緑髪の子
……いい匂いがする。
何の匂いだろう?
甘い――でも甘ったるくは無くて
ああ……これは花の匂いだっけ。
その匂いに誘われよう薄ら瞼を
開けると目に暖炉の炎が映った。
あ、なんだ暖炉か。
通りで暖かいと思った。
こんな日の暖炉はやっぱ良いよなぁ。
パチパチッと木炭の立てる
独特の音が心地いい。
さっきまでは凍えるように
寒かったから、この心地良さといったら
……まだ眠いし、もう一眠りするか。
セキは二度寝を決め
寝返りを打つ為に向きを変え
……シーツを被りなおそうと
してふとある事に気が付いた。
…………ん?
自分の家に暖炉あったか??
改めて周りを見ると自分の家とは
全く異なっているのにやっと気付いた。
暖炉、アンティーク風の調度品、
部屋のいたる所に飾られた花々。
どれをとっても自分の部屋とは
かけ離れたインテリア。
全てはまるでお伽の国のメルヘンの世界。
ど、何処だ?ココ!?
えーっと確か……
必死に今までの流れと記憶を辿る。
森の中で何故か倒れていて
雨で濡れたままだったから具合が
悪くなって、偶然見つけた家で
雨宿りを――
ああ、もしかしたら
気を失っている間に誰かがここに
運んでくれたのだろうか?
そういえば濡れていた服も
いつのまにか着替えさせて貰ってる。
(え!?)
流石にこれは恥ずかしいというか
申し訳ないというか
いやもうその両方だ。
シーツを被り隙間からセキが
視線を巡らせていると、
これまた可愛い机と椅子が……あ!
誰か座っているのが見えた。
もしかして、此処の家主?
この人が俺を?とセキは
慌てて立ち上がった。
「失礼しました、お早うございます!」
きちんと挨拶とお礼をしなければ
と飛び起きてはみたものの、
とある事に気が付いた。
寝ている位置からは分からなかったが、
その後ろ姿は随分小柄なのだ。
「あの~家主さんですよね?
助けて頂いてありがとうございます。
勝手に軒下を使わせてもらった上に、
その……服まで」
あ、やっぱりだ。
自分が立ち上がった所為かも
しれないが、いや本当に小さくないか?
この人。
小柄というより、寧ろ……子供に近い。
「えーっと、あの~もしもし?」
ていうか振り向いてもくれないんだけど。
結構近くでそれなりの声で話した
つもりだったけど、聞こえてないのか?
さっきよりやや大きめな声で、
「スミマセン!!
助けて頂いてありがとうございます!」
トントンとその肩を叩いてみると
ビクッと身体を揺らして
漸くこちらに振り向いてくれた。
「驚かせてゴメンね」
振り向いた人はやっぱり子供で、
お目々クリクリの緑の髪の男の子だった。
緑……?
目の色は……光の加減?
今時のカツラは本物と
全く見分け付かないけど、
こんな色だと流石にすぐに分かる。
――昨日はパーティーか何かでもあって
気に入ったからそのまま付けてるって
感じなのかな?
実に子供らしい発想で可愛いと
セキはクスリと笑った。