献身の闘争 2話 2人の愛
そんな彼の傷を癒していたのがエヴァだった。
エヴァとアドルフは入隊して初めての戦地で知り合った。その時のアドルフの上官がエヴァだったのだ。
アドルフはそのプライドの高さが故に、自らの考案した作戦を推し、他の者の作戦など聞かぬといった態度だった。
しかしそんなアドルフもエヴァの前では大人しい子兎のようだった。
それはただ彼女が上官だったからではなかった。彼女はすべてにおいてアドルフを圧倒していたのだ。
戦闘スキルや人間の支配力、そして何よりも戦略を練る力に長けていた。彼女の作戦はいつも大成功で、まるでその先を知っているかのように指示を与えていた。それは軍隊でも評判となった。
アドルフには悔しさばかりが募っていった。しかしエヴァに対する嫉妬や憎しみはうまれなかった。
むしろ彼女の人柄の良さもあり引き込まれていったのだった。思えば悔しさもあって惹かれたのかもしれない。
そうしているうちに彼らは恋人同士となった。
胸に勲章をつけ、腕を組んで街を歩く二人は映画さながらだった。二人は互いを深く愛し、支え合っていた。
アドルフが多くの人から殺し屋と囁かれ始めた頃もそうだった。落ち込むアドルフに対して。
「あなたの勲章はくすんで見える。」
そう言った。
当初この言葉の意味が理解できずにいた。しかし二人の間の愛が分からせたのかもしれない。それ以降の彼は活力、いや愛国心に満ちていた。自分の地位のためでなくドイツの国民を、愛するエヴァを守るために己を捧げよう。たとえ殺し屋と蔑まれようと。
そう思った
彼の胸の勲章は輝きを取り戻した。
しかし充実した時間はあっというだった…