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1-6-5

 とは言え、まずは磯埜二等兵らを送るのが先と、氷室中佐も判断したらしい。


 暫くすると、磯埜二等兵ら全員を乗せられるだけの輸送機が本当に飛んできた。


「達者でな」


「お前もだ、磯埜」


 軽く挨拶を済ませたら、彼らは本州に向かって飛び立った。


 因みに、氷室中佐の話では、今の前線は中国地方にあるそうである。まあ何とか持ちこたえていると言ったところか。


 さて、ぽつりぽつりと僅かな低い建物が並んだとある廃村に、アインザッツグルッペンは陣を構えた、らしい。と言うのも、全体を見渡せるここから見ても、何も確認出来ないのである。


「大丈夫なのか?」


 思わず心配になって聞いてみる。


「大丈夫に決まってんだろうが。俺達がしくじるなんて、あり得ねえからな」


「まあ、そう言うのなら」


「お、来たぞ」


 大道芸人でも来たかのような軽いノリで告げるのは、十数体のアイギスの一団である。戦車型、歩兵型の混じった、典型的な小部隊だ。


 氷室中佐の話では、この一団を罠にかけて殲滅するらしい。


「これがどうにかなるのか? 私でも少々手間取るくらいの部隊だが」


 ティーガーⅡは俺と同じようなことを言った。


 手間取ると言うのは、苦戦すると言う意味ではなく、恐らくは単に時間が掛かると言う意味だろう。例えアイギスのものでも、戦車砲はそう連射出来るものではない。


「お前は黙って見ていろ」


 氷室中佐は不愉快そうに言った。


「人の忠告を聞かざる者は愚者だぞ」


「お前は人じゃねえだろうが」


「ふむ。確かに。一理ある」


「へえ、そうかい」


 氷室中佐の分かりやす過ぎる皮肉は、ティーガーⅡには全く効いていなかった。意図的に無視したのか、本当に気にしていないだけなのか。後者な気がするが。


 おっと、いけない。一応は共存関係にあるのに、こんな馬鹿な対立で体力を消耗してたまるか。


 と、仲裁をしようと思ったのだが、それよりも前に氷室中佐が口を開いた。


「全軍、攻撃開始」


 古代中世の将軍のように声高にでもなく、ただ事務連絡でもするように、氷室中佐は口にした。このやり方に慣れているのだろう。


 そうなると、少しは安心の材料になる。


「一から三番、撃て」


 と告げると同時に、いくつかの建物から機関銃による集中砲火が始まった。


 アイギスの装甲に当たって弾ける弾丸を見て、相当な密度の攻撃が行われているのは分かる。しかしその大元は分からない。なるほど、偽装は完璧に近いようである。


 それに、何をしようとしているのかは、見当が付いた。


「銃か……」


「無駄弾ではないのか?」


 素朴な疑問を抱くティーガーⅡには、アインザッツグルッペンが弾を無駄遣いしているようにしか見えていないようである。


「まあ、見てれば分かるさ」


「そう言うものか?」


 さて、30秒程度が経っただろうか。変化が訪れた。


 先程までは、アイギスに当たった弾は砂のように崩れていた。しかしそれが軽快な金属音を伴って、ある程度は原型を保ったまま落下し始めたのである。


「なるほど。AM(アーエム)Barriere(バリエル)(對金属障壁)切れを狙うか……」


 ティーガーⅡはようやく氷室中佐の作戦を理解したようだ。


 アイギスは、確かにあらゆる金属を悉く破壊する障壁のようなものを纏っている。だがそれを無限に発生させられる訳ではない。


 どうも、長時間発動していると、回路が赤熱するのか何なのかは知らんが、その障壁が消えるのである。


 よって、長時間、一秒たりとも絶やさずに銃撃を浴びせられれば、アイギスの防御力を無力化することが可能である。


 もっとも、向こうも当然攻撃してくる訳で、そのような機会なぞ滅多に訪れはしないが。


 まあ兎も角、アインザッツグルッペンはその状況を無理矢理作り出し、今目の前のアイギスを裸同然にしたのである。


「狙撃班。撃て」


 機関銃とは違う、高い銃声。それと同時に、アイギスが次々と倒れる。氷室中佐の言った通り、狙撃だろう。


 機能を停止していても、アイギスの装甲はそこそこ厚い。機関銃で貫くのは困難だが、狙撃銃となれば話は別だ。その銃弾の前に、アイギスの装甲など紙のようなもの。


 そうして、一兵の犠牲も出さず、たちまちにアイギスは殲滅されたのである。


「しかし……」


 これは、物資に余裕のあるからこそ出来る作戦だ。


 兵卒に銃すら行き渡らせられない現状では、正直、この戦い方は意味を持たない。


「不満そうだな」


「不満、ではない気がするが……」


 どうせならと、今抱いた感想を氷室中佐にぶつけてみる。


「ははっ。確かにそうだ。こんな芸当が出来るのは俺達だけだ。技術とかの意味ではなく、与えられた装備からしてな」


「だったら……」


「だが、今は俺達以外のことを考えるのに、意味があるのか?」


「確かに、ないな」


 ここにいるのはアインザッツグルッペンだけだ。他の戦場など気にするだけ無駄である。


 今ここで彼らがアイギスと互角に戦えるという事実がある以上、それは最大限に活用すべきだろう。


 しかしここで、逆にこれまで何故に聞かなかったのかと自分でも思うのだが、一つの疑問が浮かんだ。


「お前らはどうしてこんなところに? 目的は?」


 この最高戦力を遊ばせる理由、それが知りたい。

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