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あらかじめ言っておきますが、挿絵は上手くはないです。本当は上手い人に頼むべきなんでしょうが、コミュ障なので無理でした。

挿絵(By みてみん)


 どうも、みなさん、こんばんは。


 俺の名は東條(らい)。珍しい、というか俺以外にいるのか疑わしい名前だろう? 因みに趣味は戦争の見物と哲学の思索だ。まあ暇だからな。


 それと俺は名前以上に奇妙な見た目をしている。全身に包帯をぐるぐるに巻き、特に顔は目以外の部分が見えない。但し、それだと丸坊主のようでダサいから、頭にどこかで拾った帽子を被っている。


 服も割かし兵士の死体から頂いたものであるから、俺を知らない人間からすると、地獄から帰ってきた軍人にも見えるかもしれない。因みに、軍人に見つかって問題にされるのは嫌なので、肩章は外してある。


 持ち物は、超骨董品の九九式狙擊銃を一丁肩にかけ、腰には型落ちのRP-52(五二年式無反動拳銃)を提げ、背嚢に百発くらいの弾丸、およそ二十日分の糧食、太陽光発電機なんかが入っている。


 まあ生きるのに必要な最小限の品々だ。


 さて、俺は現在、全人類を統べる帝國の大アジアKreis(クライス)(州)、その構成国たる大日本帝國の九州の端っこにいる。


 確かかつて平戸と呼ばれていた場所だ。九州の端っこの島である。


 ここは今やアイギスの支配下となったユーラシア大陸の目と鼻の先、つまり、侵攻を受けるなら真っ先に受ける場所だった。


 当然ながら、帝國軍はここに数十万の兵力を投入し、防衛に努めたようだ。だがまあ、その結果はここの惨状を見れば想像がつくだろう。


 海岸線を埋め尽くした塹壕線には、それを埋め立てるほどの死体がごろごろと転がっている。


 アイギスに決死の突撃を仕掛け、そのまま撃たれて死んだ者。


 機関銃を必死に撃とうとして、引き金に手をかけたまま死んだ者。


 上官だろうか、海岸線を指差しながら死んだ者。


 とまあ鬼哭響き渡る惨状とは正にこのこと、そこらで血が砂に染みついていた。


 俺とて人間への敬意を捨て去った訳ではない。こいつらも弔ってやりたいところではあるが、俺一人では流石に手に負えん。ここは軽く祈りを捧げるくらいで妥協しておく。


 また、海岸には破壊された戦車がわんさかと残っている。いずれもアイギスに特攻じみた攻撃を仕掛け、それも敵わず吹き飛ばされたのだろう。


 だが、少し歩くと、今度は破壊されたアイギスを見つけた。歩兵型がそれなりの数と、四足戦車がちらほらと。


 こう見ると人類にも辛うじて抵抗は可能なのかと思わなくもないが、こんな損耗比では、人類を絶滅させてもアイギスには勝てないだろう。


 更に奥地、山の方に目をやると、重砲の数々が尽く破壊されている。そう言えば、さっき海岸に無数にあったクレーターは、こいつらが作ったのだろうか。もっとも、アイギスの死体(まあ奴等は機械だが)がないのだから、効果もまたなかったようだ。


 見る限り、生存者はいない。こういう場合、人類同士の戦争なら、死体に紛れてそれなりの生存者くらいいるだろう。だが、アイギスは生存者の存在を許さない。全てを殺し尽くす。まあそれも当然と言えば当然だがな。


 暫くして俺は、視界の先に何やら動くものを見つけた。さっきも言ったように人間は残っていない。つまり、アイギスだ。


 俺はとっさに近くの戦車の残骸の陰に隠れた。


 奴は恐らく、虐殺部隊ではなく、申し訳程度の警備兵だろう。戦闘の後にやってくる虐殺部隊よりは数段おとなしい。こちらもおとなしくしていれば、まあバレない。


 とは言え、俺の行動はかなり制限された。下手に動くのも危険だから、暫くはここに隠れているしかなさそうだ。


 俺は砂浜に座り込んだ。久しぶりに休める気がした。但し、いつでも発砲できるよう、銃は常に構えておく。油断は大敵だ。


 だが俺は更に面白いものを発見した。


 上半分がすっかり消滅した戦車だ、履帯とその周りの装甲くらいしか残っていない。当然中も丸見えだ。俺はあのアイギスが離れたことを確認すると、それに近づきよく見て見ることにした。


 これは極めて異常だ。アイギスの武器は確かに強いが、こういう類いの強さではない。彼らの武器は基本的には貫徹力を極めた自動小銃のようなものだ。


 砲兵もいるが、それにやられたとしたらこういう残骸にはならない。となると、途轍もなく巨大な砲弾が直接撃ち込まれたということになる。


 そんなのが本当にいるとなると、人類も終わりだな。俺はそう思うと少し笑った。


 だが、その時だった。俺の背後からさくさくと砂を踏み歩く音が聞こえたのは。俺は内心非常に震え上がった。この距離にアイギスがいたら、もう俺の人生は詰みだ。


 そうして生存本能に突き動かされた俺は瞬時に振り返り、手に持っていた例の九九式狙擊銃をその先に向けた。


「ん? 何だ?」


 ふむ、俺はおかしくなったのかもしれない。そこに見えたのは、明らかにこの場には似合わない少女だったからだ。

挿絵(By みてみん)

因みに、最初の一週間だけは毎日投稿でいきたいと思います。

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