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かくれんぼ

作者: 行方不明者X
掲載日:2023/01/01

むかし、あるところに、ハーヴィというぬいぐるみがいました。


ぬいぐるみしょくにんさんのしわだらけのてで、ひとはりひとはり、こころをこめてつくられた、ふわふわのからだと、なまえのししゅうがはいった、つやつやのみどりいろのリボンのネックレスがじまんの、クマのぬいぐるみでした。


「きみが、あいされるこでありますように」


そういいながら、あたまをなでてくれるしょくにんさんが、ハーヴィはだいすきでした。


けど、ハーヴィは、いつかはここから、でていかなければなりません。そして、ここではないおうちでまっている、おともだちのもとへ、ともだちになりにいくのです。


いままでも、たくさんのきょうだいが、このおうちからたびだっていきました。


しょくにんさんとおわかれするのはさびしいですが、ハーヴィもいつか、きょうだいたちのようにたびだっていくひを、まちわびていました。


あるひのあさ、しょくにんさんが、ハーヴィをそとにつれだしました。


「さぁハーヴィ、ここが、きみのいくおうちだよ」


しょくにんさんとおとずれたそこには、ハーヴィとおそろいの、みどりいろのリボンのかみかざりをしたおんなのこが、ハーヴィをまっていました。


「まっていたわ、ハーヴィ。きょうからよろしくね」


そういっておんなのこは、ハーヴィをぎゅっとだきしめてくれました。そのときから、ハーヴィはおんなのこのことがだいすきになりました。


それからふたりは、ずっといっしょにすごしました。


あそぶときも、ごはんをたべるときも、おでかけするときも、ねるときも、ずっといっしょでした。


「ハーヴィ、だいすきよ」


おんなのこはいつも、とってもすてきなえがおで、そういってくれます。おんなのこにそういわれるたび、ハーヴィはとってもうれしいきもちになりました。


そんなあるひ、おにわでハーヴィとあそんでいたおんなのこは、とつぜんたちあがって、わらっていいました。


「こんなにおてんきなひにでかけないなんて、なんだかもったいないわ。ピクニックにいきましょう」


そういって、おうちからすこしはなれたところにある、いちばんおおきなカシのしたに、ハーヴィをつれていきました。おんなのこは、ハーヴィをカシによりかからせてすわらせて、いいました。


「いまから、ママとくせいの、おいしいサンドイッチと、おちゃをもってくるから、ここでまっててね」


そういって、おんなのこはおうちにもどっていきました。ハーヴィは、いわれたとおり、カシのしたでまっていました。


しかし、どれだけまっても、おんなのこはもどってきませんでした。


まわりがくらくなって、あかるくなって、ときにはあめがふって。それをなんかいもくりかえしても、おんなのこはもどってきませんでした。


どうしたのかな、と、ハーヴィはかんがえます。


みちにまよってしまったのかな。


それとも、どこかでころんで、ないてしまっているのかな。


さがしにいきたかったけど、ハーヴィはぬいぐるみだから、うごけません。だから、ハーヴィはまつことにしました。おんなのこが、まっててね、といっていたので。


おんなのこがかえってきたら、なにをしてあそぼうかかんがえながら、ハーヴィはまちつづけました。


おんなのこがかえってくるまで、ずっと。


ずっとずっと、まっていました。


そうして、ずっとながいじかんをすごしていたひのこと。


ざくざく、と、おちばをふむおとがしました。


ハーヴィは、そのおとをきいて、よろこびました。あぁ、きっとあのこがかえってきたんだ!


けど、ハーヴィのまえにあらわれたのは、あのことはちがう、おおきなおんなのこでした。


「あれれ、こんなところに、ぬいぐるみがある」


おおきなおんなのこは、ハーヴィをひょいともちあげ、ぽんぽんとハーヴィをかるくたたいて、はっぱをおとしました。そして、リボンのネックレスをうらがえしてみました。


「ハーヴィっていうんだね」


そうしてハーヴィのなまえをよぶと、にっこりとわらいました。


「ちょうどいいや。ねぇ、こんなところにいないで、わたしとあそぼう」


おおきなおんなのこのおさそいに、ハーヴィはこまってしまいました。あそんでもらえるのはうれしいですが、それはできません。だってハーヴィは、このカシのしたで、あのこをまっていないといけないのですから。


けど、ハーヴィはうごくことも、おはなしもできません。だから、おおきなおんなのこは、ハーヴィのへんじなんてしらず、そのままハーヴィをつれていってしまいました。


おおきなおんなのこは、ハーヴィをつれて、あるきます。どんどん、どんどん、カシからはなれていきました。


カシのきがちょっとずつとおくなるたび、ハーヴィはかなしいきもちになりました。いなくなっているあいだに、あのこがきたらどうしよう。


けど、そんなハーヴィのきもちは、すぐにかわりました。おおきなおんなのこがつれてきたのは、わすれるはずもない、あのこのおうちだったのでした。


ハーヴィはおどろき、よろこびます。やった、あのこにあえるぞ!


けど、おうちはまっくらで、だれもいませんでした。それどころか、あたりいちめん、くろいインクのようなものでよごれて、きたなくなっています。


こんなによごしていたら、きれいずきなママにおこられちゃう!


