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1-1-8

次回から日月水金投稿になります。

「ええと、何から始めればいいんだ?」


 さっきⅣ號戰車とティーガーⅡが謎の言語で話していた内容を俺は知らない。そもそもⅣ號戰車が何者なのか、その短機関銃を持ってる意味は、その左半身は、何もわからん。


「取り敢えず、こいつは味方だ。警戒せずともいい」


 ティーガーⅡは言った。まあこれは信じるとしよう。


「ああ。だが、ええと……」


 という感じで何から聞こうか考えていたところ、Ⅳ號戰車が先手を打った。


「まずは貴方のお友達、Ⅵ號戰車を助けることから始めるのではなくて?」


「Ⅵ號戰車…… ああ、ティーガーⅡのことか」


 そう言えばそんなことも言っていた。


 しかし、Ⅳ號戰車とⅥ號戰車、何か関係があるのだろうか。いや、ないという方がおかしいか。


「で、どうします?」


「ああ、そうだな。ティーガーⅡを助けてやってくれ」


 まずはそこからだ。


 ティーガーⅡの本体がまだ海中にある。これに比べれば、俺が抱いていた疑問など些細なものだ。それらについてはことが済んだ後に尋ねることとしよう。


「私の本体に、ワイヤーをかけておきましたわ。まずはそれを貴女の本体に引っ掛けて来てくれますか?」


「ああ、私か。了解した」


「俺は、することないのか?」


「貴方は水中を歩けないでしょう?」


 なるほど。Ⅳ號戰車はティーガーⅡに海底を歩かせて両者を繋ぎたいようだ。俺にはどう足掻いても出来ない仕事、気は進まんが、ここは素直にティーガーⅡに任せた方がいいだろう。


 ティーガーⅡはⅣ號戰車(本体)の方に歩き出す。Ⅳ號戰車も歩き出したので、俺も一応ついていく。


 するとⅣ號戰車が言った通り、その後部からはワイヤーが延びていた。かなり長いそれが、グルグルと纏められている。引っ掛かりそうで心配になるが、まあアイギスなら何とかなるだろう。


「では、行ってくる」


 ティーガーⅡは無表情のまま手を振った。そんな人間らしいことをするとは意外だなと思いつつ、俺も反射的に手を振り返してそれに応える。


 そしてティーガーⅡはワイヤーの端を持ったまま、再び海中に消えていった。


 後には俺とⅣ號戰車だけが取り残される形となる。


「では、何か聞きたいことでもありそうでしたが」


 Ⅳ號戰車は再び頬杖しながら言った。


「ああ。幾らかある」


 そうだな、突っ込みどころがありすぎるのだが、まずはさっき話してた謎言語から。


「さっきティーガーⅡと話していたのは何語だ?」


「私達が統一語として作った人工言語です。貴方には理解出来ないでしょうね」


「アイギスのエスペラントみたいな奴か」


「人類の言語では、それが近いですわ」


 まずさっきの言語はアイギス人の言語らしい。俺が理解出来ないのは当たり前だ。


 面白いのは、それが多くの言語が存在する人類に地球共通の言語として提示された人工言語、エスペラントに近いものということだ


 恐らくは惑星単位で統一した言語を普及させることに成功したのだろう。人類には無理だったが。


 まあそれは分かった。次は、俺の生命に直結する短機関銃について聞こう。


「じゃあ次は、その手の短機関銃、何で持ってるんだ?」


「あら、貴方だって背中に小銃を背負っているではありませんか」


「それはそうだが……」


 それはあくまで護身用であって、常に射撃可能な状態に構えておくべきものではない。ましてや他人の前では。


「冗談ですわ。理由と致しましては、そうですね、戦車の運用の常道を進んでいるだけとしか言えませんわね」


「つまり、随伴歩兵の機能をお前がやっていると?」


「おや、よくわかりましたね」


 Ⅳ號戰車は少し驚いた顔を見せた。まあそれは俺がナメられてたということの証左なのだが。


 戦車というのは案外脆い。歩兵に近寄られれば抵抗の仕様がないからだ。その為、遥かなる大昔から戦車には歩兵が常に付いている。戦車の死角を補う為だ。


 そして、2つの体を持つ彼女は、歩兵と戦車の役を同時にこなせるのだろう。


 まあ言われてみればもっともなことである。こいつもちゃんと戦車らしい。


「ここも戦場ということか」


「ええ。寧ろ貴方達こそ、警戒心が足りないのではなくて?」


「一理ある」


 確かに、ついさっきアイギスに襲われたばかりだ。こいつの言ってることの方が正しいかもしれん。


 それこそ、アイギスの歩兵型に襲われていたら、為す術なく殺されていたかもしれない。


「それで、わたくしも聞きたいのですけど、あの子とはどういう関係で?」


「関係?」


 妙な質問をするもんだ。


 関係と言われても、出会ってからまだ30分くらいしか経ってないというのに、何を答えろというのか。いや、まずそのことから言うべきか。


「まあ、あいつとは偶々居合わせただけだ。出会ったのもついさっきで、特に何の関係もない」


「本当ですか? それにしては貴方、やけにあの子のことを気にしてましたが」


「別に、人助けに理由がいるか?」


「あら、あなたって、そんなお優しい方ですの? 僭越ながら、そうは見えませんわね」


 Ⅳ號戰車は不敵な笑みを浮かべながら言った。


 なかなか痛いところをついてくる奴だ。お嬢様みたいな態度をしといて、なかなか発言がえげつない。


 やはりこいつと関わるのは面倒臭そうだ。


 まあここは適当なことを言って流そう。


「俺とて、それなりの良心はあるさ。おかしいか?」


「ふふ、まあ、それならいいですわ。わたくしも大して興味はありません」


「ああ、じゃあ……」


 次は俺の番だと言おうとした時、Ⅳ號戰車は不意に俺を制止した。


「向こうの準備が終わったそうですわ」


「じゃあ、奴を引っ張り出すのか」


「ええ。ただ、それなりに危険ですので、暫くは遠くに離れていて下さいますか?」


「おう。わかった」


 Ⅳ號戰車は本体の方に乗り込み、俺は下がって死体の山の方で待機することにした。

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