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かんせい? 8


   (こう)


 待ち人の姿が全然見えずに、そればかりが気掛かりになってしまい、ちょっと厳しい目で見るというか、耳で聴くと、一時と二時の紙芝居は少しばかり不甲斐ないできであった。

 この汚名を密かに返上すべく、三時台の紙芝居に取り組む。

 幸いと言っていいのかどうか判らないけど、二時の時にもベンチに座っていた子が三時前にまた来て座ってくれている。

 今度はもっと面白いものを上演しないと。

 後三十分で本日の紙芝居は終了。持てる力、残っている体力を、総動員して上演を。

完成したあの紙芝居を披露することはできなかったけど、まあしょうがない。ヤスコの言うように藤堂さんには藤堂さんの予定があるのだから。それにもう一週練習ができる。

 だけどその前に。今は目の前のお客さんを楽しませないと。

 最初は俺、次はヤスコ、そして最後もまた俺。

 本日最後の紙芝居に選んだのは『ながぐつをはいた猫』。

 いつもの上演よりも力を入れる。

 いつもは声が嗄れないように一応は注意するけど、それでも嗄れる時は嗄れたりするけど、これが本日最後の紙芝居の上演。嗄れて、潰れて、明日は声が出なくなってもなんら問題はない。

 いつもよりも喉の負担のかかる演じ方、声の出し方をする。具体的に言うと、猫は一層コミカルに、お姫様はいつも以上のファルセットでかわいらしく、そして最後の登場キャラ魔王は喉が潰れるかもしれないくらい低く、怖く。

 潰れても、嗄れてもいいと思うけど、この紙芝居の途中でなってしまっては元も子もない。けど、演じているうちに力の抜き方を忘れてしまい、最後まで全力で。

 それでも最後までなんとか声は持ってくれた。

 安心しているところに大きな足音が。

 良かった、終わった後で。これが最中なら、もしかしたらこの音に負けていたかも。

 音の方に無意識に視線が。

 あ、ああー、ええー、藤堂さん?

 上演中は眼鏡を外しているからハッキリ見えないけど、教室で見る姿と全然違う、多分部活のユニフォームと思うけど、間違いない。

 良かったちゃんと伝わっていたんだ。

 安堵と同時にうれしさが。

 しかし、うれしさがある半面で困ったことが。

 両手を膝について大きく息をしている。ハッキリと見えないけど、結構苦しそう。それに加えて多分部活のユニフォームだと思うけど、冬なのに大きく露出した肌からはここまで全力で走ってきた証拠であるかのように白い蒸気のようなものがうっすらと。

 後、一本上演。それもさっきよりも負担の大きな紙芝居をするなんてできるのだろうか。

 悩む、迷う、考える。

 事情を伝えて後日にまた観に来てもらうか?

 それとも、この声の状態でこのまま上演すべきなのか?



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