管理記録3 ※お知らせアリ
あの頃は必死だった。
「それは君が言ったからだろ、
案外忘れっぽいんだな」
「そうそう。その調子、
だいぶ板についてきたね」
「なぁ……セキの世界ではこういうのが
普通なのか?」
「いや、単なる俺の好み」
彼は僕にこんな言い方をした方が
似合うからと言い出したのが始まりで
セキがそうして欲しいならと僕は応じた。
「そう、か?
じゃなかった、成程な」
「うん、凄く良い。
よく似合うよ……ノーチェ」
“ノーチェ”
その言葉はセキがベッドに
誘う時に使う隠語だ。
「ダ、ダメだ、
僕はまだやることがあるし、
すぐには行けない」
「そこは、
“先にベッドで大人しく待ってれば?かな」
「え、そっか……ごめん。難しいな」
「いいよ、それはそれで可愛い反応だしね。
“ああ、分かった”って冷たく言ってみて」
「分かった、これで良いのか?」
上出来と笑うセキの顔を
見る度ドキドキしてしていた。
ご褒美だと言われて
息もつけないほどの濃厚なキスも
やっと慣れてきた。
普通でいる時は温厚で優しいのに
ノーチェでいる時は少し意地悪に
なるけど、それすら嬉しかった。
そんなセキも。
いや、どんなセキだって
喜んでくれるなら、彼が望むなら
僕は何でもしたいと思うくらい……
これが好きという気持ちなのか
よく分からないけど、
セキと一時も傍を離れたくない。
セキと一緒にずっといたいんだ。
不可能だと知っているから
渇望するのだとしても、
一旦持ってしまった感情は
とどまることを知らない。
僕だけがリミットを知っていて
君には知られたくなかった。
寝室に向かうとほの暗い明かりだけが
灯っていて、僕はセキを起こさないようにと
静かにベッドへと滑り込んだ。
真横にセキの体温を感じる。
最初の頃はこうやって誰かと一緒に
寝るのに抵抗を感じていたが、
今では、一緒にいないと
安心して眠れなくなってしまった。
「セキ……」
小さな声で彼の名前を呼んでみる。
髪に唇を寄せてもう一度、その名前を
先ほどよりももっと小さな声で。
「―――」
「それだけ?」
「!?」
不意に体ごとグイと引き寄せられた。
「お、起きてたのか」
「そんな甘い声で囁かれたら
寝るに寝れないよ」
「そんなつもりは」
自分の声がどんな声で言ってたかなど
自覚など出来るはずない。
「大人しくベッドで待ってた俺に
ご褒美はくれないの?」
「勝手に待っていただけだろ。
僕にそんなことしてやる義務なんか」
「ノーチェ、ノーチェ……」
馬乗りになられて額、頬、唇に至っては
口内を執拗に蹂躙され息をするのも
ままならない。
「……ぁ……よ……せっ」
逃れようとすればするほど
口づけは深くなる。
「ん…………っん……は」
「誘い方上手くなった?
ゾクゾクするよ、君の声も
言い方も、そのカラダも、ね」
「誘ってなどいない」
「じゃ俺だけがそそられてるんだな」
こいういう言い方をすると
セキがもっと求めてくるのを
僕は知ってる。
だから――
「僕は眠いんだ、君の相手をする気はない」
「ノーチェ……」
もっと、もっと僕を。
ごっそり裏Vaを抜いています。
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読まなくても流れにほぼ支障はありません。




