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こどもの日 6


   (こう)


 ある意味リベンジを果たして、ちょっとだけ優越感と恍惚感のようなものに浸りながら、これからの予定、いつもは誰かの運転する車でのこのショッピングセンターに来ていたから行き帰りに車内で見かけるだけで入ったことがないラーメン屋、二郎系に寄って極太麺を堪能しようか、そこにニンニクをたっぷりと投入、今日はフラットバーロードで走ってきたからそれだけニンニク臭くなろうと問題なし、この後臨時収入も入ることだし、そんなことを考えていた俺に話しかけてくる人物が。

 ヒーローショーの人たちだった。

「いやー、すごいね君。紙芝居があんなに面白いとは思ってもいなかったよ」

「えっ……あ、どーも……」

 突然誉められてしまい戸惑ってしまう。

 変な返事を返してしまう。

「まだ高校生でしょう。ホントすごい」

「本当に上手かったよな。今度うちの音源に出てもらおうか」

「それよりもMC任せてもイケるんじゃないか」

「それって、私はクビってことですかー」

 司会のお姉さんが。けど、これは本気では言っていない。

「いやー、今の特撮ものは若いお母さんに人気じゃないか。司会もお兄さんのほうがウケるんじゃないかと思ってさ」

「だったらアクションしてもらったほうがいいんじゃ」

「ああ、仕事とられると思ってるな」

「いや、だってあんなに滑舌良くて、読みが上手くて、舞台度胸もありそうだし。そう、思ってしまうのはしょうがないじゃないですか」

 普段駄目だしを受けまくっているので、おそらくお世辞のようなものだと判っているけど、妙に照れてしまい、何も言えなくなってしまう。

 何か返さないと、失礼だとは思っているけど。

「ああ、航くん。良かったよ。それとちょっと話したい事があってさ」

 そんな状態に俺に前田さんが。

 まさに助け船。

「えっと……何ですか」

「いやー、急なことで悪いんだけど航くんにちょっとお願いしたいことがあってね」



   (みなと)


 昨日の朝はあんなにも重たかった体が今日はすごく軽い気が。

 筋肉痛はまだ少し残っているけど、それでも目覚めは良かったし、恵美ちゃんとの待ち合わせの時間にも楽々に間に合うくらい余裕を持って駅に到着。

 これは昨日、結城くんの紙芝居を観たおかげかな。

 そんなことを考えていたら恵美ちゃんが到着。

「おはよー」

 自分でもビックリするくらいに大きな音が出る。

「おっ、筋肉痛で死んでるかと思ったけど。昨日なんか良いことあった?」

 うん、あった。

 結城くんの紙芝居で、感心して、笑って、堪能した。

 でも、それを言うのをちょっと躊躇ってしまう。あんなにことができるのは誇らしいことだけど、それをわたしが言ってもいいのだろうか。

 許可を取ってから言ったほうがいいかも。

 今日こそは結城くんに話しかける。

 朝出てくる時に、クマのマスコットから勇気を注入してきたから、絶対にできるはず。

「えっと……秘密」

「ええー、教えてよー」

 そう言いながら恵美ちゃんがわたしの体を絶妙な力加減で押してくる。

 筋肉痛の個所を的確に。

「えっ、えっ、恵美ちゃん止めてー」

 ちょっと痛いのとくすぐったいような感覚が。

「教えてくれるまで止めない」

「駄目だって、こんな場所で」

 駅のホームにはわたし達以外のも人も大勢。

「ゴメン、やり過ぎた。で、何があったの?」

「うーん……まだ言えないかな」

 教室で結城くんに話をして、感想を言って、謝罪して、それからお礼をも言って、その後で紙芝居のことを恵美ちゃんに言っていいか、訊いてから。


 もうすぐ始業時間だというのに結城くんはまだ教室に来ていなかった。

 昨日あんなに頑張ったから、今日はちょっとお疲れで、寝坊をして遅刻なのだろうか。

 

 この日、丸一日、教室で結城くんの背中がわたしに目に映ることはなかった。



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