16「死ぬわけにはいかない」
――聞き覚えのある女の声が、耳に入ってきた。
「――ユダ、起きてよ!!」
「何だよ……オレはまだ眠ぃんだよ」
「今日はウテナとトウマが早起きして稽古をしてるらしいよ! アタシ達もしよ!!」
「――分ぁったよ」
一つの間を置いて返事をし、オレは重い瞼を開けながら起き上がる。
すると、屈みながら見下ろしているレイラがいて――思わずオレは体を仰け反らせてしまった。
「おおっ! ち、近ぇんだよ……」
「あれ? 何かアタシ変なことしたかな」
「十分にしてるわ……っていうか、本当にあいつらは稽古なんざやってんのか?」
「やってるみたいだよ。ね、だからアタシ達も行こ?」
「つーか、そもそも何でレイラがオレの部屋にいんだよ」
途端、レイラが首を傾げて、
「ん、入ってきちゃ駄目だった……?」
「――い、いや別に駄目ではねぇけどよ」
思わず見惚れてしまったオレは小さな声でそう言うと、頭を掻いて隣に寝かせていた大鎌を手にする。
「鎌と同衾って、どうなのかな」
「うっせぇ!! こいつはオレの相棒なんだよっ!!」
「それでも、武器と一緒に寝るってどうかしてるって思うけどね」
「引くな。それは本人の自由だろうが」
オレはレイラに言い返すとベッドから降り、制服を手に取る。
「着替えていいか?」
「ん、もしかして着替えを見られるのが嫌なの?」
「んなわけねぇだろ!!! オレが着替えることに対してレイラが嫌じゃないのか聞いたんだよ……ったく」
寝間着を脱ぎながら、オレは悪態を吐く。
ふと、後ろでレイラが何かもぞもぞと動いている音が聞こえて――オレは溜め息と共に後ろを振り返った。
「――なんで顔赤ぇんだよ」
顔を赤くしたレイラはオレの顔を一目見ると、目を逸らす。
すると、上目遣いでこちらを見直し、
「ごめん……やっぱアタシ、ユダの着替えを見るの嫌かも」
「嫌なのかよ……ならあっち向いとけよ」
「うん、そうするね」
レイラは体を壁の方に向けた。
それを見届けたオレは引き続き寝間着を脱いで、制服を身に着ける。
それにしてもまじ破壊力やべえな。あの上目遣いは卑怯だろ。
「オレは何言ってんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「――っ、急にどうしたの!?」
「悪ぃ、取り乱しちまった」
声だけ飛ばしてきたレイラに言い返すと、オレは制服に着替え終わった。
そしてレイラの方へと歩き、
「もうこっち向いていいぞ。ていうか、そんなに気になるもんなのかよ」
「そりゃ……だって……」
顔を赤くしたままレイラがそう答える。
もしかしたら自分のことが好きなのかとでも思った単純なオレだが、流石にそんなことなど妄信してしまえば終わりだ。
「――ユダってさ、かっこいいよね」
「急になんだよ」
「前から思ってたんだけどさ。口は悪いし、声はでかいし――でも、本当は優しいし、顔もいいし、背丈も高い。おまけに、アタシとよく話してくれる」
「――んなっ、なんだよ……!」
レイラの急な告白にオレは戸惑う。
やばいやばいやばい。なんなんだこの展開! オレがオレじゃなくなりそうな気がする。
うるせぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! これくらいで取り乱すな、オレ。
すると、レイラが頬を赤くしたまま微笑み、
「ユダのそういうところ、アタシは本当にかっこいいと思うよ」
「そ、そうかよ……」
照れくさくなり、オレはレイラと視線を合わせることができずにそっぽを向く。
にしても、『かっこいい』か。
オレは微笑んでいるレイラを見つめ、不意に心中が温かくなっていくのを感じた。
そして、思わず自分も微笑んでしまい――
「悪くねぇよ」
そうだ、本当にレイラと一緒にいるのは悪くない。
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「まだだ……」
オレは目の前で戦っている二人の少女を目に、そう呟く。
「まだ、死ぬわけにはいかねぇんだよ……」
地面を這いずるようにして進み、オレは大鎌の方へと手を伸ばす。
「ナーガ、最後に一つ……力を貸してくれよ」
すると、オレの言葉に頷くようにして大鎌が発光した。
それに気が付いた二人の少女はこちらを向く。
「いいぜ、これはいい……」
オレは立ち上がり、湧き出てくる膨大な魔力と力のあまりにそう呟いた。
「まだ生きていたの、大罪人……」
「うっせぇ。てめぇの相手はこのオレだ……けっしてレイラじゃねぇよ」
「ユダ……」
心配そうな面付きをするレイラを見ては、オレは心の底から微笑んだ。
「心配すんな――絶対ぇこいつはオレが倒すから」
どうも、焼き鮭です。
もし
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