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不識編【終】


「うっぅぅップ…」

「ぁぇ…お爺さま…吐きそうです。

 吐いても…ぅぇ…良いですか?」

「かまわ…っゥプ…木陰で吐いてしま…ッえ…。」

「すまん、俺も吐いてくる。」

目の前で地獄絵図が展開されていた。

わたしの煙を使った移動はこれが困るところだ。

距離にも応じるみたいだけれど、船酔いや車酔いをし易い人間程、キツい症状を受けるらしい。


兼定に関しては意地悪だ、それと兼定は公的権力と斬り合いを平気でするからとっとと外に放り出した。

ここまで来させれば、後は普通に歩いて逃げるだろう。

雪華とかいう子の方もダメだとは思わなかったけれども。

ーー無事シス君も移動はできているらしい。

煙の中で意識だけ分離して話をするのはぶっつけ本番だったから少々心配だったが。


さて、用事をとっとと済ましてイースタン邸に戻るとしよーーー少し場所がずれたか。

わたしの記憶が正しければ此処は小屋から50m程離れた森の中だ。

多分、無理矢理シス君と話す場を設けてしまった所為でずれてしまったのだろう。


「ーーップーーあ?なんじゃこの餓鬼は。」

「ーー…餓鬼?」

彼方の声を聞き、目線の先を見る。

鬱蒼と生い茂る木々の中。

その中に、黒い髪で褐色の少女が倒れていた。


取り敢えず、近寄り揺り起こす。

「おい、起きんか。」

空が白んでいるーーと言うことは明け方なのだろう。

こんな時間に、薄布一枚だけを着た少女?

よく獣に襲われなかったものーーーー


「ーーー離れろ!シス君!彼方!」

ーーー脳が警告する、あれにこのまま触れ続けることは危険だと。

私は抱えていた少女を突き放した。


薄く目を開けた少女が、叫ぶ。


雪華を抱えて彼方が後ろに飛び退く。

「ぉぁっ!?」

シス君の襟元を引っ掴んでわたしも後ろにーー。


「ーーーーッ!」

少女が目を見開き、白目を剥いて、血涙を流す。

鼻血を噴き出しながら、歯を食いしばり、口角から泡が飛ぶ。

周囲の草がーー枯れる。

「ッァ!ガッ!ーーツッァ!」

周囲の木が枯れる。

目の前に触れるとマズい力場があるーー。


「なんだ!?なんなんだ!おい!」

「おい、婆ァ!あれ斬っちゃいかんのか!?」

切断脳め。

「いかん、恐らくアレは『魔女化』じゃ。

 収まるまで待たんとどうなるかわからんぞ!」

合っているはずだ、此処まで激しいものは初めて見るが。

「キヒッ、ならもう少し下がるしかないかの。」


ボトリ、と空から何かが落ちてくる。

ーー鳥ーーマズい。

「走れ!コイツのは球状じゃ!」

何度か見たことがある普通の魔女化とは違う、コレはーー異能の力が溢れ出している?

ーー後ろを向く直前に地面の一部が朽ちていくのが見えた。

ひび割れるや、裂けるではなく、確かに地面が朽ちていくのがーーー。


腐敗?違う、落ちてきた鳥は腐ってはいなかった。

毒?違う、草は枯れていた、鳥も干からびていた。

酸化ーー、いや、これはーー。


ーーーーー『死の魔女』?


純粋に、死を与える魔女ということか?

「クソが!いつまで走れば良いんだ!畜生!」

シス君が悪態をつきながら全力で走る。


瞬間

「ーーーーァアアアアアアアアッーーァガッ。」

その声と共に、侵食が止まる。

「止ま…った…のか?」

おっかなびっくりなシス君の声が聞こえる。

「うむ、どうやら…な。」

わたしもおっかなびっくりだが。

「ワシらも無事じゃ、キヒヒッ、儲け儲け。」

「お爺さま…しんどいです…。」

兼定の方はどうでもいいが雪華の方が可哀想だ。


そんなことより問題はーーー。



枯れ切った草木、落ちた鳥と、小動物と虫の死骸。

森の中、生きた木々と死が充満した世界の境界。

その窪んだ地面の中心で、眠る少女。


枯れた草木に足を入れ、魔女は少女を抱えて起こす。

「おはよう、自分の名前はわかるかのう?」

すぅっと。

薄く血の痕が残る目を開き、少女が小さく声を出す。

「ラケ、ニカーーラケニカ・ヴェルティエール。」


そう言葉を発した少女は、目を閉じ寝息を立て始めた。

これまで、Cigarette -連続圧縮殺人事件-をご愛読いただきありがとう御座います。

冬草です。

どうでしょうか、お楽しみ頂けたでしょうか?


此処までで連続圧縮殺人事件はお終いとなります。

この後は用語集や舞台裏の会話を書かせていただきます。


おおよそ半年で約20万文字の小説となりました。

此処まで頑張れましたのも単に皆様のおかげで御座います。


さて、今後なのですが

現在、Cigarette -Water Hazard-(仮)を鋭意製作中で御座います。


はい、続編です。

猟奇殺人事件が終わっても、シガレットの人生は終わりません。

もし良ければ今後もシガレットのお話にお付き合い下さい。



今後も皆様が楽しめるような小説を書けていければいいなぁ。

それでは此処で一旦失礼します。


2021/9/11 冬草

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