8「小屋の吸血鬼」
「あれが商人の住まう村か」
双眼鏡を覗きながら、私は言った。
さて、どのように破壊してやろうか。
「まずは『嵐鼕鳴動』と『霖氷鋭刃』で襲ってやろう」
巨大な魔法陣を二つ展開し、豪雨を伴う竜巻と鋭利な氷の塊を出現させた。
竜巻はそのまま村の建築物を全て吹き飛ばし、おまけにそこへいる人々へ雷を直撃させた。
続けて大量の氷の刃が村全体を襲った。雨のように潸々と降り注ぎ、村中に血溜まりを作る。
私は頭上に魔法障壁を作り、馬を走らせた。
悪徳商売を繰り返す商人を探しに行くのだ。
「どこにいるか分からないな……流石に荒らしすぎたか」
竜巻と氷の雨は止んだものの、村中が大変なことになった。
木造住宅は崩れ、畑と牧場は荒れ、無残にも人々の死体が転がっている。
すると、私は一つの小屋が綺麗なままで残っていることに気が付いた。
その小屋は村全体の端の方にあり、いかにも鄙俗と言うべき造りをしている。
「中に入ってみる価値はありそうだな」
村人は誰も生存してはいなかったため、私は小屋に入って暇つぶしをすることにした。
そして小屋の戸に近付いた瞬間、
「な――!?」
途轍もない殺気を感じた。
背後から感じたのではない。この小屋の中からだ。
「面白いじゃないか……」
私は好奇心に身を任せ、手早く戸を引いた。
すると、中には一人の少女がいた。
両手と両足を鎖と錘で縛られ、鉄の猿轡を嵌められている。更に、少女の前には人骨があり、少女は私を睨んでは唸っていた。
私は魔法をかけ、少女の鎖と錘を破壊した。猿轡を取ってやろうとしたその瞬間、少女が私に向かって飛びかかってきた。
「馬鹿か」
私は少女にかかる重力の負担を倍増させ、身動きを取れなくさせた。
そして猿轡を取ってやり、私は少女に声をかけた。
「貴様のその牙と、深紅の瞳……さては吸血鬼か?」
「うぅっ……!!!!」
少女は唸り、私をじっと睨み付ける。
「呼応しなければ殺す。それとも、私と会話できない理由でもあるのか?」
「――」
すると少女は先ほどまでとは打って変わり、静かになった。
私は少女の頭を撫で、
「話すがいい。私は敵ではないぞ」
「――うっ」
すると、少女は重力の負荷に抵抗するごとく暴れ出した。
「落ち着け。私はこの村に住む悪徳な商人達を処刑しに来ただけだ。貴様は商人ではないだろう?」
「――ろしてくれたの?」
少女は涙を浮かべながら、私の顔を見上げた。
「あいつらを殺してくれたの?」
「ああ。一人残らずな」
私は少女にかかる重力の負担を元に戻してやり、微笑んだ。
「貴様は一体いつからここにいたのだ?」
「十年前から」
「何故ここにいる?」
「商人に売り物として連れられた」
つまりこの吸血鬼の少女は商人によって、売り物としてここに放置されていたわけだ。
それは酷い話だが、こうして私は少女と巡り合うことができたのだ。少しぐらい感謝はしておこう。
「貴様は吸血鬼か?」
「そうじゃ……だからこそ、商人によって連れてこられた」
「それは災難だったな。だが安心しろ、その商人たちは私が鏖殺した」
私は少女に手を差し伸べ、
「――私と共に来ないか?」
すると少女は沈黙し、考え込んでしまった。
私は少女の頭を撫でて、
「すぐに決断することでもない……ひとまず私の部屋へ来るといい」
私は少女を抱き上げ、移動魔法を使った。
そして部屋に戻り、少女の服を脱がせた。
「風呂へ入るといい……この衣服は捨てていいか?」
「構わん……余は先に風呂へ入ってくるぞ。その後に、お前に着いて行くか決めてよいか?」
「ああ、いいとも。それと、少し用事があるから私はまた村へ行く」
「了解した」
私は魔法陣を展開する途中、少女の方をぎろりと睨み、
「悪意のある行動をすれば、私はすぐにここへ戻ってきて貴様を殺す――いいな?」
「わ、分かったのじゃ……」
そう言い置き、私はまた村へと戻ってきた。
しかし、村とは言っても少女のいた村ではない。
「――魔族などと交流をするとは、悪趣味だ」
レイラとウテナの暮らしていた村へと、私は帝国の掟に則り断罪しにきた。
「恨むなよ、レイラ、ウテナ」
どうも、焼き鮭です。
もし
「面白い!」「吸血鬼ちゃんの活躍が見たい!」「自分もリキアに頭を撫でられたい」
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