第5話 毒魔法を極めたい!!
私は複合魔法を作るために、次の段階である毒魔法をLv10までカンストさせるという段階へと進むことにした。しかし、今のままではまた毒魔法の巻き添えをくらってしまう。次は本当にお陀仏してしまうかもしれない。そこで私は考えた。毒を直すには毒消しポーションがいる→買うお金がない→でも作り方はお母さんに教わった→自分で作ろう
というわけで、早速材料である毒消し草と呼ばれる薬草を取りに行くことにした。
「お母さん、毒消し草採ってくるね」
「気をつけてね」
私はいつも修行でお世話になっている森の近くにある草原へとやってきた。この辺りには様々なポーションの材料になる薬草が、あちらこちらに点々と生えている。今回欲しいのは、毒消し草とヒール草のふたつだ。毒消しのポーションはとにかく在る限り欲しいし、毒の症状が重症な場合、ポーションが一つでは治らないためだ。そして毒で消耗した体力を回復させる体の治癒能力を高める回復のポーションを作るためにヒール草が必要だ。ちなみに、怪我や病気を瞬時に直す魔法は巫女や僧侶などの神に仕える人達しか授かることができない。また、重度の怪我や病気を治すポーションも確かに在るが国家でさえ買うのを躊躇うほど高く、貴重なものだとか。中級の回復のポーションでさえ、大銀貨一枚以上の価値だという。切実にお金が欲しい。初級は誰でも作れるため、価値は大銅貨一枚で100モカ。日本円にして、1000円。頑張れば私でも買うことができるくらいには安い。でも、一ヶ月に一個が限界。我が家は基本、自給自足ですから。そう考えると、今はまだ使えないけれど重度の怪我も直すことができる【超再生】があるのはありがたい。
そろそろ生えている場所まで来たから、鑑定で片っ端から採っていこう。ポーションは低級の物は一週間程度しか品質がもたない。だから作りすぎには注意しないといけない。とりあえずは10本作ることにしよう。1本作るのに、3本は毒消し草が必要だから、30本採ることにしよう。回復のポーションも一本作るのに三本は必要だから同じ数採ることにしよう。何本か残して採らないと失くなってしまうのでそこは注意が必要とお母さんが言っていた。
「【鑑定】」
鑑定のスキルがあれば薬草を探すのが楽になる。このスキルにして良かったよ。ありがとう五年前の私よ。
「良し、集まったね」
思ったよりも早くに、採り終えることができた。次からはこの辺りで採ることにしよう。魔物もいないし。私は持ってきた籠に薬草をいれたあと、帰路に着いた。
「ただいまお母さん!」
「お帰りリニナ。薬草は採れた?」
「バッチリだよ。お母さん、今からポーションを作ろうと思っているから、道具貸してもらってもいいかな?」
「良いわよ、好きに使っていいからね」
「ありがとう。」
私はお母さんが薬師の時から愛用している、調合セットを机に置き、籠から出した薬草を根までしっかりと土や汚れを水で綺麗にしてから、葉→茎→根の順に微塵切りにする。なぜこの順番で切るんだろうとお母さんに聞いたら、毒消し草は
根っこの部分に一番多く毒に効く成分が含まれていて、その次に茎、葉と量が少なくなっている構造をしているからだそうだ。そのため、部位ごとに分けて切り、しっかりと薬専用の石のボウルのような器に入れて綺麗な手で混ぜる。混ぜ終わったら薬専用の魔力を込めることができるすり鉢を使い、すり潰す。ペースト状になった薬草にポーション用の瓶の半分程の水を加えてさらに混ぜる。混ぜている間は、絶えずすり鉢に魔力を込め続ける。しばらく続けていると、薬液が光輝く。これで一本完成。
ポーションの種類に関係なく、工程はだいだい同じ。私はとにかく心を無にしてポーションを作り続けた。昼頃に始めて終わったのが夕方だった。
道具の片付けをして、お母さんにお礼を言ったあと、私はできた毒消しと回復のポーションを瓶に詰めて荷物袋に入れた。お母さんと夕御飯を食べてその日は寝た。