ビクビクしていたハーヴィですが、いつまでたっても、ママのおこるこえはきこえてきません。しーんと、しずかなままでした。


あれれ、おかしいな、と、ハーヴィはくびをかしげました。


だいすきなあのこも、やさしいパパも、すてきなママも、いったいどこにいってしまったのでしょう?


けど、ハーヴィはうごけないので、さがしにいけません。おおきなおんなのこにされるがまま、いつのまにかおなかにできていた、おおきなきずをぬわれていました。


おおきなおんなのこは、まっかなあかいいとで、ハーヴィのきずをていねいにぬっていきました。


ほんとうはちゃいろのいとでぬってほしかったハーヴィですが、しかたありません。がまんして、きずがぬわれるのをまっていました。


「ねぇ、かくれんぼしましょう」


きずをぬいおえたおおきなおんなのこは、ハーヴィにそういいました。


「ハーヴィがおに、ハーヴィがおに、ハーヴィがおにね」


いいきかせるように、おんなのこはなんかいもハーヴィにいいます。


そして、ハーヴィをとん、とさすと、おふろばにつれていきました。おおきなおんなのこは、おふろにハーヴィをほうりこみました。じゃぶん、と、つめたいみずが、ハーヴィのからだをあらいます。


ぶくぶく、ぶくぶく。このままじゃしずんじゃう、とおもった、そのときでした。


とてもふしぎなことがおきました。


いままでうごかなかったハーヴィのからだが、うごいたのです。


ハーヴィはびっくりしましたが、むがむちゅうで、みずのなかでもがき、とびでました。


おふろからでたハーヴィは、おそるおそる、そーっと、たちあがりました。おおきなおんなのこにつめかえられたつめものが、じゃらじゃらとおとをたてました。


ぬれたからだはとってもおもかったけれど、なんなくうごきます。


なにより、あのことおなじように、あるくことができました。


ハーヴィは、おおよろこびしました。あぁ、あのおおきなおんなのこは、まほうつかいだったんだ!


ぼくに、あのこをさがしにいけるようにしてくれたんだ!


おんなのこにおれいをいわなきゃとおもって、ハーヴィはあたりをみわたします。けど、おんなのこはどこにもいません。どこにいってしまったのでしょう。


ハーヴィはかんがえました。


そういえば、おおきなおんなのこは、かくれんぼをしようといっていたな。もしかしたら、ぼくがさがしにくるのをまっているのかな。


そこでふと、ハーヴィはおもいました。


もしかして、あのおおきなおんなのこは、あのこのおともだちなのかな。


あのこがピクニックにいこうっていっていたのは、みんなでかくれんぼをするためだったのかな。


あのこも、ママも、パパも、みんなおうちのどこかにかくれて、かくれんぼのじゅんびができたから、おおきなおんなのこが、おにのぼくをむかえにきたのかな。


そうだ、きっとそうにちがいない!


よぉし、それならがんばって、みんなをさがさなきゃ!


ハーヴィははりきって、みんなをさがすためにあるきだしました。


じゃらじゃら、しゃらしゃらとおとをたてながら、あるいて、あるいて、はっとたちどまりました。


しまった、かくれんぼのときのあいずをいってないぞ。


なので、ハーヴィはおおきなこえでいいました。


『もぉういぃいかぁい』


しーん。だれもへんじをしてくれません。


『もぉういぃいかぁい』


もういちど、おおきなこえでいいました。けど、やっぱりだれも、へんじをしてくれません。しかし、まぁだだよ、もきこえません。


きっとみんな、みつからないようにへんじをしないんだな。


よーし、まけないぞ。


ハーヴィはますますはりきって、みんなをさがすために、おうちをあるきまわりました。


ぺしょ。じゃらじゃら。


リビングにはだれもいませんでした。


べと。しゃらしゃら。


キッチンにもだれもいませんでした。


ぺしょ。じゃらじゃら。


げんかんもみましたが、いませんでした。


べと。しゃらしゃら。


ものおきにも、だれもいませんでした。


ぺしょ。じゃらじゃら。


しかたないので、かいだんをあがって、にかいにいきました。


べと。しゃらしゃら。


そういえば、かくれているひとをみつけたら、どうやっておにをかわってもらうんだったっけ。かくれんぼなんてひさしぶりだから、わすれちゃったなぁ。


ハーヴィはたちどまって、うんうんかんがえます。


そうして、おもいだしました。


あぁ、そうだ! おなかのこれを、おなじようにさすんだった! うっかりうっかり。


ぺしょ。じゃらじゃら。


ハーヴィはまた、おうちをさがしまわります。


べと。しゃらしゃら。


パパのおへやには、だれもいませんでした。


ぺしょ。じゃらじゃら。


ママのおへやにも、だれもいませんでした。


べと。しゃらしゃら。


そして、さいごに、あのこのおへやのまえにまできました。


なかなかドアがあきませんでしたが、ちからいっぱいがんばって、なんとかドアをあけました。


おへやのなかをみると、あのこのおきにいりのふくがつまったクローゼットが、すこしあいていました。


みみをすますと、ふぅ、ふぅ、という、だれかがいきをはくおとがきこえました。


あぁ、そこにいるんだね!


『みぃつけた!』


とん!

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんとなくホラーチックなお話ですね。(汗)
[一言] あのこに会えたのかな?
2023/01/01 14:23 退会済み
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