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秘密の場所 2


   (みなと)


 日曜日、わたしは信くんと一緒にあのショッピングセンターへ。

 その目的はもちろん結城くんに合うため、話をするため。

 教室や学校でクラスの人の目が気になるのなら、それ以外で話しかければいい。結城くんが近所のショッピングセンターで紙芝居を上演していることを知っている。

 そこなら彼に絶対に会えるはず、話ができるはず。

 そしてこれは幸いと言っていいのかどうか分からないけれど、わたしの家は学校から離れている、隣の市にある。あのショッピングセンターなら、知っている人に出会い、そして結城くんに話しかけているのを見られる確率は大分と低いはず。

 そう、思い立った。

 今週の日曜日には部活はない。もうすぐ中間テストが近いので部活はお休み。

 これなら行ける。

 でも、一人で会いに行くという紙芝居を観に行くのは恥ずかしいような。

 そこで幼い弟の出番である。

 こどもの日に観た紙芝居、結城くんのする紙芝居をいたく気に入った弟、信くんを、あれやこれやと言って誘い出して一緒に観に行くことに。

 弟の付き添いという体で。


 お母さんの運転する車でショッピングセンターへと。

 三人で来たけど、観に行くのはわたしと信くんの二人だけ。

 紙芝居の上演中はお母さんはお買い物。

 上演開始時間の少し前に到着。

 そこには準備をしている人が。

 あ、あの人は最初に観た時に結城くんと一緒に紙芝居をしていた人だ。

 もう一人は、お腹が大きな人。

 あれ、でも結城くんの姿がない。

 もしかしたら今日は来ないのかな。

 上演時間まではまだちょっと時間があるから後から来るのかな。

 後から来るのだったらいいけど、もしかしたら先週大活躍だったから今日はお休みとか、テストが近いので勉強をするための本日は紙芝居をしないという可能性も。

 もしそうだったら、来た意味がなくなってしまう。

 こんなことだったら教室で聞いておけば。……あ、それができるくらいならこのショッピングセンターに来る必要なんかなかったし。

 紙芝居の上演時間が迫ってきたけど、結城くんの姿はなかった。


 結局結城くんは姿を現さなかった。

 紙芝居はものすごく上手だったけど、物足りないような感じが。

 その理由は分かっている。結城くんのする紙芝居じゃなかったから。今日上演していた人は二人とも読み聞かせのようなスタイルだったから。

 この時間はいなかったけど、もしかしたら他の時間に上演するかもしれない。後二回上演がある。

 次の上演の時間までここで待っていようか。

 お母さんとは次の上演の時間にこことは違う場所で待ち合わせることに。

 電話して、ここに来てもらおうかな。

 ああ、でも重たい荷物を沢山もっているはずだから、分かれる前にそう言っていた、ここまで来てもらうのは悪いかもしれない。

 諦めることに。

 多分、待っていても結城くんは来ないだろう。

 お母さんと合流するために歩き出す。右手で信くんの手を握り、そして背中には疲労感みたいなものを背負って。

「……どうしてこなかったんだろう?」

 溜息交じりの言葉がポツリとつい出てしまう。

「だれのこと?」

 この声は幼い弟の耳にまで届いてしまった。

「えっと……」

「ねえ、だれ?」

 知りたがりの年頃なのだ。答えないとずっと質問攻めにあってしまう。ならば、適当な答えを言えばいいだけなのだけれど、

「……結城くん……紙芝居のお兄さん」

 つい、本当のことを言ってしまう。

「ぼく、きいてくる」

 わたしの言葉を聞き、信くんはわたしと繋いでいた手を振り解き、ショッピングセンターの通路を全力疾走。

 行先は分かっているけど、全力で追いかける。

 迷子になるような心配はそんなにないけれど、絶対じゃないから。もしかしたら途中で気が変わってどこか別の場所の行く可能性もある。

 それと……。

 信くんの大きな声が聞こえた。

 間に合わなかった。

 音だけじゃなくて、わたしの目にも信くんと紙芝居をしていた二人の姿が。

 恥ずかしい。

 このまま反転してこの場から立ち去りたいような心境になったけど、幼い弟を一人ここに置いていくわけにはいかない。

 本音を言えば傍に近付きたくないけど、行かないわけにはいかないので、重たい足を引きずるようにして前へと進む。

「ゴメンね、あのお兄ちゃんはもしかしたらもう紙芝居をしないかもしれないの」

 ふくよかな女の人の声が。

 え? 

 それってどういうこと?

 もう、二度と結城くんの紙芝居が観られないの?

 さっきまでわたしの中にあった恥ずかしいというような気持ちは消え去ってしまう。

 重たかった足が自然と早足に。

 確かめないと。

 駆け出す。

「あ……あの、……それってどういうことなんですか?」

 三人のそばに駆け寄るやいなや質問を。

「うん……ああ、あの時のお姉ちゃんか。今日も弟くんと一緒に観に来てくれたんだ。ありがとね」

「誰?」

「ほら、前に言ってた子」

「ああー、ヤッちゃんが言ってた子ね。ああ、この子なんだー」

「あの、結城くんが紙芝居をしないってどういうことなんですか?」

「航くんのこと知ってるの?」

「アイツ意外とやるな。いつの間にこんな可愛い子をファンにしたんだ」

「あの……その……結城くんとは一緒のクラスで……」

 ファンかと問われれば、多分わたしは結城くんのする紙芝居のファンかもしれないけど、彼自身のファンかとどうかと問われるとよく分からないから、慌てて関係を説明。

「ああ、航と同じクラスなんだ。大人っぽいから、航よりも年上と思ってたのに」

「大人っぽいというよりも背が高いそう感じるんじゃないのかな。ほら、舞華ちゃんみたいに」

「ああ、なるほどね。言われてみればそうかも。顔とか色んなところはまだ未通女(おぼこ)いもんね」

 お姉さんの視線がわたし顔と、それから胸とお尻に。

 身長だけが無駄に高い。わたしはメイクもしていないしあんまり成長していない。

「ヤッちゃん」

「ごめんごめん。それで、何だったっけ」

「あの、結城くんがもう二度と紙芝居をしないってどういうことなんですか?」

 セクハラのようなことよりも大事なことが。この疑問を解決しないと。

「あ、そうだ。航と一緒のクラスって言ってたよね。アイツさ、学校ではどんな様子なの?」

 逆に質問をされてしまう。

「えっと……前は教室で本を読んでいたり、友だちと話をしたりしていましたけど……GW明けから、なんだか様子がおかしくて、暗くなったというか、落ち込んでいるように見えて……」

 教室での結城くんの様子を思い出しながら答える。

「アイツ、まだ落ち込んでるのか」

「何かあったんですか?」

「それで他には」

 また答えてもらえなかった。

「……あの……最近は休み時間になるといつも教室からいなくなっています」

「ああ、なるほど。ということは航はアソコかな」

「ヤッちゃん、何か思い当たるような場所があるの?」

「ゆにもよく知っている場所。アソコの鍵を航にあげたからね」

「ああ、アソコね」

 なんだか、放置されているような気が。

「あの……」

 お二人で盛り上がっているところ申し訳ないのですが。結城くんのことを。

「ああ、ゴメンね。それじゃあさ、もしかした航はアソコにいるかも」



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