次の日私は朝御飯を食べた後、すぐに森に来ていた。森の奥に行かない限りはゴブリンやスライムなどの魔物と遭うことはない。だから私はいつも森の中腹辺りで修行をする。最近ついに一人で修行しても問題なしとお母さんからお墨付きをもらうことができた。これで少しくらいは無茶しようが誰も止めるものはいない。つまりやりたい放題である。
「【毒魔法】毒霧、毒霧、毒霧、毒霧」
毒霧は一回で魔力を10消費する。私の魔力量は70だから、一日に最高でも7回しか打てない。でも、【武器創造】のレベルも上げたいから、一日に4回が私にできる毒魔法の練習。それから持ってきた毒消しポーションで毒の状態異常を直して、作った錆びた剣に【属性付与】で毒を付与して、剣術の鍛練をした。夕方になり家に帰ってご飯を食べ、布団を敷いて、布団に入った私は悩んでいた。
圧倒的に魔力の総量が少ない。このままでは、毒魔法をレベル10にするのに時間がかかりすぎる。あくまでも毒魔法のレベルをMaxにするのは自分の力を強くするため、複合魔法の力を少しでも強くしたいからだ。それに私の考えたオリジナルの魔法だと思うから、使えるようにするには時間もかかるだからこそあまり毒魔法に時間はかけられない。それにできるなら、独り立ちする前には武器創造のレベルも上げれるだけ上げたい。自分の使える手札を増やすことが、この世界では自分の生死に直結する。私だって実際、ゴブリンとの戦いで死にかけている。この世界では、大抵の子供が10歳から15歳の間に独り立ちする。裕福でない家庭が多いためだ。私も13歳までには独り立ちしようと考えている。お父さんもお母さんも優しいからきっと15歳まで面倒をみてくれるだろう。でも、吸血鬼にとって人間との暮らしは危険が付きまとう。お母さんとお父さんは恐らく私が産まれる前は、魔族と呼ばれる魔物と見た目が似ている特徴を持つもの達の住んでいる、北の大陸タリタリア大陸に住んでいたのだろう。でも赤ちゃんは種族に関わらずレベルが1で産まれる。だから私を育てると決めた時、二人は安全圏から出て、この地に来たのだろう。その覚悟に私も報いたい。それに安心して二人には送り出してもらいたいから頑張りたい。独り立ちしたら冒険者になってみたいし、違う大陸にも行きたい。サリアにもいつか会えると嬉しいな。なにより冒険者になって成果をあげれば、私が半吸血鬼だとは思われにくい。私の見た目は髪が銀鼠色で、瞳は黒色となっている。どうやら半吸血鬼だと瞳は赤ではないらしい。この見た目なら吸血鬼狩りに見つからない限りはやっていけるだろう。
独り立ちするためにもある程度は私のレベルも上げたいのと、魔力を増やしたい。でも今の私にはゴブリンを効率よく倒す方法がない。奴らは集団でいることが多いからだ。私の毒魔法のレベルが上がれば、広範囲の攻撃もできるようになる可能性は高い。それまでは今の魔力量でこつこつ継続して、修行をすることにしよう。
それから三日が過ぎ、今日も私は毒魔法のレベルを上げるために魔法を使っていた。
「毒霧」
《毒魔法のレベルが2になりました。新しく毒玉を扱えるようになりました》
よし、やっと上がった!この四日間ひたすらに毒と向き合い続けた甲斐があった。とにかく毒になったら毒消しポーションを飲むのを繰り返して何故かその途中で【毒耐性Lv 1】を手に入れることができて、これで楽に毒を浴びることができると喜んでいたっけ。あの時はちょっと頭がおかしくなってた。
早速使ってみよう。魔力を手に集めて【毒魔法Lv 2】毒玉。手から魔力が出て、紫色の水の塊のような
丸いものができあがる。そのまま遠くへと飛んでいくイメージを持たせると、真っ直ぐ飛んでいく。これがレベルが2で使える毒玉なのだろう。これなら、ある程度は距離が空いていてもゴブリンに当たることができれば、二匹程度なら勝てるかもしれない。
毒玉をあてて怯んだところに毒霧で視界を遮り、武器創造で作った錆びた剣(毒付与あり)で斬る。これで行こう。そうして私はゴブリン達がいる森の奥へと足を進めていった。