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屋上タイム 6


   みなと


 結城くんにいきなり「ありがとう」と言われてしまう。

 え?

 なんで?

 どうして?

 わたしは何もしてないのに、ありがとうと言われるようなことは何もしてないのに。

 ただ屋上に来て、結城くんの横にいるだけのなに。

「昨日の藤堂さんの言葉で、あの人とのことを色々と思い出したから」

 そういえば、昨日結城くんが泣く前にそんなことを言っていた。

 ……偶然だけど、お役に立つことできたようで。

「あ……あの、その人との紙芝居の思い出を訊いてもいい?」

 結城くんに影響を与えた人の話をちょっと聞いてみたいと思った。



   こう


「……うん」

 藤堂さんに話すことで、良い供養ができそうな気が。



   湊


「えっと……何から話したらいいか……。ああ、そうだ、前に藤堂さんは俺に訊いて、それで俺の演り方はあの人の紙芝居に影響をすごく受けたって言ったよね」

「うん」

 よく憶えている。

 だから、どんな紙芝居をしていたのか興味が。

「けど、俺みたいに極端に声を変える、喉に負担をかけるような演り方じゃなかった。

 声事態はそんなにも変わっていないんだけど、台詞のテンポとか、間とか、そんなんで何人も演じ分けていて、それでいて何時間も一人で上演していても全然喉が嗄れないんだ。それに俺と違って身長もあって手足も長いから、動きが良いんだよね。一つ一つの動きがビシッと止まっていて、ああそうだ、こないだ藤堂さんも観ていたと思うヒーローショーのようなかっこいい所作で。それで魅せる芝居もできるけど、その反対の力の抜けたコミカルな身体の動かしかたもできるし、ああ、そうそう、紙芝居だからこれは滅多にしなかったけど背中で語るような演技もあったし、それと聞く芝居をしていたりしていた。紙芝居とはまあちょっと関係あるけど落語も本人はもどきだと言っていたけど、結構面白かったし……」

 結城くんが楽しそうに影響を受けた人のことを話してくれる。

 こんなにも饒舌に語る結城くんを見るのは初めてだ。

 ……初めてのはずなのに、どこかで見たことがあるような、既視感のようなものが。

 耳に注力しないといけないのに、少し考えてしまう

 あ、ああー。

 そうか、信くんにそっくりなんだ。

 幼い弟がわたしに好きなものを、戦隊もののヒーローとかオートバイに乗り仮面の人とか、語りかけてくる時の様子と同じだ。

 それくらい結城くんにとってその人はすごく影響を受けた人なんだ。

 そんなこと思いながら、結城くんの話を聞いていたらいつの間にかチャイムの音が。



   航


 昨日は一方的に話し続けてしまった。反省。

 その辺りを注意しながら、今日もまた聞かれたあの人と紙芝居の思い出を。

「うーん……ああ、そうだ、思い出した。紙芝居はジャズって言われたことがあったな」

 小さい頃にそんなことを言っていたような気が。

 そして、その理由はたしか、



   湊


 紙芝居とジャズ。

 結城くんの口から出たこの二つの言葉。それがどう繋がるのか全然見当がつかない。

「えっと……。たしか……俺もまだ小学生の時に聞いた言葉だったから、その時はよく判らなかったけど、今考えてみればこんなことだったんじゃないかと」

「どんなこと?」

「藤堂さん、ジャズは知っている?」

 質問をされる。

「うん、一応は」

 なんとなくだけど聞いたことがある……ような気がする。

 あ、そうだ。昔の映画で観たことある。

「沢山の管楽器で演奏するのだよね」

「ああ、それはビッグバンドのかな。俺の、というかあの人の言っていたのはトリオバンドの構成ので」

 想像したのとは違ったみたいだ。

「トリオバンド?」

 訊きながらトリオというから三人でするバンドなのかと。

「うん。ピアノ、ベース、それからドラムがまあよくある構成かな。それで三つの要素を紙芝居に当てはめて、物語、画、そして声、これが何となく共通しているようなことを言っていたような記憶がある」

「へー」

 そんなことを考えている人なんだ。

 面白い。

「あ、それと大事なことを忘れていた」

「大事なこと?」

「一番肝心な要素。ジャズといったらコレというもの」

「…………」

 そう言われてもジャズのことをよく知らないから分からない。

「アドリブ」

 聞いたことがあるかも。でも、それが紙芝居と関係あるの?

「俺はそんなに上手くできないけど、あの人も、それからヤスコも舞華さんも、ゆにさんも観客の反応を見ながらアドリブを入れて盛り上げたりしているから」

「紙芝居って、後ろに書かれている文章を読んでいるんじゃないの?」

 訊いてからちょっと思い出す、そういえば結城くんは文章を憶えているって。でも、どっちにしろ最初からある文章を声に出しているだけだと思っていた。

「そんなことないよ。書いてある文章を完全に無視して上演ということは流石にしないけど、受けたネタをもう何回もしたりなんかしている」

「そうなんだ。……あ、ちょっと話が逸れちゃうけど訊きたいことが」

 ある疑問がわたしの頭の中に。

「別にいいよ」

「上演する紙芝居ってどういう風に選んでいるの?」

 色んな人が集まるショッピングセンターでの紙芝居。どんな基準で上演策を選んでいるのかちょっと気になった。

「ああ、それは適当に」

 ……えっ?

「いいかげんに決めている」

 結城くんの口からは想像もしてない言葉が。

 



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