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1-7-6

 ティーガーⅡに乗り込んで、パンターを追う。


 パンターの位置は氷室中佐が逐次送ってくれる為、周辺を警戒する必要はないのである。


 まったく、本当に、最初からそうして欲しかった。


「そこを曲がったらいるぞ」


「ほ、本当か?」


 ティーガーⅡはさも当然のように言うが、そんな近くにいると言うのに気配が全くしないのに驚く。


「ああ。私達の駆動音は小さいし、私が出す駆動音で打ち消されるのだろう」


「そう言うもんか」


「そうだ」


 そして角を曲がれば、先にパンターの姿が見えた。しかし尻が僅かに見えただけで、すぐに姿を消してしまった。


 その時、そのパンターの声が車内に響いた。


「ちょっと、ねえ、ズルしてない?」


 パンターは地団駄を踏む子供みたいに言った。


 ここで喋って向こうに声が届くかティーガーⅡに聞くと、そうなると答えたから、パンターと不思議な距離感の会話をすることとした。


 その内容としては、彼女の言葉の矛盾を突くことにしよう。


「みんなで掛かってこいと言ったのはお前だろ?」


「うう…… で、でも、これは、さあ……」


 一瞬にして完全に論破したようだ。パンターはぐうの音も出ない様子。


「何だ?」


「い、いや、まさかそう言う感じで来るとは思わなくって」


「はあ…… お前はドイツの戦車ではないのか?」


 ティーガーⅡは教え諭すように、子供を叱る教師のように言った。


 しかしパンターはその言葉の意図するところが分からないようであった。


「ええと、どう言うこと?」


「大戦の初期、ドイツの戦車の質は連合国のゴミクズ未満だった。だが、我らが総統はフランスをあっという間に降伏させることが出来た。それは何故だ?」


「電撃戦、とか?」


 パンターがおどおどと答えるのに、ティーガーⅡは盛大なため息で答えた。そして教授を続ける。


「それも正解の一つではあるが、もっとその前提条件を考えろ」


「前提? ううん…… あ、無線?」


「そうだ。無線だ」


「ああ…… 言いたいことは分かったよ」


 なるほど。この謎々は俺にも分かる。


 第二次世界大戦初期のドイツ軍の進撃を支えたのは、全ての戦車に無線機を搭載していたことだ。そうして国防軍は非常に高度な連携が取れた。


 つまり、肝要なのは情報を先んじて得ると言うこと。


 俺達が今アインザッツグルッペンを使って情報を得ているのはズルでも何でもなく、正当な戦術だと言うことだ。


「でも、それでも私は負けないから」


「では精々頑張ってみせろ」


「う、うん」


 パンターの方が姉らしいのだが、ティーガーⅡの方が完全に上に立っていた。


 その後もパンターを追い続け、徐々にその進路を氷室中佐の指定した地点に絞り込んでいく。


「なあ、どうして奴に追い付けないんだ?」


 さっきからパンターを見る度に逃げられ、攻撃の機会は一度もなかった。まるでパンターにも俺達の位置が分かっているかのように。


「さあ。奴には私達の居場所が分かるのかもな」


 ティーガーⅡも同意見。


「それが出来るとなると、どう言う理由が考えられる?」


「クラッススは、私が無線封鎖をしても、私の位置が特定出来た」


「確かに。それが関係しているか……」


 まあこの話は後でじっくりするとしよう。ここで尋ねたのは軽薄であった。


「いい調子だ。そのまま頼む」


 氷室中佐からの通信。俺には分からんがティーガーⅡは上手いことやっているらしい。


「当たり前だ。私を誰だと思っている」


「ああ、そうだな。罠を仕掛けたのは2つ先の道路だ。あいつが罠にはまるのが見物出来るぞ」


「是非見たいものだ」


 先回りして道を塞ぎ、パンターを無理矢理曲がらせる。そしてそれをそのまま追った。


「ん、何をしてるんだ?」


 そこでパンターは停止していた。当然、装甲の薄い背面ががら空きである。


「氷室中佐、これが、罠か?」


 アイギスの動きを止める装置とかがあるのかと推測した。


「いや、違う。勝手に止まった」


「では罠を見抜いた……」


 その時、パンターのハッチから少女が出てきた。少女と呼ぶべきか微妙なところのパンターである。


 少女は拳銃を持っていた。そしてそれを眼下に向け、地面を数発撃った。


 するとその命中した場所が次々と爆発したのである。そしてそこを中心に地面が陥没した。


「地雷でも仕込んだか」


 要はパンターを落とし穴にはめて捕獲しようとした訳だ。


 だがそれはいとも簡単に見抜かれてしまった。


「どの道お前の負けだぞ」


 ティーガーⅡは言った。


 確かにそうだ。ティーガーⅡがやろうと思えばパンターを一撃で吹き飛ばせる。


「そうかな?」


「ほう。ここからどうすると?」


「だってさ、そもそもみんなの目的って、私を味方にすることでしょ? それで私を殺しちゃったら意味なくない?」


 それは正直微妙だ。氷室中佐はパンターが降らないと見るや破壊を指示するだろうから。


 と言う訳で聞いてみる。


「ああ、氷室中佐、どうする?」


 そこで返ってきたのは意外な答えであった。


「奴の言う通りだ。まだ勝負は終わっていない」


「あんたがそんなことを言い出すとはな」


 試合継続らしい。


 しかしこの状況、どちらの側にも打てる手はないのでは?


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