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僕の不幸は終わらない……。

「オレは別にいいけど……襲うなよ?」


 ………………。

 ツッコむ元気さえなくなったけど、これだけは確認させてほしい。

 冗談なんだよな? ミドリがそういう趣味を持ってるわけじゃなくて、ただ単に僕をからかっているだけなんだよな?

 疑うつもりはないというより疑いたくもないことなんだけど、もしも、万が一ミドリがそっち側の人間だというのなら、僕はこの公園で野宿も辞さないぞ?

 たとえ冗談なのだとしても、そう何度も同じ嘘をつかれたらミドリがそっち側の人間にしか思えなくなってくる。

 誤解のないように言っておくけど、僕は女の子が好きだからな? 男に恋愛感情なんて抱かないんだからな?

 ツンデレとか振りとかじゃなくて。


「なあ、とにかくミドリんち行こう……?」


「おう、そうだな。けど先にコンビニ寄ってからな。愛美のおつかい終わってねぇし」


「わかった……。もう何でもいいから早く済ませて、休ませてくれ」


 枕が変わったら寝られない性格ってわけじゃあないが、さすがに公園のベンチで熟睡できるスキルは備えていない。そんなことをしたら逆に疲れが溜まってしまう。

 ベッドを貸してほしいとまでは言わない。せめてクッションか絨毯じゅうたんの敷かれた床さえ恵んでくれたらいい。

 とりあえず、ミドリの家でゆっくり休ませてほしい。

 今日は散々な目にいすぎた。僕が言うのもなんだけど、自分で自分がかわいそうに思えて仕方がない……。

 そろそろいたわってあげないと、どこかが壊れてしまいそうで心配になってくる。


「ワタル、コンビニはこっち。ムリそうだったら帰りに迎えに来てやっけど? 大丈夫か?」


「服の汚れが酷いだけで身体はピンピンしてるよ。僕のことはいいから、早く用事を終わらせてくれ」


「はいはい。パっと行ってパっと帰るかっ、とっ」


「あ゛っ!? 痛゛いっ!」


 そこは……、鷹嶺に蹴飛ばされたところ……。なぜにピンポイントで殴れるんだよ……。


「何がピンピンしてる、だ。まぁ、歩けるならさっさとついてこいよ」


「お前が……、殴るからだろ……。せめて手加減くらいはしろよな……」


「はいはい、次からは気をつけるって。それより、とろとろしてっと置いてくかんな」


 はぁ……。

 ほんと変わらないなぁ、こいつは。でも、まじめで思いやりのあるミドリを想像したら、今のままの方が百倍ましだけれども。

 振り返ることなく先を行くミドリの背中を追い続けていると、ふと思い出したこいつの言葉に、僕は少しの違和感を覚えた。


『ワタルが倒れてるっつーから公園に来てみれば』


 僕を見つけたというよりも、はじめから僕が公園に倒れていたのを知っていたみたいな言い方。

 でも、停学中で家に引きこもっていたらしいミドリに、わざわざそんなことを伝える友達なんているのか? そもそも停学前も誰かと特別に仲良くしてる感じじゃなかったしな……。

 本人に訊いてみようかとも思ったけれど、知ったからって何かが変わるわけでもなく、そんなことより背中が痛いし疲れたしで、どうでもいいかなって。

 もしもこの時訊いていれば――、っていうよく物語とかにある未来もないからな。知らないけどさ。

 


