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魔女の願望編12

ーー時は戻り、扉が破壊された2分後ーー



「また、コレですか…学習しないんですね、人間は。」

聞き覚えの無い女の声が響く、人間は、という単語から鑑みるにやはり侵入して来たのは魔女か。


結局、スモークが消えれば目線が通る。

だからこそ、そういう言葉が出て来るのだろう。

アレを一瞬で殺せそうな武器は既に試した。

現状HEIAP以上の火力を出せる武器、もしくは無力化出来る化学兵器の類は持ってこれていない。

よほど綺麗に決まれば今の武装で無効化程度は出来るかもしれないがーー今の俺が出来るのは死ぬ前提での時間稼ぎだろう。

上手くいけば、激昂させられれば、チャンスはあるかもしれないがーー...。


「はは、まぁそう言わずに付き合って下さいよクラウディアさん。」

旧ウェストサイドに数百仕掛けておいた盗聴器の中から拾っておいた、シスターと魔女の会話から拾った音声で心を掻き乱すことから始めてみる事にしよう。

名前を知らないはずの人間に知られているというのはーーー

「何処で聞いたか知らないですけど、名バレしてるんですね。

 ーーー話すなら顔を見せて下さいよ。」

ーー誰が出してたまるものか。

思ったより効いていない、…偽名か?

「…私は臆病者なので遠慮しておきます。

 ーーーところであなたの所に向かった女性の最後は如何でしたか?」

「ーーあぁ、爆発したアレですか?」

アレ、と来たか。

「自分1人なら私から逃げられたかもしれないのに、哀れにも自分以外を助けをしようとして無駄死にした、ア、レ、の、ことですかぁ?

 本当に滑稽な無駄死にでしたよねぇ。」

ーーただの挑発。

俺が激昂して突っ込んでくることだけを狙っているのだろう。


「ええ、ソレのことです。」

出来るだけ感情を殺して声を出す。

「貴女の目にはどう映りましたか?どう感じましたか?」

軽い舌打ちが聞こえる、此方が激昂することを予測していたという予想は合っていたのだろう。

「ーーからかい甲斐がないですね。

 まぁ、折角なんで質問には答えてあげますよ。

 私の答えは『何も感じない』です。」

「何も?」

そんなことあり得るのか?

この相手がどんな考えで殺しているとしても、そこには一欠片は感情が載っている筈だ。

憎んでいるから殺すのなら、殺した後は気が楽になった。

快楽目的で殺すのなら、殺した後は気持ちが良い。

仕事で殺すのなら、殺した後は達成感。

例えサイコパスであっても、何かしらの感情はある。

だが、今見えている色は確かに余裕、慢心の色ーー金色だ。


「…戦い方を見てれば分かりますけど、私が何かを知ってますよね?」

魔女が語り出す。

その返答をする必要はない。

「だんまりですか?

 …まぁ、良いです。声を発されるだけでもイラつくと言えばイラつくので。

 ...人間は種族の違いすぎるもの、例えば蚊とか蝿とかを殺す時に何か感慨がありますか?

 食べるために殺した牛や豚を買う時に何か感じますか?

 …そう言う事です。」

ーーつまり、必要であろうが無かろうが何も考えずに殺している。

感情はない、と言いたいのか。

「成る程。」

そう答えながら思う。

ーーこれも挑発なのだろう、色は金色から変わっていない。


「お話とやらはもう良いですか?」

良くはない。

彼女がいつ来るのか分からないのだから、出来るだけ伸ばさなければ。

「もう良いですよね、貴方が無様に潰れる時はせめて笑ってあげます。」

ーーカードを切るのはココだろう。

「ーー良いでしょう、私も貴方をエクシオさんと同じ様に殺して差し上げましょう。」


ーー空気が凍った。


「ーーーーは?」


煙の向こうから、顔すら見えないにも関わらず感じ取れる明確な殺意が俺の身を焼く。

先ほどまでの金色だった感情の色が黒と赤が混じり大火が燃え盛っているかのような色に変わる。

一対一になるのは誰かと聞かれ、手を挙げた私だけが彼女から聞いた、もしも魔女本人なのであれば効くであろう言葉。

意味は知らない、詳しく聞いてもはぐらかされたからだ。

立てた予想としては「エクシオ」という存在は「クラウディア」と呼ばれる存在にとって非常に大切な存在だった、ということ。


「ーーーッ」

だが、ここまで強烈なものだとは思わなかった。

正直、軽々に虎の尾を踏んでしまったのではないだろうかと思う。

「は?ーー貴方、何を、知っているんですか?」

言葉の一言一言が重圧の様にのしかかる。

はは、何も知りませんよ。と軽口を叩いてしまいたくなる。

それほどの重圧だ。

だが、やりやすくなった。

先ほどまでの余裕が消えている。


「さぁ、私は何を知っているんでしょうね?」

「ーー殺す。」

煙の中、影が突っ込んで行く、用意しておいたデコイに向かって。

ーーー嵌った、チャンスだ。


閃光、炸裂音。

「ーーーーーーっガぁっ!?」

晴れていくスモークの中、血染めの服の背中が見える。

前に屈むその無防備な背中を蹴り飛ばすーー!

「グッ!」

うつ伏せに転けた。

背中側から馬乗りになる。

「ーーーぁっ!?降りろ!」

先ほどの倉庫から拝借した縄で手首と足首を縛る。

「嫌です。」

どうせ、まだ聴こえていないだろう。

続いて両親指を結束バンドで拘束する。

「クソッ!ーークソッ!」

そう言いながら体を捩る。

どうやら筋力はそれほど無いらしい。

抵抗自体は非常に弱々しい。

腰のナイフホルダーから、ナイフを取り出しいつでも振り下ろせるように構える。

「目線さえ通らなければ、その妙な力も発揮できないのでしょう?」

急に抵抗する力が抜ける。

ーー諦めた?

「そこまでバレているのなら諦めます。

 煮るなり焼くなり好きにして下さい。」

否、色は変わっていない。

それどころかーー濃くなっている。

「喋らないで下さい、妙な真似をしたらーー。」

「へぇ、ここまでしておいて安心できないんですか?

 意外とチキンなんですね。」

これも挑発だ、コイツも何かを待っている?

取り敢えず、背中にでもナイフを思い切り突き立ててーー


ーー?

顔に何かがかかる。

上げていた右手が熱っーーー。


カランッ。


「ぉ?ーーーッッ!」

無様に叫び出すことだけはなんとか止められた。

激痛で眉間に皺がよるのが分かる。


ーー無い。

振り上げていた右手首から先が。

だが、何故。

直接見られることは避けていた筈。

「どうしました?右手の先でもなくなりました?」

周囲を見て、ハッとなる。

ーーいや、まさか...だが、常識が通用する相手では無いのなら。

「ーーこれは、しくじりましたね。」

魔女が顔を向けている方向を注視して、見えたのは窓ガラス。

俺からは俺の胸から上が見える、おそらく下にいる魔女には振り上げた際に腕だけが見えたのだろう。

コイツは鏡像で見えているものでも圧縮できるのかーー。


「あぁ、もう気づいたんですか。」

だが、それなら手を振り上げなければ良いだけの話だ。

太腿のナイフホルダーから背中に一本突き立てるーー!


「ーーこれ、あんまりやりたく無いんですけど。」


肉に刃の先がめり込む感覚と共に目の前の黒色が尚濃くなる。

ーー頭から、肩にかけて違和感。

何かが上にーーシスさーーーー。


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