ミドリの一日。〜薄い長話を添えて〜
えー、連続で二話投稿されておりますが、
中途半端な長さだったために一話を分割しております。
あらかじめご了承ねがいます。
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「『謹慎中だから外出は禁止だ!』とか寒いこと言われてさ、そりゃあもう引きこもり生活を送ってたわけよ。
いや、スマホとかパソコンとかがあっから、ネトゲやらSNSやら時間つぶす方法はいくらでもあんだけどな。そーゆうのに飽きてきたら勉強もしたりしてさ、これがいい気分転換になんだよなー。
今のオレならワタルよりもテストの成績良かったりするかもな。割とマジで。
親はオレのことを諦めてるっつーか、他人――いや、空気みたいなもんだと思ってるみたいで、一切オレにかかわろうとはしてこねぇんだよ。だからオレも自由にできるわけだけど。
家のことはどうでもいいか。
なんつーか、そうやってまぁ毎日をオレなりには平和に過ごしてきたわけ。
んで、ほんの数時間前の昼過ぎに、滅多に鳴らないオレのスマホに電話がかかってきたんだけどな、誰からだったと思う?
それがな、聞いて驚くなよ? 校長だぜ? オレらんとこの高校の校長からだったんだよ。
最初は知らねぇおじさんの間違い電話としか感じなかったし、そもそも校長の声なんて覚えてねぇし、あんた誰って言っちまったし。名前も言ってたような気はするけどピンと来なくてよー、
『君の在籍する不二峰高等学校の校長だよ、私は』って言われてようやく思い出せたんだ。
まぁ、あんな事件起こしちまったし、卒業まで停学ってこともないだろうから、校長直々に退学しろとでも言うつもりなんだなって察したね。オレってば謙虚だからさ。
ん? 何だよ、その目。
わざわざ校長がかけてきたんだ、悪い知らせとしか思えねぇだろ?
ところがどっこい、
『校長室まで来なさい』とだけしか言われなくてさ、すぐに切られちまったんだわ。わけわかんなかったけど、来いって言うんなら行ってやるよ、みたいな?
久しぶりに外の空気でも吸うか、みたいな感じで、一年ぶりに登校したんだ。
一年経ったからって、懐かしさとかそーゆうのは感じなかったぜ。授業中らしかったから、みんな頑張れーって応援しといてやったよ。嘘だけど。
校長室に入ったのは初だったけど、想像してたより狭くて何にもなかったな。広さは教室の半分もないんじゃね? でっけー椅子と机が置いてあった以外はほんと何にもなかった。よくあんなところで働けるなって感心したよ。
校長の顔も記憶からすっかり消えてたし、あーこんなヤツだったかな、くらいな感じ。そもそも教師とかに興味もたねぇし。
なんか長々と話された記憶はあんだけどなー、退屈だったことしか頭に残ってねぇんだよなー。
要するにさ、頼みごとされたんだわ。校長さま直々に。
『緑枝くん、君の無茶振りを見込んで頼みがある。私の娘を見守ってやってほしい』だってさ。
この生活にも飽きてきたし、学校に戻れるならいっかなって。つっても、娘の名前なんて忘れたけどな。
適当に相槌打ってごまかしてたからさ、正直な話、ほとんど聞いてなかったし。
宜しく頼むとか何とか言われて、校長室を出たら放課後になってたな。
廊下をぶらぶら歩いてたら、生徒には会わなかったけど、教師には何人か会ったぞ? オレの顔見ても大して驚かなかったから、みんな事情を知ってたんだな。校長が前もって知らせてたのかもな。
校長に会って用事が済んで他にすることなんてなかったし、その後は普通に帰ったよ。
ん? 違う違う。ワタルに会うのはもうちょい後。その時はちゃんと家に帰ったって。オレが今まで嘘ついたことあったか? ――いや、あるけどさ。少しくらい親友のこと信じてやってもいいじゃんか。
