかりの時に幼児ものをしても面白いとは思ってくれないから。だから、観客を見て、それでなんとなく合いそうなものを選んでいるんだ」
「へえー」
「そうだ、藤堂さんが最初に観た時もそうだった。同年代の人間が観ているなと思って、それでまあ楽しめるのはあるかと考えて選んだのが、注文の多い料理店」
「……ありがとう」
「……いえいえ」
お礼を言われた瞬間なんか照れてしまって変な返しを。
「結城くん」
「うん」
「それも、その憧れていた人から教わったことなの?」
この藤堂さんの言う「それ」とは色んな意味を内包をしている。適当という言葉の意味、上演する作品の選び方。
これは確か……あの人じゃないな。
紙芝居をするようになってから言われた、というか指導されたものだ。
「……違う……ゆにさんにも舞華さんに言われたけど、適当に意味はヤスコから教えてもらった」
前にあんな奴から影響なんか受けていないと言ったけど、しっかりと影響を受けていた。
湊
わたしの目から見ても分かるくらいに、結城くんがショックを受けている。ガックリと肩を落として落ち込んでいるような感じだ。
そんなに嫌なのかな? 従姉のお姉さんから影響を受けていることが。
そんなには知らないけど、見た感じ仲の良い従姉弟に見えていたけど。
まあ、でもわたしには分からないこともあるから。
あ、それよりも結城くんをなんとかしないと。
このままじゃ前みたいになってしまいそうな気が。
「あ、あの結城くん。……その影響を受けた人からどんな話をしてもらったの?」
話題を変える。
軌道修正を。
「ああ、えっと……他には……」
どうやら成功したみたい。
「……そうだ。……オナニーじゃ駄目だ……」
え?
聞き間違い……じゃないよね。結城くんの滑舌の良い音がハッキリと言っていた。
どういうことなの?
紙芝居とは全然関係ない言葉なのに。
わたしももう高校生だから、その手の話はちょっと苦手だけどそれでもどんな意味なのか理解しているし。けど、紙芝居とオナニーの接点が分からない、結びつかない。いえ、仮に結びついても否定をしているのだから。じゃあ、どういう意味の発言なのだろう?
考えているわたしの耳に結城くんの声が。
「……セックスをしないと……」
もっとビックリするような言葉が飛び出した。




