表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

嫌われる絵

嫌われる絵とAIイラスト

作者: 白遠

 去年あたりから、AIが生成したイラストを表紙や宣伝につけている小説書きさんをよく見るようになった。


 とても綺麗で感心する。これらは「AIイラストです」と明記してあることもあれば、そうでないこともある。ただ、いずれの場合も一瞬「あ」と思う。絵を描く人間にはたぶん、書いてあってもなくてもそれがAIイラストだということはなんとなくわかる。最近のAIはとても性能が良くて、少し前まで苦手だった人間の指もちゃんと描けるようになってきている。それでもなお、見た瞬間の違和感というのは拭いきれない。不思議な歪みをどうしても感じる。


 よくよく見ると、その歪みがちょっとした人体バランスのずれや衣服のつながりの間違い、背景や小物のあり得ない(悪い夢の中みたいな)物体の混ざりあいから来るものだとわかる。どんなに中央の人物が見事に描かれていても、なんなら多少人力で修正されていても、どこか人間の気配が薄い。


 とはいうものの、その違和感を脇に置いてしまえば、とても美しい一枚の絵になる。絵の雰囲気を楽しむことができる人には、人体バランスの狂いやちょっとした整合性のなさなんていうのは全く問題がない。誰がそんなことに拘るんだ?


 客観的に言って、AIが描いた絵はまるで商業のラノベの表紙みたいだ。華やかで・描き込みが細かく・今風。現実の世界で暮らしたことのないAIが、写真や文章から学んだだけの世界や今の流行をいじらしいほどに頑張って再現した絵なのだ。十分上等な絵だと思う。発注する人間の方だって、相手がAIならリテイクも気を使わなくていい。下手に人間に頼んでご機嫌を伺いながら描いてもらい、思ってたのとイメージが違う絵をもらって仕方なく謝辞と褒め言葉を捻り出すよりは、ずっと気楽でいいんじゃないだろうか。変な手癖もない、塗り残しもない、万人に好かれる絵がいくらでも描いてもらえる。メリットばかりだ。


 デメリットを考えると、AIが出力したイラストが誰かのイラストに酷似してしまう可能性があるということくらいだろうか。でもそれも、わざとでなければ現行の法律では裁かれることはないことになっている。日本においては、AIイラストへの否定的な感情、忌避感というものさえ気にしなければ、悪意なくAIイラストを使用した場合のデメリットというものはほとんどない。AIが描いた絵を「私が自分で描きました!」と嘘をついたとしても、被害者がいないのでここでも感情論以外のデメリットはない(間違いなく信頼は損なわれるにしても)。


 イラストレーターの雇用が減る、アニメーターの仕事がなくなる、というのはデメリットなのかも知れない。ただそれはAIが悪いわけではない。AIに取って代わられるのが嫌なら、それによって権利が侵害されるというなら、AIにできない付加価値を人間側があらたに作り出すか、AIが働いた分の資産を人間に還元する仕組みを作るしかない。AIにできることをわざわざ封じるのは、例えばどこでもドアをみんなが使えるようになったのに、雇用を守るために自動車や飛行機を使い続けるのを強制するようなものだ。


 じゃあ、自分はAIイラストを出力する方に転向するだろうか?


 しない。


 なんでかと言うと、単純にAIの描く絵柄が好きじゃないというのが大きい。綺麗だなとは思う。今風だなと思う。みんなこういう絵が好きなんだろうな、というのも理解している。でも自分にはこの絵じゃなくていい。


 これはつまり、現代において魅力的だと統計的に証明された絵柄を全否定しているということになるのだが、これはもうどうしようもない。「それでいいです」としか言いようがない。蓼食う虫も好き好きというやつ。AIは色々な絵柄を描き出すことができるようになってきたけど、好みの絵を描いてもらうように頑張ってスクリプトを今から勉強するより、自分の場合は自分で描いた方が速いしイメージド直球を出力できる。ガチャする必要がない。一枚描けば足りる。描く過程も楽しめ、描き上がった達成感も得ることができる。それこそ自分で描くデメリットがない。


 もしかして近い将来、自分の絵柄を完全に再現して、微妙なニュアンスまで汲み取って、さらに流行りの要素を忖度して入れてくれるAIができるかもしれない。そうなったら流石にAIにたくさん絵を描いてもらって楽しむだろうと思う。でも自分で自分のイメージを絵に描くということも並行して続けていくだろう。AIとの合作も楽しそうだ。そういう風になったらいいなと思う。絵描き友達みたいでしょう。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 例えば筋肉の付き方とかAIが理解してるわけじゃ無いから結構気持ち悪い事になるね。現状だとやっぱり猿真似の域を出ない感じはするなあ。
[一言] スタンドアローンで自分好みの絵を学習させればちゃんとなりますね。 言っちゃあなんですけど中華風の絵が多く学習されてるせいだと思います。同人で売ってるの見てびびった。
2024/01/09 07:57 通りすがり
[一言] 少し前にXで、自分がAIに描いてほしいのはキレイな絵じゃない、って言いましたけど、具体的には「漫画のオマケページの四コマ漫画の絵」なんですよね。シンプルでラフ(形容詞)ということ。絵心のある…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