魔女の願望編13
ーーェゲピュッ。
「ーーグブッ。」
2つ分の肉が合わさり潰れる音が響く。
エンリケは魔女の胸から下と共に一瞬で潰され、合い挽き肉になっていた。
胸から下が潰れた魔女の瞳から光が消える。
ーー2、3分程経っただろうか。
パチリと魔女の目が開く。
「ああ、嫌でずね、縛られだ体の事もあるどはいえ。」
魔女のグチャグチャになってしまった胸の下から肉が蠢き盛り上がり、質量すら無視して肉が湧き出す。
「はぁ、最悪の気分です。自分の体を自分で潰すことになるだなんて。
全身の損壊は今日2回目ですし。」
肺が戻り淀みなく言葉を魔女が吐き出す。
「あ、しまった…どうしてエクシオの事を知っていたのか聞き出し損ねましたね。」
広がって来ていた血溜まりで赤く染まった首を振り、魔女は何か考えている風だった。
数分経ち、両腕と上半身が戻ったのを機に腕を使い体勢を仰向けに変えるとそのまま、魔女は目を瞑った。
肉体の再生に集中する為、というわけでは無い。
思考に集中する為だ。
魔女は下水道の時と同じ様に自身の体が修復されている間に自問自答する。
自身の異能の力を知られているかの様な動き。
ーーこれに関しては、今までの自身が殺してきた相手に起因しているかもしれない。
圧縮、潰して殺す、この前提を知っているならまぁ分かる。
だが、基本は目線である事を知っていた理由…最初の狙撃の時に見えた物を壊したからバレたのか?
察しが良すぎる気がしなくもないが、可能性はある…。
魔女の弱点を知っているかの様な動き。
ーーこれはどうなんだろう、先ほどと同じく最初の狙撃の時に胸を凄まじい威力の銃弾で打ち抜かれて生きていて、頭を狙っても弾かれたからか?
それでも疑問は残る。
殺傷能力よりも吹き飛ばす事を選択してきたガスマスクの下に眼鏡をかけていた謎の女。
おそらく今死んだ男の同僚か上司だったのだろうけど。
骨は数本折れた、でもそんなものはすぐ完治する。
私が異能を使って先周りした時も驚いていたが、先回りされたことに対する驚きであって、すぐ動いていたことに対する驚きではなかった。
ーーそう、間違った動きはしていない。
足手まといが居なければ、あの女は逃げ出せただろうしーーーー。
…ああ、成る程。
だが、疑問は残る。
オルガナのーー『ワルプルギス』の連中か。
私のことを知って乗り出してきたのだとすると何故人間なんて使っているのか。
ーー連中の誰かの独断?
「それは、無いか。」
あの厄災を生き延びて、人間に裏切られても、それでも尚人間と手を結ぼうとする頭がお花畑の馬鹿共。
そんな奴らが人間を先兵に仕向けてくることはあり得ない。
ーーそれなら何故エクシオの名前を知っているのか。
私の本名を知らないにも関わらず、エクシオのことだけを的確について来た。
どう考えても、先程の女も今の男も41年前にはそもそも生まれているとすら思えない。
「ーー裏に誰か、私の事を知ってるやつが絡んでる…?」
ーー導き出された答えは果たして真実なのか。
魔女の口から吐き出された疑問符がついた言葉。
だが、それでも何処か確信を持って魔女はその言葉を呟いていた。
「…面倒臭いことになりました。」
恐らく、後少なくとも2人。
最初に追いかけたロスとかいう男と私の事を知っている誰か。
殺した2人とロスは間違いなく繋がっているだろう。
男から情報を引き出して芋蔓式に殺していくか。
ーーけれど、そもそもこの街にこだわる必要はない。
今すぐ別の街に乗り換える選択肢もある。
シスターフランシスも殺してしまったし、無理に修道院にこだわる必要も無い。
ここに私の体組織があるのだから、私である材料を置いておけば私は死んだことにできるだろう。
ーーそもそも、私はまだ殺したい。
人を、人間を、出来るだけ多く。
だからこんなところで手を拱いている暇はない。
..,決めた、今追ってる男から話を聞き出して、エクシオの事を知っている存在を聞き出せたらそいつを殺して撤退しよう。
知っていなくても殺して撤退しよう。
足の指先まで再生した。
足首をグリグリ、肩をグルグル、首も回して。
何も問題はーーおっと、そうだった。
服は再生しない。
こんな事もあろうかと、さっき爆破された後に適当に入った教会から下着やら、修道服を持ってきて良かった。
扉に跡がついていた時点で罠だと分かっていたからあの玩具と一緒に外に置いてあるので、一度外に出ないといけないのが億劫だけど。
まぁそれでも、名前も知らないコレの最後の行動で誰かしらが、恐らく最初に襲撃した際にいた男のどちらかが隠れている場所の方角は察することができた。
無意識だったのだろうが、手を伸ばした方向に飛び散った血。
恐らくそっちの方面なのだろう。
これであの男は袋の鼠、例の玩具も持ってきてーー。
ふふっ、楽しみ、楽しみだ。
あの玩具を見た時に、隠れている奴はどんな顔をするのだろうかーー。





