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かんせい? 7


   (みなと)


 体育館から駅まで一キロないけど、それでもちょっと距離がある。

その距離を全力で走る、持っているスポーツバッグが邪魔だけど、それでも。

 駅についたら今度は階段を上って改札へと。

 ちょっと手間取ったけど改札を通り、今度はホームに向けて階段を駆け下りる。

 丁度良いタイミングで電車がホームに。

 開いた自動ドアを潜り、車内に飛び乗る。

 良かった。乗れなかったら最悪三十分近くホームで電車をまちぼうけという可能性も。

 あがったままの息を整えようとするけど、簡単には苦しいのが治まってはくれない。

 荒い呼吸が続く。

 ようやく呼吸が整ったと思っていたら、息をするのが楽になったと思っていたら、なんだか車内の色んな所から視線を向けられているような気が。

 電車の飛び乗ってきた人間が肩で息をしていたら、ちょっとビックリして見てしまうと思う。多分、わたしも反対の立場なら見てしまうだろう、そう思っていた。

 違った。

 視線が向けられているのはわたしの服装が原因だった。

 練習の途中で飛び出してきたからバドミントンのユニフォーム姿、しかも真冬なのに腕も脚も出ている。

 ものすごく目立っている、恥ずかしい。

 着替えたいけど、車内にはそれなりの人がいて、そんな中で気が画なんかしたら迷惑になってしまう。

 早く駅に着いてくれないかなと祈る。

 二つの意味で。一つは、一刻も早く結城くんが紙芝居をしているショッピングセンターに着くこと。もう一つは、この恥ずかしい状況から少しでも早く抜け出したい。

 それなのに、電車はいつもよりもゆっくりと進んでいるような気がした。


 電車一本でショッピングセンターの最寄り駅まではいかない。

 乗り換えが必要。

 電車にはすぐに乗ることができたけど、なかなか出発しない。五分くらい足止めに。

 上演の時間が終わっちゃう、気持ちが焦る。

 ドアが開くと同時に飛び降りて、駐輪所へと一目散。

 朝、停めた自転車のカゴにスポーツバッグを押し込んで、ペダルに脚をのせて自転車を発進させる。

 気持ちは焦っているのに、それとは裏腹に自転車は全然スピードが出ない。

 これはわたしが下手というのもあるけど、それ以上にちょっと怖いから。駅からショッピングセンターへと続く道は、恵美ちゃんが教えてくれたのだけど旧街道で狭くて、その上抜け道になっているらしくて車の量が多い。

 わたしの横スレスレを車が難題も追い越していく。

 押して歩くことを考えてしまう、頭によぎるけど、そんなことをしていたら絶対に間に合わない。

 そのまま自転車を漕ぎ続ける。

 走り続けているうちに、以前屋上で結城くんが話してくれたこと、自転車の乗り方と突如思い出す。ペダルを土踏まずで踏んでいたのを移動させてつま先の方で。さらには立ち漕ぎにする。怖いけど我慢して。

 心なしスピードが上がったような気がした。

 このまま一気にショッピングセンターまで走り続けたかったのに、上手くいかない。

 信号の色が黄色になって、やがて赤に。

 信号を無視して進みたい心境だけど、この先の道は二車線の大きな道路、そこに突っ込んでいったら紙芝居を観るどころではない。

 停車する、信号を凝視。

 全然変わってくれない。赤から青に変わらない。

 やっと変わってくれたけど、停止した自転車の速度をまた上げるのは大変。

 必死に漕いでいるのに、全然速度が上がらない、さっきのスピードにならない。

 上がらない、ならないままでショッピングセンターに北側入り口に。

 駐輪所にはもう他の自転車でいっぱいだった。

 それでもなんとか隙間を見つけ出して、そこに自転車を押し込む。

 押し込んだスポーツバッグを取り出そうとしたけど、なかなか出てこない。けど、置いていくわけには。中には貴重なものが入っているし。

 なんとか引っ張り出して店内に駆け込む。

 走りながら時間を確認する。三時二十分。

 脚がもう限界だけど速度を上げようとする。けど、大きなスポーツバッグが左右に大きく振れて思い通りに走れない。他のお客さんの迷惑になってしまう。歩いたほうがいいのは分かっているけど、速度を落とせない。

 そんな状況でわたしは自分がした大きな失敗に気付いてしまった。

 どうして北側から入店したのだろう。紙芝居の上演が行われる場所には南側の入り口から入ったほうが良かったのに。そうすればバッグが邪魔になることもなかったのに、こんなにも長い距離走り必要なんかなかったのに。

 けど、今更そんな後悔をしても。

 もう全然上がらない脚を必死に動かして。

 声が聞こえた。結城くんの紙芝居の声だ。『ながぐつをはいた猫』だ。この場面のことは憶えている、猫が頭を使いネズミに化けた魔王を一口で食べてしまうシーン。つまりクライマックスの場面。

 結城くんの声が聞こえた。でも、紙芝居の終わりを告げる声。

 間に合わなかった。



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