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「おや、お聞きになられていないんですか?

最初……一回目にデスィルに会った時、

向こうは子供の姿をしていたと」



「それは罰の所為で……」




「順序が逆です」



ラウルの話によれば、自分が最初に会った時

イゼルはまだ子供の姿をしていたらしい。


セキと共に過ごし、心の変化とともに

イゼルは少年から青年へと次第に成長

していったというのだ。


覚えていない事や違和感等は

恐らくそこでも記憶の上書きが行われて

いたのだろうとにべもなく答えた。




セキが口を開けたまま

何も言えずにいると、

ラウルは何処から出したのか

馬鹿デカイ辞書みたいな古書を

パラパラとページめくりだした。


その本は通常到底手で持ち上げることなど

有り得ないくらいの大きさと厚みのように

見えるのにコウは軽々とまるで普通の本を

触るように扱っている。


いや、心なしかそれが微かに

浮いて見えるのは目の錯覚だろうか。



「やはり子供から少年へと自己で

なり得ても、それ以上になる為には

外的要因が不可欠とありますね。


それは二通りある訳ですが、

そのうち一つはデスィル自身が放棄しています」



「放棄?」



「だから貴方が此処にいるのでしょう」



「!!!」





「ね、贄の使い道は何だと思います?」



と、ラウル。



「殺すことだろ」



とはセキ。




「それはそれでも面白いですが、

単なる人殺しなど……」



下らない、と恐らくは

言おうとしたのだろう。



「……もう、いい」



一体人間をなんだと。



「違いますよ、喰らうんです」




その言葉の意味を咀嚼しそこなって

もう一度、問う。




「喰らう?ってどういう……」



「文字通りですが」



そう答えるとは分かっていたのに

いざ音を耳にすると、セキの中で

どうしようもない嫌悪感が込み上げてきた。



「……ッ」



一方ラウルはその反応を愉しんでいるのか

饒舌な語りを止めようとはしない。



「ですが、誰でも良いわけではありません、

適合者で無いと効果どころか

命を落としかねませんからね」



「つまりそれが俺。

被食者の人権は無視というわけか」



「必要でしょうか?」



この返しでコイツにもう何を言っても

無駄なのだと悟った。





「それと……イゼルが子供だったと、

どういう関係があるんだ」



自分の問に答えていないだろとセキが

言うのに対し、




「まだ分かりませんか?」



ラウルはセキを見下し、せせら笑う。




「何が言いたい?」




「私の口から言っても

よろしいのでしょうか?」



よろしいも何も、最初から

隠すつもりなんか全く無い癖にと睨む。



「言え」




「体液でも交わらない限り

大人の体へとは絶対変化はしないんですよ。

それって……どういうことでしょうね?」



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