だから、その目をやめろ。そんな嘘ついたって話が長くなるだけだろーが。ワタルは黙ってオレの話を聞いとけって。
えーっと、どこからだったっけな……。
あぁ、家に着いてからか。
何もすることなくてぼうっとしてたら、愛美から、
『遅くなりそうだから今月の別マ買っといて』ってメッセが来て――。
忘れたのかよ、オレの姉貴だよ。まな姉まな姉ってワタルがくっつき回ってたオレの姉貴だよ。今はご立派に社会人の皮被ってるみたいだぜ。
で、面倒だけど愛美怒らせる方がダルいし、学校行けるってことは謹慎も解けたってことだろうしで、近くのコンビニへ行くかってなったんだな。
その途中だよ、ワタルが倒れてるっつーから公園に来てみれば、鼻血まみれのお前がベンチで寝てたんだ。
せっかく介抱してやってたのに頭突きかましやがって、ほんと恩知らずだな。
起きれるか? 血も止まったみてーだし、もう大丈夫だろ。
とりあえず、家来いよ。
傷だらけだし、背中とかどろっどろだし、ワタルんちより家の方が近いだろ。風呂くらいなら貸してやんよ。
中学生なって落ちついたのかーって思ってたけど、まだバカやってたのかよ。変わんねぇな、お前も。この場合、高校生から小学生に縮んじまったのか? 見ためは大人、頭脳は子どもっつーて。
冗談だよ、冗談。
歩けるか? よし、じゃっ、行くか。
ん? どーした?」
「話がっ、長いわっ!」
渾身の力を込めたストレートがあっさり避けられる。それが余計に癪に障り、僕はミドリの胸ぐらを掴んだ。
「僕は、お前が、どうしてここにいるのかを訊いたんだ! お前の今日一日なんて全く興味ないし、誰がそんなこと訊いたんだよ!
今の、『停学がなくなって、まな姉に頼まれたお使いの途中で、僕を見つけた』で済む話だっただろうが!
ぐだぐだぐだぐだ聞きたくもない話を続けやがって、もう周り真っ暗じゃん!」
「悪かったな、お詫びにちゃんとキスしてやっから」
「だから僕にっ、男に汚される趣味なんてねぇえっ!!」
「ンガッ!」
悪びれることもなく、しれっと、想像したくもない冗談(ミドリは冗談のつもりで言ってるんだよな? 本気じゃあないよな?)をほざいたミドリのアゴめがけ頭突きをかます。
もともと石頭なのか、それとも今までのあれやこれやで痛覚が麻痺してしまったのか、頭突き程度じゃあ僕は痛みを感じないらしい。
不幸中の幸い……とは言えない……。不幸の割合が大きすぎて、しかもその見返りが痛みに鈍い身体なんて……。そんなの、嬉しくも何ともない。
「あぁ、一日が無駄に長い気がする……。お前の話が長いせいでなおさら疲れた……」
思い返せば波瀾な一日だったなぁ。
薔子さんに振られ、浜永さんとのデートの後は薔子さんちでカレーを食べて。そこでまた鷹嶺にぶっ飛ばされたかと思えば、起きたらミドリの停学が解けていて、二度もミドリにキスされそうになった。
僕、呪われてるのかもな……。
「なあ、ミドリ。今日お前んちに泊まらせてくれないか。色々あってマジで疲れたし、ミドリの家の方が近いだろうしさ」
正直、今日は家に帰りたくない。
帰ったところで、遊園地帰りの妹が自慢話をしてくるだけだろう。うざったいし、今日のことを思い出して泣きそうになるかもしれない。
こんなことになるのなら僕も連れていってほしかったよ。
ミドリと一晩中話し込めば、少しくらいなら気が紛れるんじゃないかな。
断られたらそれはそれでいいやと考えていたのだけれど、ミドリの答えは予想の斜め上というか下ネタというか、とにかく疲れるものだった。
「オレは別にいいけど……襲うなよ?」
しおらしげな声音と上目遣い――まさに気持ち悪さのミックスで、こんな身体じゃなかったら本当に襲っていたかもしれなかった。
もちろん、暴力的な意味で。
かなり時間が空きましたね……。
とりあえず、後書きらしきものは次話にて……。




