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1-5-3

「は?」


「……は?」


 あまり上手く伝わらなかったのか?


「ええ、つまりだ、俺はティーガーⅡの本体をお前らに見せたら、流石のお前らも輪に入れてはくれないだろうと思ったんだ、あの、あれだ、この少女の形ならそう脅威とはならないからな」


 その時当のティーガーⅡは悲しげな顔をした。ああ、クソ、誰も幸せにならない会話だ。


「なるほど。そんな下らんことを気にしていたのか!」


 しかし、俺の沈んだ気持ちとは全く真逆に、磯埜二等兵はわっと大笑いをし始めた。


 何がおかしいのか俺にはさっぱり分からんが。


「ど、どうした?」


「俺はそいつが俺達の敵ではないと判断したから追っ払ったりしなかっただけだ。別にいつでも殺せるからじゃない。変なことを言うな」


「お、おう、そうか……」


 最初に会った時とはまるで違う態度だ。こいつは案外いい奴なんだろうか。


 それに、ティーガーⅡも少し嬉しげな顔をした。その点については磯埜二等兵に感謝したい。


「お前、人間にしては珍しい奴だな」


 誉め言葉とか、なのか? それ。


「俺は良識ある普通の人間だ。もっとも、マトモな人間なんてそうそういないがな」


「まったくだ」


 結局、一番意気投合してるのがティーガーⅡと磯埜二等兵の組み合わせとは、やはりヤバい奴はヤバい奴と引き合うのだろうか。


 いや、物理の法則からすると同じものは反発するんだっけか? まあいいか。


「しかし、私をすぐに殺せるなどと見くびってもらっては困るな」


「殴れば吹き飛ばせそうだがな」


「私の力は見せただろうが」


「ぬ、確かに」


 ティーガーⅡの身体能力の高さは既に磯埜二等兵も見せつけられている。それを思い出して自信を失ったらしい。


「ええと、じゃあ、その本体と言うのを見に行きませんか?」


 眞柄二等兵は言った。


 もっともである。今のところ、少なくとも眞柄二等兵と磯埜二等兵は見たこともないものについての話をしているのだから。


 と言うわけで、まずは少女の方のティーガーⅡに連れられて戦車の方のティーガーⅡのところまで向かった。


 ティーガーⅡは警戒していたのか、本体は木々の中に無理やりねじ込まれ、遠目にはただの帝國の兵器の残骸としか映らないようになっていた。


 ティーガーⅡはそれを外に出した、或いは外に出た。


「これが私だ」


「ほう」


「大きい、ですね」


 眞柄二等兵も磯埜二等兵も、見慣れない、と言うか初めて見るであろう戦車の黎明期の重戦車の荘厳な姿を興味深く観察していた。


 これで中身もこの姿らしい大人げのある性格だったらよかったんだが。


 また、さっき聞きそびれたが、遠藤二等兵の方は既にティーガーⅡを見知っているようであった。


「これで、装甲はアイギスの弾丸を通さず、火力はアイギスの戦車を一撃で葬ると、そう言うことですね?」


 眞柄二等兵はティーガーⅡに尋ねた。


「その通りだ。私は如何なるアイギスよりも強い」


 ティーガーⅡは尊大に答えた。前に負けかけたことがあるのを俺は知っているのだが。


「確かに、これならアイギスの備えを破って本陣に突入することも可能かも知れませんね……」


「俺も、かけてみる価値くらいはあると思う」


「わ、私もです!」


 皆、ティーガーⅡを頼りにしている。ティーガーⅡはそれに少々戸惑っているようだが、彼らの期待を裏切るようなことはないだろう。


 これで作戦の大枠は決定した。


 さて、俺達はもといた場所に戻って、再び円を描いて座った。


「作戦を練りましょう。確実に敵の大将を狙う作戦を」


「そうだな」


 眞柄二等兵の目にははっきりと熱がこもっていた。勝利が見えている目だ。ここからは俺がわざわざでしゃばる必要もないだろう。


「まず、戦場とする飛行艦の墓場ですが、ここにその詳細を持ってきました」


 眞柄二等兵は大きめの画面の付いた機器を持ってきて、俺達の真ん中に置いた。


 そこには前に見た戦場が三次元の立体映像として表示されていた。また偵察隊を派遣していたらしい。


「クラッススがどこから来るかは分かりませんので、どの方向から来ても対応出来るようにする必要があります。そこで、ここに円形の防衛線を仮に敷くべきだと考えます」


 と言いながら眞柄二等兵は墓場の真ん中で飛行艦が密集して落ちている辺りを指差した。


「どうですか?」


「意義なしだ」


「それでいいだろ」


「いいと思います!」


 どの方角から敵が攻めてくるかすら分からないと言う特殊な状況である。敵を引き込むにはこうするしかないだろう。


「次に奇襲部隊の数ですが……」


「私とライがいれば問題ない。十分だ」


「ティーガーⅡ?」


 それは流石に自信過剰ではなかろうか。


「本当に、大丈夫なのですか?」


 眞柄二等兵も疑いの目を向けている。


「ああ。私達は二人で生き抜いて来たのだぞ? なあ、ライ」


「ま、まあな」


 言われてみれば、これまで二人だけで確かに大量のアイギスを殺してきた。


 とは言え、二人だけと言うのは流石にないだろう。


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