色ヅク世界ニ
僕の見える世界はモノクロで
この世界になど興味はなかった
早く止めてくれ
誰でもいい
早く僕の音を止めてくれ
そう心がざわつく
絵画を眺めるように
映画を見るように
その世界をただ淡々と瞳に写した
たいして面白くもないこの世界に
なぜ自分が存在しているのか疑わしい
本当に僕はここにいるのか?
僕が存在するという証拠は?
小さな頃から心に浮かび上がる問いかけは、誰にするでもなく
ざわつく心に留まって消えることはない
色のない世界に生きる
この難しさに救いを求めたかった
どこにいても僕は演技をする
誰からでも好かれる自分
違う
気づいてくれ
それは本当の僕じゃない
笑顔を浮かべて 沢山の人間に囲まれて
側からみれば楽しそうな場面
笑顔を浮かべる僕
心は涙を流して悲鳴をあげていた
僕はもっと弱くて頼りない存在なんだ
本当の僕に気づいて
本当の僕を救って
お願いだよ
この世界は残酷だ
僕は常に演技する
家でも
学校でも
ネットでも
たくさんの自分がいたけれど
そのたくさんの自分を演じるのも嫌いじゃなかった
ネットの僕は常に明るくお馬鹿で能天気な様を演じる
相談を受けるときには、何よりも真剣に相手の立場に立って考えた
「がんばって」「大丈夫」「なんとかなるさ」
大嫌いな言葉達
頑張ったって何とかならない
大丈夫じゃない
悲鳴を上げてるんだ
もがいてるんだ
そんな言葉は誰でも言える
僕が使わない大嫌いな言葉達
「大丈夫?」なんて聞くものじゃない
明らかに大丈夫じゃないのを知ってるはずだ
聞いてしまえば相手は殻に引きこもる
「大丈夫だよ」と返して終わりだ
僕はそんな意味のないことをしたくない
それは現実でも言える
僕はよく人から悩みを打ち明けられ助言した
時にはフォローし、相手を支えた
じゃあ僕は?
誰が救ってくれるのだろうか
僕は自分の感情を押し殺して生きた
そんなある日、僕はまたネットをしていた
みんなと会話するのは好きだった
初めて会話した君に、どう思うこともなく
きっと いつもどおりたいした関係にもなれず
ちょっと文章のやり取りをした 画面の向こうの相手で終わる
そう思っていた
君と交わす文章のやり取り
少しずつ僕の世界はモノクロから色づき始めた
君に心惹かれていった
君は僕に似てる
不器用な人の愛し方
人と関わることの恐怖
僕と同じ苦しみを知っていた
僕と同じ苦しみを抱えていた
たった一日で心を許していた
次の日
変わらず僕は君と会話していた
君は僕と似てる
君が画面の向こうにいるだけで華やかに色づいていた
僕は心の内を明かすようになっていた
君が好きだとも言った
君も好きだといってくれた
でも違う
僕が欲しいのはその好きじゃない
重たい重たい僕と君が抱えてしまう愛を求めた
自分でも馬鹿なことをしていると自覚していた
ネットだ
相手は画面の向こうにいる
決して叶わない
馬鹿な僕は 顔も知らない相手に恋心を募らせた
君は何が好き?
好きな食べ物は?
今の年齢は?
この世界のどこら辺にいるの?
君の嫌いな物は何?
今はまってる物は?
たくさんの思いがあふれ出る
嗚呼、恋はこんなにも人を駄目にしてしまう
一日が君との文章で彩られ終わって
また次の日が来る
そんな自分にとっての幸せに終止符が打たれた
朝起きて君が誰と何を会話してるのか気になってしまう僕がいた
僕はストーカーか
そう突っこみを入れながらも
しっかり君のたくさんのやり取りを見た
嘘でしょう
そう叫びたくなった
僕は思わず携帯を落としそうになる
僕が画面の向こうの君に恋するように
君も画面の向こうの誰かに恋してた
僕は一方通行の片想い
君は、両想いだった
カラフルな世界が一瞬で暗くもとのモノクロの世界に戻った
いったい僕は何をしていたの?
君は僕を大切な人だという
嬉しいと思う
でもそれと同じようにあの人も大切な人なのだと君はいった
また私の心を照らしてくれた
暖かさをくれた
傷つくのは恐い
それでもあの人が好きなのだと君はいった
君がそう言うのだ
引き下がるしない
僕が言えた立場じゃないのも重々承知してる
言わない
心に渦巻く
君の恋もきっと叶わない
お互いに今は想っていても
いずれ崩壊する
だってここはネットだ
確かな物などない
僕と君は似てる
僕らは馬鹿なことに恋をした
画面の向こうの誰かに
他人の目なんて気にしない
僕らは不器用に
悲しいほどに
画面の向こうにいる誰かに想いを寄せた
君が幸せならそれでいい
君が笑っていてくれればいい
そんな表情の変化など文章だけではわからない?
