雪下の狩り
「今、こんなこと……やってる場合では……」
「こんな時だからだろ」
潤んだ目で文句を言われても
完全に逆効果だからと
セキは執拗に舌を絡ませる。
「ん……んっ、セキ……ダ、だ」
鼻から抜ける甘い声も
舌から伝わる熱い吐息も
全てがセキを刺激し煽っていると
イゼルが何処まで分かっているのか。
大人になった君――。
天真爛漫で明るいイメージしかなかった
ノーチェの雰囲気がまるで変わった。
その美貌の容姿に見合った冷淡で
妖艶な気を纏いながら羞恥に目元を染める
イゼルは表現し難いほど淫靡な姿として
セキの目を捉えて離さない。
(これは……)
セキは生唾を飲み込んだ。
自分ので喘がせたらどんな声で
啼いてくれるだろうかと想像するだけでも
その下半身を刺激させるには充分だった。
過去の俺が知っていたというなら
当然今の自分も知る権利がある筈だ。
服をたくし上げ胸へと舌を這わせただけで
イゼルの小さい呻き声が上がる。
「ココ、感じるのか?」
「ちがっ」
「違う?へぇ、本当?
じゃ、ちゃんと確かめて良い?
もっとこんな風に……」
「よ……あ……っ、よせっ!」
例え、敏感なカラダに育てたのは
過去の自分だとしても今の自分が
知らないのは納得がいかないから。
曝け出してもらおうか、全部。
「な、イゼル……それともノーチェ、
どっちで呼ばれたい?
やっぱりノーチェが良いのか?
セックスの時はいつも
そっちを使ってたんだろ?」
「……だま……ァっア」
問いかけながらも唇で乳首を食み、
舌先で、歯でその味を愉しむ。
「ノーチェ」
「ぁっ……セキっっ」
耳元でセキがそう囁くとイゼルの体は
ビクビクと反応しあっけなく達してしまった。
「まだ触ってもいないのに
……随分溜まってた?
俺がいない間は一人でしてても
それじゃ全然物足りなかったろ」
「余計なことを喋るなっ」
殴る手は宙をさまよい
体勢を崩した格好を利用し
セキは床へとイゼルを押し倒した。
「悪い、ベッドまで行く余裕が無い」
執拗にわざと音を立てて舐めたり甘噛みしながら
もう一方の乳首を指先で責め立てると、
我慢しきれなくなったのか震える腕を
やっと背中に縋るように回してくれた。
俺に過去何度も抱かれている筈なのに
初々しい反応するイゼルにセキの劣情は
増すばかりで、
(ヤバイな……このままだと言葉通り、
メチャクチャにヤってしまいそうだ)
そうは思ってても、真下に組み敷いている
イゼルの反応次第ではどこまで
自身をセーブ出来るか全く自信がなかった。
いや、もう抑える必要など―――あるのか?
「セキぃ……ぃ」
可愛い。
何もかもが。
君がそんなだと離れられない、
こんな大事な恋人を置いて何処にも
行きたくない。
このまま死んでも良いとすら思ってしまう。
「ピュ―――――ッ、ピピピッッ!ピピ!」
突然、雨に混じり鳥の声が鳴り響いた。
それは明らかに聞いたこともない類の
けたたましさは鋭く耳にした誰もが
危険を知らせる警戒音だと認識できるほどの
鬼気迫った音色だった。
途端イゼルの体が硬直した。
「ビューィジの声だ」
「……ノーチェ」
聞こえていな振りで行為を
続けようとするセキをイゼルの腕が
止めようと抵抗する。
「セ、キ、セキ!?
ダメだ、もう時間がない。
僕にはもう見えないが、
この雨はじきに雪に変わり
最後の警告が始まる。
……その前に君を戻さないと」
「嫌だと言ったら」
「お願いだ――僕の気持ちを知ってるなら
従ってくれないか」
「イゼル……」
そんな恰好で息の上がった艶やかな
君のお願いを本来なら断ることなんて
出来ないだろう。
無論―――こんな内容以外の頼みなら。
「雪……」
窓の雨が何時の間にか雪に変わっていた。
この世界に来て雨以外に初めて目にする
光景にセキは驚いた。
「いけない!!僕から離れろ」
ドンッとセキを突き放した。
目の錯覚かイゼルの瞳が赤くキラリと
一瞬光った気がした。
「イゼル?どうした」
近寄ろうとしたセキを
イゼルは腕を前に出した姿勢で牽制する。
「触れ、るな」
イゼルの様子がおかしい。
しかも、心なしか息が荒いように見える。
「この世界には監理官と時空獣しか
存在しないといったのを憶えているか?
そしてさっき僕は監理官を降ろされたのも。
……それがどういう意味か分かるか?」
「いや……」
「いま君が見ている雪は
管理者にとって異端者の最終狩りの時間であり、
それが不可能な場合、
残された全ての時空獣は異端者諸とも
不要な管理者を喰らわねばならない」
その衝撃的は発言にセキはたじろいだ。
長いので分割します。
続きは早くて明日零時更新予定。
※尚、この回は自サイト(裏)にて
濃厚Vaを後日UPします。
ストーリー自体は変わりないので
興味ある方のみ自サイトでお楽しみ下さい。




