第4話 無属性魔法
目が覚めると家のベットに寝ていた。体が重い。
そしてだるい。
やっぱりまだ私には毒が早かったのだろうか。
それとも、ゴブリンが強かったのだろうか。
ゴブリンがあの強さだと、私がサリアと付き合えると認めてもらえるほど強くなるのに、どれくらい時間がかかるのだろうか。
できれば、後五年くらいでBランクモンスターを倒せるようにはなりたい。
じゃないとサリアのいる魔王城に行くことすら叶わない。
まぁ要するにこれからもっと頑張ればいいということだ。がんばろ私。
それにしても自分にも毒の効果を及ぼす毒魔法はやっぱり凄いや。やはり毒は最高かもしれない。
あれさえあれば世界をとれるかも。まぁそれはないな。でも、希望はある。
新しい魔法も思い付いたし。
使えるようになるために、自分の体が毒に慣れればいいだけの話だ。
とりあえず今は体が動かないから誰か来るまで待とう。
「リニナそろそろ起きて」
体を揺さぶられている。お母さんかな。
「お母さん、おはよ」
どうやら私は二度寝してしまったらしい。
「おはようリニナ。無事目が覚めてよかったわ。それとごめんなさい。私がいながら、無理をさせてしまって。母親として情けない限りね。」
「私もつい熱くなっちゃってごめんなさい。お母さんに頼るべきだったよね」
「次から私も常に毒消しのポーションと回復ポーションをリニナが戦うときは持っていることにするわ。だからリニナも危ないときは私を頼ること。いいね。」
「そうしますお母さん。心配かけてごめん。」
「それにしてもリニナ、何であんなに無茶をしたの?あなたのことだから理由があるんでしょ。良ければお母さんに教えてほしいわ。力になれると思うから。」
「どうしても強くなりたいの。わたしはサリアという女の子と付き合いたいんだ。でも、自分のしたいことをするためには、誰にも邪魔されない力も必要だと考えたの。だからわたしは強くなりたいんだ」
「一つ聞いてもいいリニナ?あなたが付き合いたい子って、魔王様の娘さんのサリアお嬢様なの?」
「その通りだよ」
「·····分かったわ。厳しい道のりになると思うけど、私とマハトはリニナを応援するわ。目標のためにも、修行頑張りましょう」
「がんばるよお母さん。早速今からゴブリンを倒しに行くんでしょ!腕がなるなぁ」
「それなんだけどね、私とマハトがいる時にゴブリンと戦ってもらうことにしたの。何かあった時、すぐに対処できるようにね。いいリニナ。戦うためには基本となる道具の知識や武器の扱い方、構え等々知らないといけないことがたくさんあるの。だからそれらを知ってからレベル上げね」
その日から私はお母さんと時々帰ってくるお父さんに、素手での戦い方や剣や弓の扱い方と手入れの仕方、武器の構えや実戦練習、人の社会での過ごし方、決まりや価値観、仕草や作法、冒険者のなり方や魔物や動物の解体のやり方と実践練習、一般的な知識と、字の読み書き能力、料理や基本的な家事、護身術や傷の手当ての方法など、生きていく上で必要な基本的な技術を教えてもらった。
とても充実した日々を過ごすことができたと思う。お母さんとお父さんのお陰で一人暮らしでも問題なく生きることができるようになれた。
本当に二人には頭が上がらない。ありがとう。
二人から合格をもらうのに気づけば三ヶ月も経っていた。
「はい、合格です。良くできました」
「よく頑張ったねリニナ。偉いよ。もうこんなに大きくなって、お父さん嬉しいような寂しいようなそんな気持ちだ。」
「ありがとうお母さんお父さん。わたしも無事に合格を貰えて嬉しいよ」
「リニナ、一緒にいることができなくてごめん。今度、たくさん休暇を貰えるように、あいつに物理的にたのみに行ってくるから、それまで我慢していてくれ。本当にすぐに帰ってくるから」
「駄目でしょマハト。そんなことしようとするなら、次帰ってきても、口聞かないから」
