対立する僕と私の「しあわせ」
僕とあなたが重なる道がないわけではなかった。
簡単なことで、あなたが伸ばしてくれている手を、僕が掴めばいい、ただそれだけのこと。
そうしてくれるのが簡単だったとして、それから、どうしたらいいのかが僕にはわからないのだ。
それが正しくないことも知っているから、迷わされるのだ。
僕は僕だけのため、僕は僕だけのまま。
あなたはあなただけのため、あなたはあなただけのまま。
正しい幸せの形は間違えなかった。
このまま僕があなたを拒絶することだ。
明確だから、間違えなかった。
間違えるはずがなかった。
それなのに、まだ僕は、自信を持ってその選択を過去形にすることができなかった。
間違えない。間違えるはずがない。
わかっているのに掴み取れないのだ。
ずっしりとする思い、重いよ、身動きが取れなくなる。
この着物のせいなのか。
自由はどこにもなく、動くことができなかった。
重い想いを抱えた思いで、あぁ、僕は……
ゆらりゆらり流れてゆく季節のように、気持ちも軽く持てたらいいのに。
二人が本当に望む幸せを選び取れるだろうに。
心は重なりたいと想っている。
いつしかあなたを想ってしまっている。
体は男のままだというのに、心ばかり女にさせられて、それで僕にどうしろというのだろう。
どうしたらいいのだろう。
どうせ重なりたいと願ったところで、平行線の運命が、重なることは永遠にないのだろう?
それならいっそ突き飛ばしてしまおうと、思っているのに、毎晩、毎晩、訪れてくるあなたを拒むことができない。
それを拒めないのに、永遠を拒めるだろうか。
頼らないためには、どうしたらいい。どうしたらいい?
頼ってはいけないとしたら、どうしたらいいんだ?
距離を取ることは不可能なんだって、数日間努力しているから、もう無理だって諦めたいから。
だったら、どうしろっていうの。
あえて距離を取ってみはしたものの、拒むほどの距離へまでは、無理だって不可能なんだって。
気持ちが気持ちに勝ってしまっているんだもの。
どうしよう。会いたい、会いたいよ。
「私たちがこうしていて、許されることでしょうか。いつか、引き離されてしまって、それから二人とも、独りぼっちで酷いことをされてしまうように思えるのです。あいつが、あいつが私の幸せを許すはずがございませんもの!」
朝になったら帰ってしまう。
それは常であるものの、引き止めて、私は泣いた。
抱き締めてくれる腕があるだけで、今の私は幸せだった。
だけどそれさえすぐに奪われてしまうと思うと、不安だった。怖かった。
いくらあなたが愛を語ってくれたところで、いくら私が愛を信じたところで、二人の力は奴に到底及ばない。
幸せは、奪われてしまうの。
染まりつつある私を追い出すのが僕の幸せ。
だのに、女装している僕よりも、愛されている乙女である私を望んでしまうのは、いけないことなのでしょうか。
私は彼の腕の中で泣いた。
もう彼は帰らなければいけないと知りながら、いつまでも、いつまでも。




