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屋上タイム 2


   (みなと)


 お昼休み、わたしは結城くんが待っているはずの屋上の階段を駆け上る。

 昨日も、以前よりも速かったけど、それ以上に。

 これにはとある理由が。

 四時限目の授業は体育だった。 

 更衣室で着替えてそれからお弁当を食べたら、お昼休みの残り時間はわずか。

 だから、走って。

 さっきの体育では全然かかなかった汗を流しながら。

 屋上のドアを開けると、結城くんはちゃんと待っていてくれた。

「こっちに来て座ったら。そこ暑いでしょ」

 結城くんがわたしに。

 その言葉に頷いてから従う。

 全力疾走だったから息がちょっと苦しくて返事ができないから。

 日陰になっている場所にスカートを押さえながらしゃがみ込む。

 けど、結城くんが差した彼の横ではなくて、少し離れた位置に。

 これは結城くんの横が嫌とかいう理由ではなくて、わたし自身の問題。

 時間がないから部活の時以上の全力疾走でここを目指した。

 だから、汗をすごくかいている、そのうえ暑いし。

 こんな状態で結城くんの横に腰を下ろすのは。

 汗臭いと思われてしまうんじゃないだろうか。

 体育終わりの着替えで、スプレーはしてきたけど、その消臭効果がまだ継続しているかどうか不安だ。

 もしかしたら結城くんの所にまで不快な匂いが届いているかもしれない。

 どうしよう?

 もう少し距離を離したほうがいいのかな。

 でも、そんなに離れてしまったらわたしの声が結城くんにはとどかないかもしれないし。

 早く汗が退いてくれないかな。

 そんなことを考えるけど、汗はわたしのそんな気持なんか無視をして、体のいたるところから噴き出してくる。



   (こう)


 暑いから日陰に座るように藤堂さんに言ったら、陰は陰だけど、以前よりも俺よりも離れた位置に。

 そんなつもりは毛頭ないけど、自分でも気付いていない下心のようなものが出ていて、それを見透かされて、それで警戒された。

 それがこの距離に表れている。最初はそう考えたが、どうも違うような。

 左手をパタパタと、まるで団扇(うちわ)のようにして扇いでいる藤堂さんの姿を横目で見て、ああそうか、時間がないからここには走ってきた、だから汗をかいていてそれを気にしているんだ、と推論。

 多分、これは間違った推論ではないはず。

 昼休み前の授業は男女ともに体育。そこで当然運動するわけだし、それに屋上のドアを潜った直後の藤堂さんの様子から察するにここまでは走ってきたはず。

 当然、汗をかくはず。

 そんな状態だったら気にして、距離をとるのもまあ必然かもしれない。

 男の俺でもたぶん似たような状況だったら同じことをしていたかもしれない。ならば、女子ならばそれは至極当然な行動なのかもしれない。

 そんな推理して、少し安堵。

 嫌われたというか、敬遠されたわけではないはずだから。

 しかし、どうしようか?

 昨日、藤堂さんは俺に訊きたいことがあるって言っていたよな。

 俺からそれは何か問うてみようか。

 いや、待てよ。

 藤堂さんは汗をかいているだけじゃなくて、息も少し乱れている、まだ整っていない。

 そんな時に質問なんかしたら整い始めた息がまた乱れてしまい、結果藤堂さんの訊きたいことが上手く言えないような気が。

 呼吸が落ち着くまで待とう。

 待っている間、藤堂さんのことを少し観察。  

 座っていてもよく判るくらいに背が高いな。正直うらやましい。藤堂さんくらいの身長が俺にあれば今すぐにアレを楽しめるのに。

 身長同様に手足も長いな。それに細い。

 長いといえば髪もだな。よく手入れがされた艶のある髪を一本に纏めて垂らしている。

 顔立ちは面長かな。睫毛も長いな。少し眉は太めというか濃いというか、男装が少し似合いそうな感じ。鼻も少し大きめかも。鼻の下も少し長めかも。唇はペットを吹くのにはちょっと向かないかも。あ、リップはしてないな。というか全体的に化粧けがない、ということはノーメイクなのかも。

 視線を少し下に。まだ上下している上半身、胸に。

 おっぱいはそんなに大きくないかも。

 まあこれは比べた相手が悪いのかもしれない。全部が大きいヤスコやゆにさんと比較したら小さいかもしれないけど、舞華さんと対比したら藤堂さんのほうが胸はあるかもしれない。なら同級生の女子と比べたら……うーん、やはり少々小ぶりかも。

 いつまでも胸を凝視していたら失礼だから視線を移動。

 胸はまあ……あれだけど、お尻は大きいかも。

 そういえばあの人が語っていたなお尻の魅力を。俺には全然判らなかったけど、藤堂さんのを見ていたらなんとなくだけど理解できたもしれない。

 今までそんなに興味のなかったものに惹かれるということは、やっぱりヤスコに指摘されたように俺は藤堂さんのことが気になっている、いや好きなのだろうか。

 今一実感というのが。 

 初恋の時とはちょっと違うような気が。

 ……でもやはり意識はしているんだから好きになってしまっているのだろうか。

 判らない。

 判らないままで藤堂さんを見ていたら、俺の耳に彼女のまだ整っていない呼吸交じりの息の声が聞こえた。



   湊


 あ、結城くんがわたしを見ている。

 早く呼吸を整えないと。昨日結城くんに訊きたいことがあると告げた。だから、彼はわたしが話すのを待っているんだ。

 ちょっと息苦しいのが治まってきた。

 さあ、訊くぞ。

 今日はちゃんと何から訊くのか準備してある。

「あのね……結城くんに訊きたいことが……」

 ここまで言えた。

 けど、またチャイムの音が響いてしまう。



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