「それは嫌だ。分かった、普通に帰ってくるよ」
「お父さん、お願いがあるの。お父さんが持っている、【無属性魔法】をわたしに教えてほしいんだ」
「もちろん、なんだって教える。今から外で練習してみようか」
「ありがとうお父さん。お父さん、大好きだよ」
お父さんは大切な人からの愛の言葉にとても弱い。
だから、言われたときにとても嬉しそうな笑顔になる。私はそんなお父さんの笑顔が好きだ。
「じゃあ始めよう」
近くの森に来た私とお父さんは、早速【無属性魔法】習得のためにお父さんの【無属性魔法】をまずは見ることにした。
「無属性魔法の特徴はすべての魔法の中で一番習得しやすく、魔法の形や大きさ、速さをイメージ通りにしやすいこと。それから、この魔法はほぼただの魔力から出来ているから、属性や特徴がなく、どの魔法にも一定の効果があるが、ただそれだけの魔法だ。技も有るわけではないし、特段威力があるわけでもない。世間では、使えない魔法という認識だ。それでも覚えるんだね」
「もちろん!」
「じゃあ始めるよ。【無属性魔法】」
お父さんの手から半透明の白っぽいものが出てきた。これが無属性魔法なのだろう。
お父さんは近くに生えている大木に向かって手を向けると、そのまま無属性魔法を発射した。
見た目からは想像もできない速さで木へとぶつかっていった。ボンと音を立てて木へとぶつかっていき、当たった跡には3cm程の深さがある凹みが出来ていた。
「ほらね、威力はないだろ」
確かに威力はないし、ショボいし、かっこよくはないかもしれない。
でも私はこの魔法に私が作ろうとしている魔法への可能性を感じている。
世間がどうした。いちいち気にしていたら、私の目標は叶わない。
「お父さん、わたしはこの魔法に可能性を感じているの。だから教えてほしいな。」
「リニナの覚悟は伝わったよ。リニナの目標のためにも、お父さんも分かりやすく教えられるように頑張るよ。そうだね、まずは魔力を手の平に集めて外に出すことから始めよう」
「うん、分かった」
私は体を流れる魔力を感じ、手の平へと集めるために集中する。
そして集まった魔力を外へと少しずつ出していく。形は野球ボールをイメージ。
「いいよリニナ。そのままゆっくりでいいから手を前に突き出して、木に向かって打ってみるんだ!」
「いけーーー!!」
ボンと音を立てて私の野球ボールモドキは木へとぶつかった。うーん威力はやっぱりショボい。
「やったねリニナ。後五回くらい成功すれば、無事に習得できるよ。」
え、後五回だと。一回でも結構集中しないとできないのに。やってやるよ。上等だとも。
それからなんとか五回成功することができた。辛かった。
《リニナはスキル【無属性魔法】を習得しました》
アシストさんの声が聞こえた。無事に習得できたみたいだ。
「お父さん、ありがとう。習得できたよ」
「それはよかったよ。お父さんは明日から仕事に戻らないといけないけど、なにか起こった時のためにリニナにも渡したいものがある。リニナにブレスレットをあげる。このブレスレットをリニナの身が危険な時に、中央に嵌まっている石に魔力を注ぐこと。それから常に腕に着けておいてほしい。お父さんとの約束だよ。いいね」
「うん、絶対にいつも着けておくね」
「よろしい。じゃあ帰ろうか。ユヒィナが家で美味しいご飯を作って待ってくれているだろうからね」
それから家に帰り、お父さんとお母さんとご飯を食べ、布団を敷いてから三人で寝た。
次の日、お父さんはいつも通り【時空間魔法】のテレポートを使って、仕事場へと戻っていった。
今更だけど、空間魔法教えてもらうの忘れてた。無属性魔法で頭が一杯だった。
でも、私の作りたい複合魔法へ一歩近づいたし良しとしよう。
次は毒魔法をLv 10までカンストさせないとな。
早く複合魔法を作れるように頑張ろうっと。