表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/53

管理記録4 忌華草

今朝も……良かった。




まだ、大丈夫。







まだ―――









「いつも窓の外を見てるね」






声で振り向くと起きたばかりの

セキがまだ眠そうに立っていた。



「やっと起きたのか」



その言葉にニヤリと笑いながら

窓にもたれかかっている僕の傍に来ると、



「夕べはかなり体力使ったから。

イゼルこそ声、嗄れてるみたいだけど、

よく起きれたね」



首筋にキスをしつつ夕べの事を揶揄する彼を

払いのけようとしたが思いの外

力強くてそのまま口付けされてしまった。



「い、いい加減にしろ。

……まだ、足りないのかっ」



「ハハハ、無理させたの反省してるよ」



「嘘つけ、思ってもいないくせに」




声が嗄れてるのだって、

体が怠くて見回りにいけないのも

全部君のせいなのに、いつもゴメンって

笑うばかりで本気でなんか反省なんか

したことないだろ。



「ね、前々から不思議に思ってたんだけど

この窓のから見えるホラ、あそこの

プランターぽい所は何が植えてあるんだい?」



「何も無い」



「の、割には良くその方向を見てない?

よほど咲くのを楽しみにしてるのかと……」



「離せっっ!!!!!!!!」




楽しみにしているだと?




僕が?




―――この僕が!?




「ふざけるな!!」




「イゼル?どうしたんだ?」



セキは突然彼の腕を振り払い

立ち上がった僕に驚いた顔をしていた。



「な、んでもない。

良いから座れ、早く食事にしよう」



「……俺、余計な事を

聞いたみたいだな、悪かった。

食事は待っていなくても良かったのに。

でも、今度からもっと早く起きるよ」



セキがいるのに何故わざわざ独りで

食べる意味がどこにある?



「あ、俺この味好きだよ」



「前にも聞いた」





「……そうだったな、ありがとう」




そうやって嬉しそうに笑うな。



脳裏に焼きついて離れなくなってしまう。




「イゼル、好きだよ」




「……黙って食べろ」





今まで当たり前だと思っていたことが

君のせいでどんどん変わっていく。



セキ、全く君のお陰で散々だ。


苦労して感情を失くせたと思っていたのに

君の所為で様々な想いが止めど無く

溢れてくる。


それまで持ったこともない感情が

止まらない。















大抵僕より遅く起きてくるセキが

その日に限って早く起きたようで

ベッドの横は既に冷たかった。



「今朝はえらく早起きだな」



見れば暖炉の火がおこされていて

部屋も暖まっている。



「あ、お早う」



当のセキは窓辺に佇んでいた。




「ああ、珍しいこともあるもんだな」




「イゼル、お茶入れようか?

テーブルに座って」



セキのいる方に近づこうとして

その足を止められた。



「いよいよ、珍しいな。

何か良からぬ事を企んでるじゃないだろうな」



「信用ないんだな、俺」



朝食をすませた後、そういえば

睡眠草のストックが無かったなと

僕が移動しかけた途端、再びセキが前に立ち

具合が悪いからベッド付きっきりで

看病してくれないかと言い出した。




妙だ。




普段のセキならこんな事は言わない。



それが本当ならきっと僕に悟られないように

平気なフリをするだろう。




「変だぞ、セキ」




「……ノーチェに甘えたくて」




君は僕をベッドに誘う時、

そんな表情はしない。




「何を隠してる?」



「何も」



何処にも行けないように腕を取ったまま、

彼は目を逸らすことなく真っ直ぐに

僕を見据えて嘘をついた。



「…………」



どうやら僕を窓の方へと

行かせたくないらしい。



「どけよ」



セキは僕を抱きしめ、嫌だと呟いた。



一体なんだというんだ。




「セキ?おかしいぞ今日」




僕が見たらマズいモノでもあると

いうのか……





(!!!!!!!!!)




まさか、



まさか……




僕は引き止めるセキの腕を懇親の力で

すりぬけて窓辺へと走った。




「…………っ!」





「今朝見たら咲いていたんだ。


―――初めて見たよ、

この世界で花が咲いているのを」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