ご機嫌ななめ
「とても似合ってるね、その髪の色。
すっごく可愛いよ。
ところで、
親御さん達は何処かな?」
どう考えても
この子が俺を家まで運んだり
ましてや着替えさせたりとかは
到底無理だ。
何処かに親がいるはずで
その人達にお礼を言いたいと
思っているだが辺りにはそれらしき人は
見当たらない。
かといって勝手に家中を
探すわけにもいかず、
どうしたものかと迷っていると
再びその子と目が合った。
その顔はおおよそ子供らしく
笑うとか戸惑いとか
そういった類は全く無くて。
それどころか―――
セキ自身、自分の考えすぎたと
誤魔化しきれない位、
いま相当、機嫌悪いんだけど、何か?
と言わんばかりの意思表示が
ハッキリ伝わってくる。
「…………」
俺、すごく睨らまれてるよね?
とセキは苦笑いした。
……あ、そっか!
もしかしたら俺の所為で
遊びに行けなくなってふてくされてるとか?
様子を観るように言われて
独りお留守番をしれてくれてるに違いない。
子供だし、その線が濃厚だろう。
だとしたら機嫌を損ねてるのも頷ける。
こっちもこの家を出て早急に探索と
皆を探しに行きたいのは山々だけど、
取り敢えず此処までして貰って
子供にだけお礼を言って出て行くのは
流石に申し訳無さ過ぎるし。
「悪かったね、ボク。
俺の所為で留守番してるんだよね」
ニッコリと笑顔で一応謝ったつもり
なのにその子は、フンッと言ったっきり
机にまた背を向けてしまった。
「………………」
ヤレヤレ嫌われちゃったかな。
家にお邪魔させてもらっている以上、
反抗期なのか、単なる人見知りなのか
検討もつかないけど、だからって
気まずいのは良くないよな。
「……ボク、幾つ?」
「…………」
予想通り返事がない。
完璧、無視されている。
「……ハハ」
普段子供とかに接する機会がないから
どうやって機嫌をとって良いのやら
全く分からなくてセキは頭をかいた。
「………………」
―――オイオイ、いま何時だよ。
日はだいぶ傾きかけて
朝は天気雨ぽかったのが
今はかなり薄暗い。
時計が無いから分からないが
俺が起きてから少なくとも数時間は
経過してるぞ。
「お……お父さん達、遅いね」
やけに、という言葉は
至極小さな声で呟く。
お子様は相変わらずこちらに
背を向けたまま反応すらない。
こんな子供を残して一体親は
何をしてるんだ、無用心にも程がある。
助けて貰った恩義を差し引いても
一言いうべきじゃないか?
こうなったら親が帰ってくるまで
ここで待たせて貰おうじゃないかと
心に決めた。
目的が若干変わりつつある事に
セキが気付いているかどうかは
……別として。