そうかもしれない
でも僕はわかる気がした
あの人と文章を交わす君は輝いてる
僕の世界が色づいていたように
きっと君の世界も華やかに色づいてる
季節は冬で
外は吹雪いていても
君の世界はカラフルに
綺麗に色づいた花々が踊るように
君も楽しげに春が来たことを喜ぶように微笑んでいる
そう思っている
そうだ
華やかであれ
恋が君を美しい世界に存在させるなら
僕の想いが報われなくともそれでいい
決して重く感じないように
少し冗談を交えながら君の想うあの人と僕は対立してみる
僕が軽く喧嘩を売るものだから君はハラハラしてる
君も少しは困ればいい
僕が君の事でこんなに胸が締め付けられるのだから
少しぐらい困ればいい
君を見守る友人として僕はあろう
惚気でも何でもいい
お願いだ
君の世界よ、どうか色づき続けてください
君がこの世界にとどまれるようにして下さい
あの人という支えが君をこの世にとどまらせている
死にたいと願う君から支えをとってしまえば、儚く感じられる君の姿が消える気がして僕は下手に動けないんだ
君はちょっとした事で不安になる
あの人が最初に私じゃなくて他の人に挨拶した
あの人の態度がそっけない
あの人から遠まわしに話しかけるなと言われてる気がする
不安になるなら僕にしてよ
絶対僕は君を不安になんてさせないのに
君はあの人の何がいいの?
未練があふれて
やっぱり君を諦められないって気づく
僕はやっぱり君が好き
君の世界よ色あせてしまえ
あの人への想いよ枯れろ
僕が君の世界を色づかせたいんだ
醜い嫉妬も許してください
僕は君と肩を並べたい
ある日、君はあの人と喧嘩した
何もわかってないとあの人を責めた
そうだ 壊れろ
君から壊してしまえ
そうすれば支えが消えてしまい君が壊れることもない
僕が望んだとおりだ
君が壊れることもなく支えをなくしてしまえる
壊れろ
お願いだ
僕に君に手を差し伸べるチャンスをください
あの人は君に
「無理をしないで」と言った
普通の子ならそれでよかったかもしれない
でも君は違う
僕も同じだからわかる
無理しないなんてことが無理なのだ
ちょっとの無茶をしなければいけないことが多くある
君はそんな時期
それが僕にはわかっていた
あの人にはわからなかった
僕はあの人より君の事を知っている
わかっている
理解している
少し不安定な君に
具合が悪くても無茶をしなくてはいけない君に
あの人は言ってはならないことを言った
あの人は君の説得を諦めて他の人と楽しげに会話している
その間に僕が声をかける
僕と似ている君にかける言葉は僕の体験を踏まえながらの助言
体が資本なんだからと言えば君は少し謝るようにお礼を言う
素直に僕の意見を聞いてくれる
君はあの人にとった態度を後悔している
辛そうにしている
それでもやっぱり怒っている
僕は辛そうな君を放っては置けなくて
つい助けてしまう
君はあの人が好きなんだ
少し諭してあげれば君は元気を取り戻して
あの人の元にかけていく
やってしまった
後悔する
壊そうと思ったのに
君のつらそうな姿が、僕自身つらくて助けてしまった
仲を取り持ってしまった
僕の馬鹿
チャンスを逃してしまった
次のチャンスはもう逃さない
そう心に誓った
チャンスはすぐやってきた
あの人は違うことで急がしそうで
君とすれ違いの日々
あの人は君を放って他の人と会話している
君はつらそうだけど他の年齢の近い子と楽しげにしていた
きっと喪失感を埋めようとしているのだろう
君は時折、不安定にあの人を想っている
大丈夫って自分に言い聞かせている
つらそうだ
帰ってくるな
君のそばに戻ってくるな
忙しくしてろ
その間にも僕は君を口説く
あの人の帰ってくる場所なんて作らせない
ついに願っていたことが起きた
君はあの人を忘れることにした
あの人は帰ってこない
帰ってくる場所はない
君が決めた
僕の望んでいたことが起きた
そう思っていた
僕は思う
君は忘れるのだと言う
でも、僕と君が抱える愛はどこまでも重たい
愛してしまえば忘れることなどできない
君はやっぱりつらそうで
僕は見ていられなくなる
それでも僕はそばにいた
他の子に空元気で接する君を馬鹿だと心の中で罵る
君は 愛を捧げ続ける僕にありがとうと言った
こんな私を好きでいてくれてありがとうと言った
僕は涙を流す
それはどういう意味?
僕に諦めてくれと言っているの?
やめてくれ
感謝の言葉を僕に言わないでくれ
僕が勝手に好きになった
僕が勝手に君を想い続けた
ありがとうがまるでさようならと別れの言葉に聞こえた
君と僕が出会って21日経った
そんな短い期間なのに1年ほど過ごした感じがする
相変わらず僕の世界は君のおかげで色づいている
でも僕は報われない恋心を誤魔化すように逃げ出すように顔を背ける
君を諦めようとしているのだと僕は思った
君は少しずつ元気を取り戻している
もう大丈夫そうだ
君の誰かとのやり取りを見てしまった
僕はひどく傷ついて胸が久々に痛んだ
君は誰かを旦那さんと呼んでいた
冗談だとわかってる
只のお遊びの一環だとわかっている
それなのにこんなに傷ついている自分に驚いた
僕はまだ君をこんなに想っている
嗚呼、神様
どうして心などくれたのでしょうか?
君の言葉に一喜一憂する
君が誰かと幸せそうにしていると、こんなにも心が痛む
出会わなければよかったのに
そうは思いたくない
君と出逢って世界は色づいている
僕はもう傷つきたくない
どうしてですか神様
どうしてこんなにも傷つくのでしょう
恋はもうしたくありません
結ばれないとわかっていながら
どうして君を想ってしまったのでしょうか
僕の心よ壊れてしまえ