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魔女の願望編 4


上がって直ぐ目に入った濃い霧の中、ガスマスクを装着しマンホールの蓋を閉める前に、確かにそれは聞こえた。

くぐもってはいたし反響しているせいで解り辛かったが、それは確かに女の声だった。

登っている最中に聞こえたのは炸裂音、続いて大量の釘打ち機が一斉に作動したかのような、ビスビスビスと言う何かがコンクリートの壁に刺さる音。

どんな罠を仕掛けたのかは知らないがその後から破壊音と足音は止まっていた。

恐らくはチェルシーお手製の罠がうまく機能したのだろう。

魔女のいう事を信じるのなら足止めにはなった、と言う事らしい。

俺は言葉の通りに臭いものに蓋をし、上から近くにあった収集用の巨大なゴミ箱を全身を使い押して乗せる。

これで圧縮の魔法を使っても出てくるのに多少の時間は稼げるだろう。

次の目的地は、俺以外の記憶の中で問題となっていた沈下した化学工場だ。


廃棄区画の地図とライターを使い今いる場所を確認する。

下水道の出口が恐らくこの丸の付いている場所なのだろう、そして恐らくこの花マルが書いてある地図の中心がゴール、途中に引かれている線は最短ルート。

コンパスと地図の位置を合わせる、北側、凡そ800m。

走ればそれほど時間がかかる物ではない、恐らくこの場までは逃げおおせるだろう。

問題があるとすればーー。

メギリっと云う鉄の塊が強引にひしゃげる異音が鳴り響く。

背後を確認する暇もなく、俺は兎にも角にも駆け出すことにした。

ゴギンっと云う異音、そしてとても小さいが舌打ちらしき音が既に50mは後ろになったマンホールの方から聞こえ、その直後にメギメギメギと巨大なゴミ箱が圧壊する音が聞こえてくる。


角を曲がる途中で目に入ったのは完全にひしゃげ、ぺちゃんこになったゴミ箱。

そして、ちらりと見えたのは修道女がつけるケープと...恐らく顔を隠すためのホッケーマスク。

あの魔女の見立ては、間違いなかったのだ、相手は少なくとも魔女、そしてあの修道院の、女だったのだ。

昨日の雨の所為で、できていた水溜りを、全力で、踏んで、しまいズボンがびしょ濡、れになった。

クソッタ、レめ。

思考をしながら走ろうと、する、が、正直キツ、い。

とりあえずは逃げることに集中する。

体は鍛えられても肺は鍛えられない、チェルシーの言葉が耳に刺さる気分だ。

息が上がるーー。

無心だ、無心で走れ。


ーーぼんやりと先日の記憶が頭の中に浮かぶ。

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