 そんなこんなで、ミドリのせいでかなりの時間を無駄にしたけれど、僕達はコンビニで少年漫画誌を購入し、ようやくミドリの家にたどり着くことができた。

 長くて辛い一日だったな……。

 今晩だけは何もかもを忘れて、ゆっくり休ませてもらおう。

 記憶から抜け落ちていたけれど今は夏休みなんだ。全く心が休まらないけれど、むしろ疲れが溜まっていく一方だけれども、夏休みなんだ。

 来年は受験生になるから、休みなんて名ばかりだろうし、つまりは高校生活最後の夏休み。楽しい思い出――は作れそうにないが、傷心の日々を過ごすだけの夏休みなんて嫌だ。

 せめて今日のことを過去に、一歩でも前に進めるようにしよう。心機一転して新学期を迎えられるように。

 そうすれば、もしかしたら薔子さんとも友達の一人として話せる日がくるかもしれない。かも、じゃなくてきっと来るんだ。

 信じていれば、きっと。


「おっそぉーい、どこのコンビニまで買いに行ってたのよー。私が買っといてって言ったんだから、私が帰ってくるまでには買っとくのが常識なんじゃない?」


 ほんっと使えないわねーと毒づきながら、なぜか玄関で仁王立ちしていたその女性ひと――緑枝あおえだ愛美まなみはミドリに右手を差し出した。


「ほらっ、とっとと寄越しなさいよ。こっちは待たされてるんだから。それの続きを読むために、会社の犬として必死こいて働いてるみたいなもんなの。私の大切な時間を奪っていること、ちょっとは自覚してよね」


 …………。

 えっと……、まな姉ってこんな人だったっけ……?

 記憶の中のまな姉は、もっとおしとやかで、憧れの美人なお姉さんって感じだったような……。

 でも、最後に会ったのは覚えていないくらい昔だしな。


「ほらよ、買ってきてやったんだから文句ゆーなよな」


 ミドリは家族だから当然だろうけど普通に接しているし、僕の記憶違いなのかな……?

 それより早く家にいれてほしい。いい加減くたくたなんだよ。

 正直、漫画なんてどうでもいいから。


「はぁっ!? ちょっとっ、まなっ! どうゆうつもりよ、これっ!? 私が頼んだのは集栄社の別マよっ! 誰が講団社の別マを買えと!?」


「はぁ? 知るかよ、コンビニに売ってた別マはそれだけだったんだよ。そもそもおんなじ名前の本があんだったら、最初に伝えとけよな」


「私が別マって言ってんだから、集栄社の方に決まってんでしょっ! 私が努力やら友情やら勝利やらの少年マンガよりも、キラキラな青春モノの少女マンガが好きなことくらい、あんただって知ってるでしょっ!」


「いや……、超王道な少年マンガが原作のアニメのキャラに、引くほど金つかってるやつの好みなんてわかるかよ」


「それでも私の弟かっ!」


「なりたくてなったんじゃねぇよっ!」


 いつまで余所よそのケンカを見せられ続けるのかとため息をついたその時、もう何度目かを数えるのも面倒になるくらい、当たり前になってしまった不幸が僕を襲った。


「うっさいわねぇ、ごちゃごちゃ言ってないで買いなおしてきなさいっ」


「んぎゃっ!」


「あ、ごめん。ワタルのこと忘れてた」


 まな姉のぶん投げた別マが、ミドリが避けたせいで、ミドリの斜め後ろに立っていた僕の顔面を、狙ったかのように鼻の頭を、襲った。

 しかも、本の角がちょうどいい角度で直撃するという、何とも言えないおまけ付き。



 あー、すっかり慣れてしまった鼻血の流れるこの感じ……。

 さらっとしているから身体は健康なんだろうな……。

 鼻血で健康状態なんて知りたくないけどさ……。

 とか考えていたら頭が重くなってきた――、ふらふらする――。

 そういえば少し前に似たようなことがあったような……。



 そして僕は、本日二度目となる気絶で、ようやく休息を得られたのだった。

こんにちは、白木 一です。

わざわざ感想をくださった皆さま、大変長らくお待たせいたしましたこと、深くお詫び申し上げます……。


知っている人は知っているのでしょうけれど、ツイッターではずっとゲームの話ばっかりで、そうです全く創作していなかったのです。

ごくごくたまに絵を描くだけで、字を文を文章を書いていなかったのです……。


ですが、一つ気づいたことがあります。

人間、疲れているときの方が創作意欲が湧くのだと。

メモ帳 (スマホの)を開いたところ、自分でも驚くほどのペースで話が進んでいきまして、ようやく投稿できたという次第です。


感想をくださった皆さま、本当にありがとうございます、そしてお待たせいたしました。

何度か言ったことはありますが、私自身が読みたくてこうして作品を書いているため、途中で書くのをやめるという自体は絶対に起こしません。

それだけはお約束します。


ですので、どうか私の趣味妄想垂れ流し小説に少しでも興味を持っていただいた読者の皆さまへ、このように長い期間お待たせすることが何度もあるとは思いますが(汗)

物語の最後まで、見守り、お付き合いいただければ嬉しいです

<(_ _)>

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