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1-6-4

「そいつがお前を騙して、人類の中枢に侵入しようとしてねえと、断言出来るのか?」


 前にも全く同じ会話をした気がする。


 そしてその時と同様、残念ながら、俺にはそれを否定する客観的な証拠はない。


 なれば、そうだ、磯埜二等兵に対してやったことと同じことをもう一度やればいい。


「一度俺達がアイギスと戦おう。そうすれば、証拠になるだろ?」


「馬鹿じゃねえのか。お前は」


「な、何故だ?」


 完全に突っぱねられた。なんてこった。


 しかし、どうしてこんなテキトウそうな奴がやけに頭が回るんだ?


「そいつは別格だ。多少の雑兵を、人間を騙す為に使ったところで、問題はねえだろうな」


「ぬ……」


 道理だ。


 取り敢えずこれ以上何も思い付かないので、ティーガーⅡ本人に目で助けを求めてみる。


 するとティーガーⅡには回答が用意出来ているようであった。


「そう私達を疑うのならば、金輪際関わらねばよい。そうすれば、私が人類の中枢とやらに行く機会もなくなるであろうからな」


「そういうこと?」


 それは、思っていたのと違う。何故に徒に争いの種をばらまくのだ、こいつは。


「そうはいかんな。敵性存在であるのならば、どういう事情であっても排除しないといけねえからな」


「ここで一戦交えることを望むか?」


「そっちがやるってんなら、受けて立つが?」


 氷室中佐は、眉を吊り上げて、不敵な笑みを浮かべながら言った。まったく、どいつもこいつも……


「ライ?」


 ティーガーⅡは突撃銃を持ち上げた。


 ティーガーⅡも発砲の許可を求めてきている。やる気満々である。当然そんな許可など出せんが。


「駄目だ、駄目。馬鹿かお前は」


「なっ、お前に馬鹿と言われたくはない」


「だったら手を引け」


「ぐぬ……」


 と、その時、氷室中佐が何やら盛大な独り言を始めた。どうやらまた通信がかかってきたようである。


 内心、ほっとした。ほんの先延ばしだが、衝突は回避出来たからだ。


「は? はあ…… はあ…… 面倒な…… ああ、分かった分かった。あ? お前は黙ってろ」


 相変わらず態度が悪い。いくら相手が部下とは言え、その調子はどうなんだろうか。と言うか、普段はちゃんと統制が取れてるのだろうか。


 あまりにも普通の緩い会話を聞いて、今にも殺し合いに発展しそうであるのに、そんなことをふと思ってしまうのである。


「チッ。分かったよ。通信終わり」


「何だって?」


「お前、連れがいるな?」


 磯埜二等兵とかのことだろうか?


「ああ。そうだが」


「磯埜とか言う奴か?」


「正にその通り」


「はあ……」


 氷室中佐は非常に残念そうにため息を吐いた。一体何があったのだろうか。


「さっきな、そいつと俺の部下がばったりと遭遇してな、そこでティーガーⅡさんと東條さんの潔白とやらを語ったそうだ」


「おお、流石は磯埜二等兵」


 有能だ。これならば、こいつとて認めざるを得ない筈。多分。


 はあと再びため息を吐いて、氷室中佐は一言。


「この件は、保留にしておいてやる」


「そりゃどうも」


「別に、感謝することなどはないが」


 よし、完全に僥倖に頼った形となったが、何とかなった。これ以上面倒なことが今後起こらないことを祈る。


 しかし、よくよく考えると、いやわざわざ考えずとも、こいつらは帝國の正規部隊だ。磯埜二等兵らの世話を頼めるかもしれない。


 一か八かと聞いてみる。


「なあ、保留ついでなんだが、あいつらを本土に送ってくれないか?」


「ん? いいぞ、それくらい」


「お、おう」


 あんまり早い返事だったものだから、尋ねたこっちが面食ってしまった。アイギスがからまなければ、この男はやはりいい人間なのだろう。


「何だ? 不満か?」


「いや、そんなことはない。素直に感謝したい」


「そうか。まあ、その件については任せろ。鈴木大将閣下に、輸送機を要請しておく」


 アイギスの対空戦闘能力は皆無と言っていい。飛行戦艦のようなとろいデカブツ以外、落とすことは出来ない。故に輸送機は安全である。


 もっとも、今の帝國では満足な数の輸送機すら造れてはいないが。


「それと、お前達は俺達と行動を共にしろ」


「へ? 何で?」


 てっきり互いに不干渉として放置されるとでも思っていたのだが。


「お前達が、と言うよりかはお前がだが……」


 と言って氷室中佐はティーガーⅡを指差した。


「俺達の敵なのか否かを確かめる。それだけのことだ」


「はあ……」


 どうやら拒否権はないらしい。勝手に行動を共にすることにされている。


 まあ、拒絶する理由も特にはないが。


「ティーガーⅡ、どうだ?」


「ライがよいと言うのなら、私は構わない」


 全然よさそうではないが、まあ、よいと言ってくれたのなら、そう受け取っておく。多分、暫くすれば慣れるだろう。多分……


「だそうだ。と言うことで、行動を共にさせてもらう」


「ならば、当面は、食事と安全くらいは保障しよう」


「安全?」


 食事は分かるが、こんな修羅場で安全など保障出来るものだろうか? それも、ただの人間の部隊が。


「疑うか?」


「まあな」


「なら、見せてやろうじゃねえか。俺達の実力って奴を」


「お、おう……」


 氷室中佐は意気揚々として言った。俺とティーガーⅡはそれを胡散臭そうに見ていた。

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