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アンガラの冒険者ミドラ

 おう。俺は冒険者のミドラだ。主に弓を扱う。毒矢は強いぜ、ハハハハ!

 なんだ、お前も冒険者なのか?新米だから色々教えて?そうか。一杯奢ってくれるなら……二杯良いってか。分かってるじゃないか。


 今日は、アンガラより西へ行く。中規模ダンジョン、アンガラ山だ。命知らずの冒険者どもが挑む人外魔境の地だから、やめときな。ここは大型飛行種の魔物が沢山出るんだ。もっとも、大型種の中では、低位の種族ばかりらしいが……。


 なにい?レッサーワイバーンを倒したいって?空から一方的に火を吐くでっけートカゲだぞ。まず人が挑むにはでかすぎるし、全身を覆う鱗は剣も弓矢も弾く堅さだ。どうやって倒すってんだよ。やめとけ。……仲間に結界術師と呪術師が揃ってればカモだけどな。結界術師は防御に専念。身を潜めて近付き、射程圏に入ったら地上から一方的に呪い殺しちまえばいい。


 じゃあホワイトグリフォン行こうって?死ぬ気か?小鳥のような軽やかな身のこなしで空から襲い来る巨躯の肉食獣だぞ。奇襲されて即死だね。運良く地上にいたとしても、奴が魔力を籠めて叫ぶだけで問答無用に恐怖状態。そんで動けない間に爪と嘴で八つ裂きさ。やっぱり即死だね。

 それらを凌いだとて、ちょいと本気にさせようもんなら、魔法でもって風の刃や雷の球を休みなく飛ばしてくるそうだ。そううち一つでも当たっちまえば、鉄の鎧なんざズタボロってー威力よ。鎧の中身?無事なわけねーだろ。挽き肉だよバカ。死ぬ気かって。

 こいつは呪術も効かねえぞ。というか、魔法の類は大概が効かねえ。魔力耐性が強くてな。魔法耐性装備をガチガチに固めた腕利きの戦士を一人二人ぶつけて、正面きってのキャットファイトで殴り勝つしかねえのよ。もし国の軍みたいな集団をぶつけようとしても、飛んで逃げちまうからな。


 空はコイツらの領域。挑んじゃいけねえ敵ってのはいるもんだ。覚えとけ、新米冒険者。


 そんで、地上にも勿論魔物がいる。多分、ゴブリンの上位種だよな。でかい。名前は知らんが、緑色の肌をした巨人が沢山いるエリアがあるらしい。ゴブリン同様に棍棒で闘うようだが、ありゃあ、木をてめーで引っこ抜いてそのまま使ってんじゃねえか?知能もそれなりで、指揮系統のようなものがあるのはかなり厄介だ。あれと当たるぐらいなら、徒党を組まないだけ、レッサーワイバーンの方がまだマシなぐらいだぜ。特に、肌が灰色で目玉が一つしかねえ巨人は、群を抜いて強力らしい。絶対に会いたくないもんだね。


 これも挑んじゃいけねえ相手だ。アンガラ山にいる魔物は、主にこの辺りだな。


 なにい?挑んじゃいけないなら、ミドラさんは何を狩りに行くんですかって?


 ハハハハ。あのな、討伐ばかりが仕事じゃないのさ。俺の今回の仕事は、調査だ。アンガラにある仕事の大半は、アンガラの平和に繋がるものなのさ。


 一つ、アンガラに迫る未知の危険の事前察知。何でも良い。おかしな物をみつけて報告。危険性や希少性等が認められればお手柄さ。かなり良いカネになる。

 一つ、いずれ高位の冒険者に討伐を依頼するであろう強力な魔物の情報収集。アンガラ山は強い魔物ばかりだから、アンガラでは安定していつでも受けれる仕事さ。討伐担当の生存率や、街の平和に直結するといっていい。カネは正直微妙だが、やりがいはピカイチってね。討伐成功時には追加報酬も入るらしい。

 一つ、水質や生態系に異常がないかを調べる自然観察。コレは定期的に行う検査で、低頻度にしか発生しない仕事だが、信頼できる冒険者への指名依頼となるため、そこそこカネが良い。具体的にはE~D級の冒険者がやる仕事だね。これは実績がふるわない万年F級の冒険者には任せられない。新種の魔物等を早期発見するための、責任重大な仕事さ。


 俺は今から、レッサーワイバーンの生態を調査に行くんだ。倒せないし、倒さない。観察個体を決めて、三日間張り付くんだ。

 どういうタイミングで地上に降りるのか?どこでいつ寝て、何を食うのか?奴を待ち伏せするなら、どこか?どんな罠が効く?幼体は何処に隠しているのか?知能はどの程度ありそうか?

 そういう情報が、いつか討伐の実現に繋がってゆくのさ。


 さて。野営用の食料を買って来なくては。調査中はターゲットを見失わないよう、現地で睡眠を取るからな……。危険だが、ま、色々とコツがあるのさ。奴らも生物である以上は眠るし、種族毎のなわばりと徘徊ルートは大概把握している。ルート外で、果実や水辺等もなければ、奴らとてわざわざ来ない。などなど、まあ他にも沢山ね。


 おっと、その辺りの情報は高いぜ。かなりな。酒ぐらいじゃ教えられねー。冒険者の情報ってのは常にカネでやり取りされ、時として、目に見える装備品なんかより、よっぽど命を守ってくれる、立派な防具なんだわ。大事な商材だからよ、ここまでな。


 ではな、新米冒険者よ!酒、ごちそうさん。

ワンドロ

スコア1975字


拠点 アンガラ

主役 冒険者ミドラ

出演 話を聞き出す新米冒険者


キーワード

・アンガラ山

・レッサーワイバーン

・ホワイトグリフォン

・結界術師、呪術師

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― 新着の感想 ―
[良い点] ファンタジー短編という新境地ですね。ロドリゴの話や今回のミドラの話が特に面白かったです。遠くから俯瞰しているのではなく、間近から肌で感じるようなストーリーが心にしみました。 特に今回は読者…
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