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1-3-7

「何だ? その変な銃は」


 銃を眺めていると、ティーガーⅡがぬるりと近寄って来た。


 彼女の記憶が基本的に20世紀のものだと考えると、そんな大昔に双弾倉小銃なんてない訳で、不思議に思うのも無理はない。


「これは双弾倉小銃というものだ。その名の通り、弾倉が銃の左右についている。左右には違う種類の弾丸が入った弾倉をつけて、真ん中のセレクターでどっちの弾を使うか選ぶんだ」


「違う種類の弾丸?」


「鉛玉と、AÄ彈とかプラズマ彈とか劣化ウラン彈とか、まあそこら辺だ」


「では銃を2丁持っていけば良いのではないか?」


「片方ずつしか撃てないなら、な」


 確かに、単に使う弾倉を切り替えられるだけでは、わざわざこんなものを配備する意味はない。こいつの真価は別にあるのだ。


「と言うと?」


「銃の下に付いているレバーを押すと、双方の弾倉から交互に弾を撃てる。すごいだろ?」


「ほう。我々を殺す為の武器か」


「ご明察だ」


 一瞬でそこに思い至るとは、やはり油断ならない奴だ。


 AÄ彈とて、アイギスに全く効かなくなる時はある。即ちアイギスがAÄ彈の分子結合を破壊する障壁を展開した時だ。


 そうなったら今度は鉛玉が効くようになる訳だが、そこでアイギスがまた鉛玉を弾き始めてはキリがない。


 そこで、両方の種類の弾丸を同時に撃てば必ずアイギスを殺せるということで、この銃が開発されたという訳である。


「持っていくのか?」


「まあ、使えるもんは何でも持ってくさ」


「そうか。それと、食糧を見つけたぞ」


「おお、本当か」


 流石は帝國ホテル。何から何でも揃っている。


 これでまだ暫くは生きていられそうだ。喜ばしい限りである。


「ほら、これだ」


 ティーガーⅡはデカい箱を持ってきた。中身を見るに、軍用の保存食のようだ。


「これなら問題なさそうだ」


「他に何か要るものはあるのか?」


「いや。取り敢えずはこれで問題ない」


 食糧さえあればいいのだ。それに良い銃も手にいれられて、寧ろ望んでいた以上の収穫である。


「なあ、ライ」


 ティーガーⅡは少し弱気に言った。


「何だ?」


「いや、その……」


 珍しくしどろもどろとしている。こいつがそんな風になることとは、何なのか気になる。


「何か言いたいことでも?」


「ちょっとここで休んでいかないか? 人は誰も見当たらないが、折角ホテルなんだし」


 微妙にいかがわしい意味に聞こえるのは止めて欲しいのだが。まさかティーガーⅡにそういう意図はないよな?


「ええと、ああ、まあいいぞ」


「おお。じゃあ早速こんな寂れたところからは出ようじゃないか」


 ティーガーⅡはやけに嬉しそうである。


 まあ確かに、帝國ホテルの客室を勝手に使い放題というのはなかなか楽しそうではあるが。


 ティーガーⅡがてくてく歩くのについていき、地下から上がって大広間を抜け、階段を登れば、左右に同じ扉がひたすら並んでいる廊下があった。


 因みに、食糧が満載の箱は俺がティーガーⅡの荷物持ちであるかの如く持たされている。


「どこにする?」


「こ、こんなにある中から選ぶのか?」


「まあ、そうだな」


 言われてみれば、 ホテルで自分で部屋を選んだことなどこの人生で一度もない。それに、選ぶも何も、全て同じである。


 ティーガーⅡはゆっくりと進んでいき、品定めをしているようだったが、案の定、どこにするか決めかねているようだ。


「どこも同じだぞ。別にどこでもいいじゃないか」


「た、確かに、そうだな」


「ああ」


 しかしティーガーⅡはなおも品定めを止めず暗闇のなかを突き進んでいった。


 そしてついに一つの扉の前で立ち止まった。


「0182号室、ここにする」


 ティーガーⅡは運命の部屋を見つけたかのように自信満々に言った。


「構わんが、どういう理由で選んだんだ?」


「私の制式番号だ」


「なるほど」


 こいつは戦車だ。そしてあらゆる兵器には番号というものが振られているのが常。まあ流石に俺もNS-ドイツの命名規則などは知らないが、まあその類いだろう。


 扉は何の抵抗もなく開いた。


 客室には当然窓があって、月の弱い光ではあるが、懐中電燈なしに行動出来るくらいには明るい。


 調度品は豪華なものばかりだ。中央にならんだベッドも、さぞ寝心地の良いものなのだろう。


「これが人間の寝具か……」


 ティーガーⅡはベッドをまじまじと観察している。そう言えば、ここに来て以来、マトモな場所で寝たことは一回もない。


 たまにはちゃんと寝たいというのは俺にもある。


 さて一通りの観察を終えたティーガーⅡは、ベッドの入ろうとしているようだ。


「流石に靴は脱げよ」


「そういうものなのか?」


 きょとんとした顔をされたが、流石に靴を履いたままベッドに上がるのは宜しくないだろう。


「ああ。衛生上良くないだろ?」


「しかし、私は病気になどかからないが」


 それは盲点だった。こいつに衛生とかそんなものを気にする必要はそもそもないのだ。


「いや、まあ、人間の常識なんだ。分かってくれ」


「お前がそう言うのなら」


 ティーガーⅡは不服そうだったが、素直に靴を脱いで、ベッドの上に仰向けに横たわった。


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