美青年
「…………」
「え?」
何か聞こえた?そう思った瞬間、
突然部屋の中の花の香りが強くなり
それに伴って視界が歪み、
いきなり―――途切れた。
誰かに揺さぶられる感覚と
呼ばれてる声にゆっくりと目を開ける。
「あ!目が覚めた?」
「…………」
ここは……ああ、さっきの家か。
視界はまだぼんやりとしているが
どうにか頭は少し働くようだ。
それにしても俺は、また……?
何故だ?とセキは考え込む。
こうも急に意識が無くなるとか
前回のはまだ説明がつくとして
今度は何が原因なのか全く解らない。
あの時、少年と話をしていて、
それから何があった?
「オ~~~~イ!
ねねねね、ボクの事見えてる~~?」
「え?わっっ!」
いきなり視界にドアップで現れた顔に
驚いて思わず後ろに仰け反る。
「だ、誰ですか?」
「え~その質問ボクがしようと思ったのに」
満面の笑みで話かけてきた人物は
俺と同じかもしくは若い感じの青年。
(あ……!)
と、いう事は、
もしかしてあの子の家族!?
漸く現れた大人につい先ほどまでは
アレコレ言ってやろうとか思っていたのに
あまりの突然の登場にすっかり動転して
セキはついつい深々と頭を下げていた。
「これは、失礼しました。
俺、セキと言います」
「ボク、ノーチェ。宜しくねセキ」
「あ、ハイ。よろし――」
その青年を顔を上げてちゃんと見た時、
頭に、心に、その五感全てに無数の
いい知れぬノイズが走った。
全身が総毛立つほどざわざわと
波状する感覚に襲われ
目眩にも似た何かに押し潰されそうで
堪らずよろけそうになった所を
その腕によって支えられた。
「大丈夫?まだ眠いの?」
「いえ、スミマセン」
(何だ……?今の)
「そっか、良かったぁ」
ニコーッと笑い返され
つられて笑い返す。
改めて見るとあの少年に
とてもよく似ている。
間違いなく家族の違いない。
親にしては若すぎるから、
まずお兄さんとみて間違いないだろう。
髪は同じく緑で、目が金色に輝いてる。
そこも全て一緒だった。
違いといえば、
少年は可愛かったからカツラに見えたが
今この青年を見る限りサラサラと
艶やかで色素の薄い肌にかえって
映えるいる所と、
瞳の色も通常有り得ない
色彩だと思うのに何処か違和感なく
見えるから不思議だ。
加えて細すぎない躰は
適度な筋肉を有していて
どこから見ても完璧なフォルムだった。
そして、何より
閉口してしまうのはその酷く綺麗な顔立ち。
そんな表現を使わなければ表せない
ディテールの人間などセキはこれまで
見たことも会った事もなかった。
明らかに男だと分かっても尚、
ジッと見られると思わず視線を
外してしまいたくなる程の
とんでもない美貌の持ち主なのだ。
(男でもこんなに美人がいるのか)
「アレ?何?どうしてこっち見ないの?」
「い、いや、別にその……」
目のやり場に困る。
というのもそれが単に
無機質な美しさではなく
何というか色香まで漂うといっても
過言でない妖艶さまで兼ね備えていて
これでたじろぐなっていう方が無理だ。