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ノスタルジー

「う……」




目を開けると九十度傾いた視界。

暫し自分の置かれている状況を

考えるが何も思い出さない。



ノロノロと身体を身体を起こし

辺りを見回す。




此処は何処だ?

てか何してたんだっけか。


どうやら何処かの

森にいるみたいだけど……



降りしきる雨の中で何故

自分が倒れていたのか

どうやったってからっきし

思い出させそうもない。



分かってる事といったら

単に自ら此処に横になった訳じゃなく

何かあって倒れたんだろうと思える事

くらいか。




「い……てぇ」



その証拠に全身打撲のような痛みが

あるし、第一酒も飲んでいないのに

こんな場所で眠る習慣など無いからだ。



だとしたらどういう経緯で

ここに来たのか?



釣り?



目の前の湖を見ながらそう一瞬思ったが

それらしき道具は見当たらない。



かなり大きい湖はきっと晴れている日なら

湖面がキラキラと光ってさぞや

綺麗だろうなと思わずにはいられない程、

立派なものだった。



「……この湖は名前なんだっけ?」



これだけ大きんだから相当

有名な湖だろうが、どうしても

名前が浮かんでこない。



「クシュ!!」



くしゃみで全身に鳥肌が立った。


よく見れば薄曇りではあったが

湖一帯に蒸気霧が

立ち上がっているのが見える。



ってことは

湖の水より外気がかなり低い証拠。

どうりで寒いはずだ。


ということは今は朝なのか?



「は、はくっっしゅん!!」



グダグタ考えていても仕方ない

取り敢えずこのままでは風邪を引きそうだ。

心なしか頭も痛いし、

雨を回避する場所を探さないと。




見慣れぬ森の中を湖沿いに迂回しようと

歩くが思いの外、森が深く

中々上手く進むことができない。


全身もずぶ濡れで体も重くて

草叢に何度となく足を取られそうに

なりながらようやく一軒の家を発見した。



その小さな家は白い外壁、

屋根はオレンジと萌黄色の煉瓦屋根と

いった風情はまるでお伽話で登場しそうな

雰囲気で森の中にひっそりと建っていた。



ノスタルジーすら感じるのは

多分幼い時に見た絵本の中。


それとも見た事もない人さえも感じる

望郷の念にも似た情景の方だったかも

しれない。













「スミマセン、あの~」




ドアをノックするも何の応答もナシ。



家の中は暗く窓にはカーテンらしき

ものが掛かっている。


……もっと近寄れば様子を覗い知ることも

出来るかもしれないが、出来れば

そういう不躾な真似は避けたかった。




もう一度とドアを叩いて暫し待つも

中からは全く音も気配も感じられない。



留守、なのか?




「…………」





いや――



もしかして不審者と

思われているのかもしれない。


全身ずぶ濡れで泥まみれの男が

突然自分の家のドアを叩いてるとしたら

誰だって警戒するだろう。


更に仮に中にいる人が

女性で一人でいるとしたら

まず開けなくて当然だ。



「スミマセン、こんなナリしてますが

決して怪しいものではありません。


道に迷ったんです。


軒下で結構ですから少しの間

雨宿りさせて頂けないでしょうか?」



事情を話しながら再度ドアに向かって

話すもやはり物音一つしない所をみると

どうやら家主は本当に

留守なのかもしれない。



そう思い始めたセキは玄関脇の軒下へと

移動し暫くそこで勝手に休ませて

貰うことにした。


家主が帰ってきて尋ねられたら

その時、改めて説明すればいいさ。



平常であればもっと色々考えて

行動できるのだが今は体がダルく、

もう立っているのさえ辛かった。


頭痛もさっきとは比べ物に

ならないくらい悪化しているようだ。




「くそっ……何でこんな事に」




ガタガタ震えながら自分の身を

抱くようにして壁にもたれ掛かる。






「寒い……ほん、と寒……」




具合の悪さと寒さで感覚も思考も

麻痺しかかっていた所為で

セキは気が付かなかった。






すぐ横の玄関のドアが

内側から開く――その音に。




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