紫苑 ~Tatarian aster~
相変わらず僕は君のことが好きだった
でももうわかっていた
君は僕を決して選ばないことを
僕と君は似ている
それ故にだ
僕の愛は深く重たい
君も同じ
だから僕が片想いだけならまだいい
傷つくのは僕だけだ
でも、もしかしたら君はまた謝るかもしれない
謝らないで欲しい
恋は傷つくことが多い
それを知っていない奴がしていいものではない
全て自己責任なのだ
傷つくのを最初から知っていた
それでも君の事が好きだった
君が傷つくならば、それは僕の責任だ
君に想いを告げてしまった僕の責任
どうしようもない僕をどうか許して欲しい
僕は君を諦めた
恋心をどこかに置いてきて恋とはどんな物だったか
もう思い出せない
もう二度と胸よ高鳴るな
もう二度と胸よ締め付けられるな
僕はもう二度と恋をしない
ねえ、神様
人を愛するとはどういうことなのでしょうか
僕は傷つくものであるという認識しかありません
でも覚えていることがあります
恋はとても甘美で世界がとても広く暖かく穏やかで
激しく心を乱し、醜くしてしまう
自分自身を嫌いになってしまうようなそんな物だったことは覚えているのです
もう吹っ切れた
もう君の事を諦めるんだ
そういったときの君の顔が忘れられません
ああ、顔といっても
僕の文章から想像した表情です
苦しむ僕を見なくてすむ安堵と
少し残念そうな複雑な表情を浮かべる君
君との関係は僕にはよくわかりません
大切とはどういった大切だったのでしょうか
同士?気の合う友人?相談のできる数少ない人?
恋心を捨てた今、僕は君がいつでも頼れるような
関係を壊すことのできないような大切な存在になりたいと思うのです
君に宣言したときの僕は
とっても清々しい
なんだか飛べそうな気がするぐらいでした
今はというと
正直よくわかりません
やっぱり恋とは愛とはどういうものだったか
思い出そうとしています
愛してるなんて言わないでください
好きだなんて言わないでください
僕の愛は重く深く
貴方たちのものとは異なります
意味を理解していってください
愛する人を自分の物だけにしたくてたまらなくなり
次第に狂気へと変わる恐怖を知ってから言ってください
僕はあの狂気を知ってから
人を愛することに恐怖しています
桜が咲いて 出会いの季節がやってきた
僕は何故か桜の花びらが散っていくさまを見ると涙が出る
散っていく花びらを一枚つかもうと手を伸ばし
花びらを捕まえる
新しい生活が始まってなんだか忙しく
息抜きにと散歩にでていた
もう春がきた
花々が鮮やかに咲き乱れ、甘い香りを撒き散らす
やがて桜の花は散ってしまい
木々には緑の葉が芽吹いた
いったい君は今何をしているだろうか
そっちは桜が咲いてる?
もう散ってしまった?
何だか君と過ごした日々がとても遠く感じられて
君との思い出が懐かしい
感傷に浸っていると携帯電話が鳴った
珍しい音だ
懐かしい名前に眼を細めて電話に出る
「・・・・もしもし、そっちは桜が咲いている?」
唐突に切り出された話題は
僕が考えていたこと
「いいや、もう散ってしまったよ。そっちは?」
文章でもないし
電話だ
どちらにせよ表情などわかるはずもない
でも僕は
君が最高の笑顔である
そう思った
「今ね、満開なの!」
嗚呼、恋とは奇妙な物でした
そう、想像する君の笑顔で僕の心に何か暖かい風がくすぐっていった感じがする
君よ、幸せであれ
華やかな笑顔をどうか絶やさないで欲しい
全ての人間をとは言いません
信じられるようになった?
どの言葉を信じてもいいのか判断できるようになった?
どうか君よ、たくましく強く咲き誇れ
僕は離れていても、遠い地からでも やっぱり君を想っています