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1-7-4

「やっほー。どうも、初めまして」


挿絵(By みてみん)

(↑極言まで簡略化された戦車の図)


 そこにはティーガーⅡとさして変わらぬ偉容を持った戦車と、そこに座る少女(と言うのに成長し過ぎかもしれん)があった。


 少女は、基本的にはティーガーⅡと似た黒い軍服を纏っているが、下はそれと違いズボンで、腹を出している。


 加えて、その髪はティーガーⅡよりは短く、腰にぎりぎり等達するくらいで、また、白い。おまけに、猫耳と言うか豹耳と言うかを着けている。飾りか?


 目は鮮やかな血の色をしている。


 口元は微笑みを絶やさない。


 そして、何より注目すべきは、その欠損した左の脚である。膝より下がなく、その代わりに筒状の義足のようなものがついている。


 いつか聞いた、ミュトスは体のどこかが欠けていると言うのは本当らしい。


 義足の根っこは、人間の義足とは違い、脚の断面に突き刺さっているようだ。そしてその左右を歯車が支えている。動くのだろうか。


 おっと、観察に夢中になってしまった。


「初めましてだな。俺は東條賴と言う」


「ああ、そう言えば言ってなかったね。私はⅤ號戦車、パンター。よろしくね」


 その後氷室中佐と吉川大尉も名乗った。


「本当に、俺達とやり合う気か?」


 氷室中佐は淡々と尋ねた。


「うん。ああ、でも、騙し討ちとかはしないよ。決闘はお互い合図してからね」


 パンターはあわあわと説明を付け足した。何と言うか、何がしたいのか分からない奴だ。


「分かった。が、何故、それを求める?」


「何故? うーん、まあ、強い奴と戦いたい、からかな。せっかくクラッススを裏切ってみたんだけど、みんなあんま強くなくて。で、そこで、何か強そうなみんなが通りかかったって訳だよ」


「つまり、お前はアイギスの仲間じゃねえと?」


「うん。そうなるね」


 手を取り合える可能性が見えたことは喜ぶべきではあるが、俺は正直こんな面倒そうな奴とは一緒にいたくない。


 いや、アイギスが相手として相応しくないのなら、それと戦う人類にも味方はしてくれないか。いや、そもそも人類の方が弱いか。


 どう出るか予想出来ん。


「じゃあ、もっと強い敵を紹介してやろう」


「強い、敵?」


 パンターは興味深そうに氷室中佐の言葉に耳を傾ける。


「ああ。人類の水際防衛線を一時間で崩壊させやがった奴だ」


「へえ。面白いねえ」


「だろ?」


 まさか、氷室中佐はパンターを味方に引き入れようとしているのだろうか。


「そいつの居場所は?」


「さあ。俺達も探しているところだ」


「それで、私に協力して欲しいって訳?」


「そう言うことだ」


 素直に認めた。ティーガーⅡに対してとはまるで違う対応なんだが。


 パンターは猫耳を弄って考えを巡らせる。そして何かを思い付いたらしく、ぱんと手を叩いた。


「そうだ、勝負するんだけど、みんなが私に勝ったら、協力してあげるってのどう?」


「ほう。面白そうじゃねえか」


 氷室中佐の目が獣のような獰猛さを帯びる。まあそれは放っておくとして。


「ところで、ティーガーⅡは何か喋らないのか?」


 せっかくの姉妹らしいし、何か話すことはないのかと。


「私か? 別に、思い出話をする状況でもないだろう」


「まあ、そうだが……」


「ティーガーⅡ、久しぶりだね」


 と、パンターの方から話を振ってきた。しかし、久しぶりとは? 二人は知り合いだったりするのか?


「久しぶり? 私はお前など知らないが」


「千年前くらいに、ティーガーⅡとは一緒に戦ったことがあるよ」


「それは、私ではないだろう。まあ、私も同型が何百かは生産されたからな」


 千年とは大雑把過ぎるが、つまりは第二次世界大戦の話だろう。同じ国の戦車なのだから、この個体同士の面識があるかはともかく、この二種が同じ戦場に出ることは、何ら不思議なことではない。


「へえ。妹より生産数が少ないんだ」


 妹? Ⅴの方がⅥの先に造られたのではないのか?


「私は、まあ、高級品だからな。量産型とは格が違う」


「なっ、ま、まあ、そうかもね」


「故に、私の方が強い」


 ティーガーⅡは誇らしげに言った。


 パンターは予想外の反論に狼狽したようであったが、すぐに立ち直って微笑を浮かべ直す。


「高級品って言うけど、私の方が最新型だから、さ」


 私の方が強いとでも言いたいんだろう。


「ああ、どうしてⅤ號戰車の方が最新型なんだ? 普通、逆だろ?」


 そこまで言われると言い間違いではない訳で、ではそうなっている理由が知りたくなった。


 二人には悪いが、話に割り込ませてもらう。


 聞くとパンターは嬉しそうに答えた。


「Ⅴ號戰車はね、連合国に最新型の開発がバレないように、あえて、既に開発が進んでいたⅥ號戰車の前の番号を付けられたんだよ」


「そうなのか?」


 ティーガーⅡに問う。ティーガーⅡは特に反論もせずにその通りと答えた。そして、その上で言葉を重ねる。


「しかし、それはⅥ號戰車、Ⅰ型の話であって、Ⅱ型はお前の後に開発されたものだ」


「なっ、え、ホント?」


「ああ。間違いなく、私が最新の戦車だ」


「嘘、でしょ……」


 パンターは驚きに目を白黒させて、その後は泣きそうな顔をして言葉を失っていた。


 となると、ティーガーⅡなどへの余裕な態度も、或いはその矜持が原動力であったのかもしれない。


 しかし、それが失われたとなると、こうして談笑する理由もなくなったのでは?

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