赤い薔薇
パーティだった。
優馬は、礼服姿で会場を彷徨っていた。
「あっ!ユーマさあん。良かった。会えた」
ふわふわの髪を肩まで伸ばし、黒地に銀のチューリップ柄のドレス姿の彼女は、優馬の目に心地よかった。
「君も来てたんだ」
「はい。こう見えて私も戦力の1人なので」
かわいくガッツポーズをとる。
「絶対、今回は失敗できない」
「はい。わかってます」
表向き華やかなパーティだが、出席者たちは会社の買収の食うか食われるかでピリピリしていた。
「勇気と幸運の印を」
彼女はテーブルに飾られた花の中から深紅の薔薇を一本取り出すと、優馬の胸のボタンホールに挿した。
心臓に近い位置にある。
「ありがとう」
優馬は別の赤い薔薇を彼女の髪に挿した。
2人は微笑みを交わすと、
「さあて、行きますか!」と、主要人物の集まっているテーブルへ向かった。
負けるわけがなかった。
勢いに乗って、戦いに圧勝した。
「乾杯」
シャンパンのグラスをぶつけて一口飲むと、勝利の美酒に赤い花びらが舞い落ちた。