クロストーク! 校長として、父親として。
私の名前は鷲尾扇。
不二峰高等学校の学校長だ。
そして、一児の父親でもあった。
『あった』というのはつまるところそういうことなのだが、特に深い理由はない。
私が典型的な仕事人間だったせいですれ違いが起き、どちらが言うわけでもなく別れることになったのだ。
世間でしばしば騒がれるような泥沼にはならず、娘の親権を妻が持つことも認めた。いや、認めざるを得なかった。
一日の大半を学校で過ごし、家に帰ると妻も娘も寝ている。娘の学校行事があったところで、行事の時期などどこの学校でも同じようなものだから休むこともできない。
公務員の、それも学校という組織の最高責任者が、娘のためとはいえおいそれと休むなどできないのだ。
ただでさえ教師とは休暇をとりにくい、いや、とれないといっても過言ではない職種であるというのに。
これまで娘とともに過ごした時間を数えたら、一年分にも届かないのではないだろうか。
そんな人間が父親面をするのは許されないことだろう、と。
それが理由の一つ。
もう一つの理由は、娘を実質、女手一つで育てた妻の存在だった。
妻は娘を育てながらも、ご両親から継いだ喫茶店を切り盛りしている。小さな店ではあるが、彼女の人柄と文字通りの看板娘の存在、そして何より料理の味が美味しいというのでそれなりに有名な店である。
経営状況も悪くはなく、妻と娘が生活しながらもある程度は貯蓄に回せているらしい。(実際に売上記録を見せてもらったことがある。正直、私よりも所得が多かった。)
娘の学校行事に合わせて定休日をつくり、時には二人で買い物や旅行にも出かけ、他人事のような言い方になるが、私がいてもいなくても変わらず幸せそうだった。
娘の幸せを思えば、想っているからこそ、私が引き取るという選択肢は浮かぶはずもないのである。
その他にも細々とした理由はあるが、大きな理由はその二つだ。
この高校に赴任してきてから数年は大きな問題は起こらず、平和と言える日々を過ごしてきた。校長として、まともと言える教師人生を送ってきた。
が、そんな日々は一通のメールで終わりを迎えた。
『三戸があなたの高校に通う。あなたがいなくなったせいで捻くれた三戸の責任を、父親としてとってください。ただし、三戸に知られないよう、常識の範囲内で。
鷹嶺千雪』
笑顔で金色のトロフィーを掲げる一人の少女の写真とともに、元妻だった女性から送られてきた文章。
おそらく、いや、ほぼ間違いなく、写真の少女は三戸なのだろう。トロフィーに彫られている名前は聞き覚えのある陸上部の大会。三戸は現在陸上部に入っており、どこかの大会で優勝した、そのような状況だろう。
捻くれた――とあるが、それはいわゆる反抗期というものなのだろうか。私に似ず、綺麗な女性に育ってくれているようで幸せな限りだが、その部分にだけは多少なりとも戸惑いを覚える。
これ以降彼女からの連絡はなく、三戸の名前を耳にすることもなかった。
入学試験が近づいてきたある日のことだ。一人の受験生の名前が、教師たちの間で小さくはない噂として広まっていた。
『不二峰高校の受験希望者の女子中学生が他校の男子生徒と問題を起こした』
『流血沙汰になる暴力事件だったらしい』
『警察に通報され、やってきた警察にも殴りかかった』
『救急車で運ばれた被害者は男子生徒の方』
『陸上部のエース』
『〇〇大会で優勝した』
『鷹嶺三戸』
私は困った。
事件の経緯がわからないために軽率に判断を下すべきではないのだが、話を聞く限りでは三戸に非があるとしか考えられない。
そして噂が広まったままであると、私は不二峰高校の校長として三戸の入学を許すことはできない。
だがしかし、三戸が不二峰高校に入学できないとなれば、元妻の言う父親としての責任というものがうやむやとなってしまう。
これまで父親らしきことを何一つしてこられなかった私に、妻の方から機会を与えてくれた。
校長として、そして、父親として、私は何ができるのだろうか。
いや、考えて時間を無駄にするのはやめよう。
私は娘を信じている。
それがもっとも大切なことではないのだろうか。
お久しぶりです、
こんにちは、白木 一です。
ここ最近、月一回くらいのペースでしか投稿も、サイトのログインも行ってないみたいです……
大した才能もないのに気の向くままに色々なことに手を伸ばし続けているからなんですが……
この物語も、エタっている物語たちも、ちゃんと完結まで書き上げたいので、小説作りをやめることはないですとはお伝えいたします
_(. . 」 ∠)_
はい、というわけでアナザーストーリー的なやつです。
パパさんシリーズはこの続きにあと2話くらいは考えています(考えているだけですが……)
次の更新が一体いつになるやらですが……楽しみにしていただけたら嬉しいです
(人´∀`*)
脳内お花畑、恋愛脳の痛い気100%な白木 一をよろしくお願いいたします




