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1-6-1

「あれは……」


「人間の兵器とは思えないな」


「となると、私の同類か」


 まだ数キロメートルの距離があるのだが、確かに異様な姿をした影が、自走しているのが見えた。


 直方体の箱を二つ重ねたような見た目をしており、上の方には戦車砲らしきものがついているが、見たこともないような形をしており、果たしてそれが何なのかは不明である。


 TigerⅡ(ティーガーⅡ)も知らないようだし、磯埜(磯野)二等兵も知らないとなれば、Αιγίς(アイギス)の新兵器か何かかと推測することくらいしか出来ない。


 まあ何かしらの兵器であるのは明らかなので、それと一戦交える可能性も頭をよぎったが、結局何も起こらず、影は遥か遠くへと消えていった。


「大分、疲れが見えてきたな」


「ああ。やっぱり九州横断なんて無謀だったのかもな」


 磯埜二等兵はため息を吐いた。


 当初はアイギスが全く襲って来なかったものの、近頃は動きを再開し、何回かの襲撃に遭っている。


 それらは全てティーガーⅡが撃退しているが、少なからず死者も出てしまっている。疲れが溜まるのも、無理はない。


「お前がそんなんでどうするんだ?」


「ああ、そうだな。俺だけでも元気にしておかないと」


「その意気だ」


 とは言え、精神論でどうにかなる問題でもない。果たして九州を抜け出せるのか、それは未知数である。


「ライ、南に未知の反応を確認した」


 ティーガーⅡは言った。またアイギスに目をつけられたか……


「またアイギスか」


「いや、違う」


「違う? 人間だとでも?」


「恐らくは。少なくともアイギスではない」


 他に宇宙人が飛来したとかなら話は別だが、そんなことは考えにくい以上、アイギスでないのなら人間である。少なくとも通信機を持った人間が近くにいると言うことだ。


「せっかくだし、会いに行ってみるか」


「反応は強い。相当に秩序を持った集団であることが想定される」


「つまり、何だ?」


「正規軍に相当する、或いはそれ以上の装備を持った集団だ。迂闊に近寄らない方がいいだろう」


「なるほど……」


 確かに、いい予感はしない。そんなのがこの九州に残っているのはおかしいのだ。


 考えられるとすれば、帝國軍が何らかの目的の為に送り込んだ特殊部隊、とかだろう。確か帝國軍にはそういう部隊があった筈だ。


 或いは、裏切り者か。


 いずれにせよ、ロクなことにならない気がした。


「ほう。確かに対応に迷うな」


「だろ?」


 取り敢えず、仮の引率者をやっている磯埜二等兵に報告した。


「更に言うと、反応は現下接近中だ」


「何だって?」


 初耳だ。そう言うことは最初に言って欲しいんだが。


「ここにいたら、ぶつかるか?」


「ああ。ぶつかるだろう」


「面倒だな……」


 今から兵を動かしたとしても、反応と接触するまでに移動を完了させるのは不可能であろう。


 回避は不可能。なれば、どう対応すべきかを考えるしかない。


「私達が偵察にでも出ようか?」


 ティーガーⅡは言った。


 確かに、まずは相手がどんなものかを把握するのが肝要である。全てはそこから始まる。そしてそれに適任なのは、最強の戦力であるティーガーⅡであろう。


 異論はない。


「いいのか?」


 磯埜二等兵は申し訳なさそうに尋ねてきた。


「ああ。ライもいいな?」


「ああ。問題ない」


「感謝する。俺は部隊を纏めておくから、宜しく頼んだ」


 磯埜二等兵は、万が一に備え、部隊を移動させる準備と戦闘の用意を始めた。その間に俺達が偵察に出てくると言う寸法である。


 さて、目標からおよそ8キロメートル、いい感じに身を隠せ、視界も広い茂みを見つけた。


「確かに、正規兵のようだな」


「所詮は人間の軍隊だが」


「まあな」


 並走する6台の装甲車が確認出来た。それ以外のものは特に見えない。


 装甲車は妙に綺麗で、この戦場には似つかわしくない。やはり、何か裏があると見るのが自然だろう。


「お前ら、何をしている?」


「っ!?」


 誰もいない筈の背中から、若い男の鋭い声が聞こえた。


 一瞬にして冷や汗が垂れる。この距離になるまで気付かなかったのか?


 横に立っているティーガーⅡを見る。彼女もまた、狼狽を隠せないでいた。


 どうする? 状況は悪い。完全に先手を取られている。


 とは言え、いきなり撃たれなかった辺り、まだ話は通じる相手のようだ。ここは平和的に話し合いで解決しよう。


 ゆっくりと振り返る。


 その際、ティーガーⅡには、前に見せてくれたような人間への擬態をするよう、目で合図を送った。奇跡的に伝わったようであった。


 さて、そこには、冷たい目をした若い男が立っていた。その黒い整った服装軍服らして、帝國の正規の軍人である。


 訝しげな目で俺とティーガーⅡを交互に見るが、その手に握られた拳銃の照準が狂うことはない。


 やがてその視線はティーガーⅡに集中し始めた。自分で質問したくせにその回答など気にせず、少女の体を観察していた。


 そしてそいつは言った。


「お前、人間じゃねえな」


「なっ」


 どうして分かった? ティーガーⅡの擬態は完璧だった筈。呼吸もまばたきも発汗もしていると言うのに、何故だ?


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